【指導奨励上参考に資すべき事項】

稲熱病の発生と冷害的気象環境との関係調査成績

国立農業試験病理昆虫部

 

調査結果概括

 昭和26年の稲熱病多発生の経過解析
 1) 越年病原の分布密度が高かった。
 2) 豊作は農家の本病に対する関心を稀薄なししめた。
 3) 6月中旬以降の気候は不順となり、低温多湿日照不足の状態が7月中旬まで続いたため、この冷害的気象の影響をうけ稲の生育は平年に比し10日~15日位の遅れとなった。
 4) 然るに7月20日以降に急に夏型になり気温の上昇を来し、これが8月下旬まで続き稲の生育に対して急な生育促進作用と罹病度の低下をもたらし、一方稲熱病菌を繁殖せしめた。
 5) 低温のため肥料が遅効性となった傾向があった。
 6) 多発地帯の状況をみると、品種選択の欠陥と厳禁されている追肥が、稲熱病を助長せしめるのに役立ったものが多く人為的な被害助長が認められた。
 7) 8月下旬より9月上旬に亘っての多雨適温による稲熱病菌の繁殖と、稲の成熟初期~中期(生育遅延による)とが符号して被害が助長された。
  

 元来北海道に於ける稲の冷害には生育遅延型冷害と生殖障害型冷害があって、その低温は15℃以下を示すが為にこの様な低温度の下に於いては稲熱病菌の繁殖も抑圧され、その発生が停止するがしかしこの様な低温気象が稲の生育期間中持続する場合には全くの無収穫の大凶作となる。
 しかし概ね1時は気温の上昇をみる場合が多く、特に生育遅延型冷害の場合には気温の振幅大きくその上昇によって生育が一時に促進されて軟弱な罹病性の大きな状態に陥り、一方細菌の繁殖を促すために両者符号が合って発生と被害が激化する。つまり冷害的気象状態の持続した後に気温が上昇して稲熱病の多発生を来す発生型と云う事が出来る。
 然るに東北地方にみられる稲熱病には気温の低下によって稲熱病菌の適温に陥る様な冷害にともなって稲熱病の多発生を来す型がある。即ち冷害を誘因とする稲熱病には2型があるとするべきであろう。而して前述の如くに北海道に於ける稲熱病の多発はよく豊年次直後の冷害同期に一致する場合が見られる。これは25作年次に於いて収穫を損せざる稲熱病の発生によって密度を増大する越年病原にこの根源があることが明確になった。
 斯かる場合には豊作下の農家の人々にして稲熱病の事態を確認せしめることが特に本病防除対策上に緊要と考えられた。