【指導奨励上参考に資すべき事項】
耕種に関する試験並に調査 紅玉黒点病に関する防除試験 北農試本場園芸作物研究室 |
1 試験目的
紅玉黒点病防除に関しては、従来六斗式程度の濃厚なボルドウ合剤の撒布が推奨されて来たが、近時一石式以上の稀薄なもの或いは石炭液散布の有効な事が称えられるに至ったので、これが防除効果の程度を調査した。
2 試験年次
昭和25年度
3 試験材料
(1) 供試薬剤
イ 六斗式過石灰ボルドウ合剤(石炭倍量)
ロ 一石二斗式過石灰ボルドウ合剤( 〃 )
ハ 同上 翌日着袋区
ニ 石灰液(一斗当り生石灰60匁)
ホ 石灰硫黄合剤 ボーメ0.3度
備考 共通薬剤として一斗当砒酸鉛20匁、セガイン石灰5匁使用
(2) 供試品種
紅玉7乃至9年生各区三本供試
4 経過の概要並びに調査
6月23日薬剤散布し、翌日着袋区ハの外は撒布当日中に着袋9月下旬除袋、10月12日収穫、10月16、17日に調査を行った。
方法
黒点病の被害程度を三階級に分かち、小黒点10ヶ又は中黒点(径一分程度)5ヶ以内を少、小黒点12ヶ以内又は中黒点10ヶ以内を中、それ以上を多とした。
尚微少黒点2・3ヶのものは健全として取扱った。黒点病の外葉の薬害並びに果実の銹の程度に関しても調査を行った。
5 試験成績
区別 | 黒点病被害果数 | 同上 パーセント |
銹果率 | 備考 | |||||||
多 | 中 | 少 | 健全 | 計 | 多 | 中 | 少 | 健全 | |||
六斗式 | 4 | 29 | 47 | 295 | 375 | 1.1 | 7.1 | 12.5 | 78.7 | 45.0 | |
一石二斗式 | 13 | 46 | 94 | 190 | 343 | 3.8 | 13.4 | 27.4 | 55.4 | 37.8 | |
同翌日着袋 | 15 | 54 | 107 | 176 | 352 | 4.3 | 15.3 | 30.4 | 50.0 | 27.9 | |
石灰液 | 16 | 55 | 138 | 254 | 463 | 3.5 | 11.9 | 29.8 | 54.9 | 32.2 | |
硫黄合剤 | 29 | 76 | 115 | 200 | 420 | 6.9 | 18.1 | 27.4 | 47.6 | 27.0 | |
無撒布 | 30 | 86 | 171 | 83 | 370 | 8.1 | 23.2 | 46.2 | 23.4 | 31.5 |
6 考察
本年度は例年に比し黒点病の発生が多く、無防除区に於いては78%の被害率に達した。薬剤撒布区は就れも被害軽減され、就中六斗式ボルドウ合剤の効果顕著なものがあった。其の他の諸剤は同一程度の効果が得られ、統計的にも有意な差が認められない。
以上のように供試薬剤中六斗式ボルドウ合剤は効果最も大であり、今後共黒点病防除の主剤として奨励すべき点に変わりがないが一石二斗式ボルドウ合剤石灰液、或いは石灰液の撒布を行うべきであり、又「赤ダニ」の発生が多く、石灰含量の高い薬剤の撒布の躊躇される場合は「赤ダニ」駆除を兼ね石灰硫黄剤を撒布する事が有利と認められる。尚薬害による果実の銹は統計的には有意の差が認められないが、六斗式ボルドウ合剤は他剤に比し果実銹の発生を増す傾向が示され、これが防止策として石灰倍量以上とし或いは一斗当り硫酸亜鉛10匁内外の加用が望まれる。