【指導奨励上参考に資すべき事項】

水田培土に関する試験成績

上川支場、渡島支場、岩見沢水稲試験地

 

1. 上川支場成績(昭和26年)
 (1) 供用品種 栄光
 (2) 栽培法  直播(1尺×4寸)
 (3) 試験区別
      無処理区
      処理A区(幼穂形成前7日に培土)
      処理B区(幼穂形成期に培土)
      処理C区(幼穂形成後7日に培土)
 (4) 除草並に培土、拾草の時期と回数
無処理区 第1回除草
6月8日
第2回除草
6月22日
  手取除草
7月16日
     
処理A区 6月8日 6月22日 培土
 7月9日 
  拾い草
7月19日
   
処理B区 6月8日 6月22日   培土
7月16日
  拾い草
 7月26日 
 
処理C区 6月8日 6月22日     培土
 7月23日 
  拾い草
 8月2日 
  (註) 第1回、第2回除草は除草機使用

 (5) 生育調査
区別 7月9日 7月16日 7月23日 7月30日 8月6日
草丈 茎数 草丈 茎数 草丈 茎数 草丈 茎数 草丈 茎数
無処理区 22.9 34.0 29.2 35.3 38.4 35.3 51.4 33.2 58.3 24.1
処理A区     29.7 33.5 38.9 33.5 50.9 33.7 57.9 24.4
処理B区         40.5 35.7 51.2 33.7 56.9 23.5
処理C区             50.6 29.7 55.8 20.8

 (6) 出穂期及び収量調査
区別   出穂期   反当
玄米重(貫)
反当
玄米容(石)
無処理区 8月14日 105.128 2.671
処理A区 8月14日 106.676 2.702
処理B区 8月14日 100.558 2.546
処理C区 8月14日 95.111 2.418

 (7) 考察
 岩見沢水稲試験地において実施された水田除草培土は直播栽培に於いて収量に悪影響を与えず除草労力節減に功ありとして奨励されつつあった。
そこで上川支場に於いては其の内特に生育並びに収量に対して試験調査したところ(労力調査は地域差を考慮する必要がないので省略)岩見沢水稲試験地の従来の成績と全同一の結果を得除草培土に依って直播栽培の場合は生育並びに収量に悪影響を与えるような事は無かった。但し除草培土の時期が幼穂形成期を過ぎた場合(処理C区)は生育並びに収量に悪影響を与えたる様である。

 

2. 渡島支場成績
 (1) 試験方法   イ、品種名   新栄
             ロ、播種期   5月2日 冷床
             ハ、栽植    10寸×5寸  1株2本
             ニ、移植期   6月10日
             ホ、除草     6月20日   7月4日
                       7月16日(無培土区のみ)
 (2) 成績
試験区別 培土期 幼穂形成始 7月16日 出穂期 成熟期 成熟期 反当玄米
重量(貫)
収量
割合(%)
雑草繁茂状況
草丈(cm) 茎数(本) 草丈(cm) 草丈(cm) 茎数(本)
無培土 7月19日 43 23 8月12日 89 14.4 20 9月20日 102.9 100 稍多い
培土 7月16日 7月19日 43 27 8月12日 89 14.9 19 9月20日 97.9 95 極めて少ない

 以上の結果より培土区は雑草の繁茂状況は著しく少なく培土の効果は顕著であるが一般生育は変わりなく増収も認めかねる。

 

3. 岩見沢水稲試験地成績
 主として水稲の施肥量と培土の関係について
 (1) 供用品種  晩生栄光  栄光
 (2) 栽培法    冷床苗栽培  1尺×5寸5分  6月5日 移植
 (3) 施肥量   小肥区  堆肥  200貫
            多肥区  堆肥  200貫  硫安 5貫   過石 5.5貫    塩化 2貫    米糠 4貫
 (4) 培土期   7月13日
 (5) 成績 
区別 幼穂形成
始(月日)
出穂期
(月日)
成熟期
(月日)
培土時 穂長
(糎)
穂長
(糎)
茎数
(本)
止葉の大きさ 1.5坪当
玄米重量(貫)
草丈(糎) 巾(糎) 長(糎)
晩生栄光 多肥 培土 7.20 8.14 9.29 39.4 66.7 16.1 19.6 1.41 26.71 0.446
無培土 7.20 8.14 9.29 39.8 63.2 15.6 18.5 1.34 24.15 0.442
少肥 培土 7.20 8.14 9.28 35.7 63.2 15.4 16.9 1.32 24.33 0.451
無培土 7.19 8.14 9.28 39.5 59.6 15.2 17.6 1.21 21.65 0.431
栄光 多肥 培土 7.19 8.14 9.26 32.2 53.4 13.8 23.8 1.22 21.01 0.462
無培土 7.19 8.14 9.26 27.9 56.2 14.5 21.9 1.44 22.75 0.452
少肥 培土 7.19 8.13 9.25 31.7 52.4 14.0 18.3 1.22 20.43 0.417
無培土 7.20 8.13 9.25 31.4 51.6 13.7 18.7 1.12 19.48 0.449

 (6) 考察
 本試験は栄養生長期の大半と登熟期の後半の天候が低令に終始した為、品種固有の能力を発揮することが出来ず、玄米収量では多収を期待される品種並びに栽培法もその傾向がなく、隨って従来培土によって玄米を多収し得た晩稲に於いても差が認められなかったのであるが、生育に及ぼす影響はその傾向を把握することが出来た。即ち、晩稲では培土の効果が大きく特に多肥栽培の場合に顕著であるのに対し、栄光ではその傾向が少なかった。
 草丈稈長、穂長、葉の大きさは、晩生栄光に於いては培土より優って来て、生育を旺盛にすることが認められ、その傾向は特に多肥栽培に於いて明瞭であった。而し、本年の天候下に於いては生育が旺盛ならしめたことは、徒長の傾向を加味した結果となり、生育に正比例した収量は挙げ得なかった。而し、少肥栽培の栄光が生育調査では、培土を行うも不利を招くとは考えられなかったが、玄米収量で明瞭に劣ったことは、早、中稲の品種を小肥料栽培で行って培土を施行する場合については今後の究明が必要である。