【指導奨励上参考に資すべき事項】

低位生産牧野の改良に関する試験成績

畜産部

 

1. 成績の概況
 現在道内特に主畜農業地帯の牧野の大部分は低位生産になり、この改良は今後の畜産開発の基本課題にして、緊急推進解決すべきものである。この低位生産の基礎をなすものは無肥と過放牧の継続による植生の土壌の変貌である。茲ではこの両者の面から改良の指針を求めることにした。即ち植生に於いては施肥し耕起による量と質の改善、土壌では理学性とくに硬度について調査した。
 (1) 放牧地の野草化した低位生産牧野に於いては施肥によって収量は増大し、品質も又著しく向上する。とくに耕耘と新規播種を併行せしめた改良法、例えば赤クロバー又は赤クロバ
    ー、チモシーの更新地区に於いては効果は大であって乾草量では約3倍、成分では総養分量が6倍となり、特に蛋白質と石灰の増加が著しい。(表1)
 (2) 良好放牧地草は不良放牧地草に比して蛋白質、石灰、カロチン含量が多大である。又良好乾草と不良乾草の場合に於いてもほぼ同様である。(表2)
 (3) 牧野土壌の理化学性は其の生産力に関係することが大であり、其の内硬度については他の土地の場合と異なる傾向を示している。つまり一般に表層に近い土層の緊密度は大と
    なり、理学的性情を悪くしている。其の改良法としては休閑、待機放牧、輪換放牧、更に進んでは耕耘、播種等の施行が必要である。(図1)

2. 試験成績
 表1 低位生産牧野の肥料施用にようる草量、飼料成分
  その1 生育並びに収量
区分 草丈(cm) 1/10陌当収量(kg)
最高 平均 最低 生草量 乾草量
対照区 95 86 50 840 296
(100) (100)
石灰施用区 95 85 55 850 289
(101) (97)
N.P.K+石灰施用区 110 95 60 1025 314
(122) (106)
厩肥+N.P.K+石灰施用区 145 125 65 1225 394
(145) (133)
耕耘、赤クロバー、チモシー播種区 赤 72 4390 1119
チ 120 (522) (378)
耕耘、赤クロバー播種区 80 70 48 4420 778
(526) (262)
  備考 慣行施肥量に依る。  供試地 十勝高台

 

  その2 一般飼料成分、石灰、燐酸並びに1/10百当生産養分量
区分 表示区分 粗蛋白質 粗脂肪 可溶
無窒素物
粗繊維 粗灰分 石灰 燐酸

対照区
固形物百分中(%) 6.77
(100)
2.14
(100)
53.38
(100)
32.76
(100)
4.95
(100)
0.53
(100)
0.73
(100)
1/10陌当生産養分量(kg) 17.73
(100)
5.59
(100)
137.80
(100)
85.78
(100)
12.96
(100)
1.40
(100)
1.92
(100)
石灰
施用区
固形物百分中(%) 6.82
(100)
2.36
(110)
54.37
(101)
31.42
(95)
5.03
(101)
0.55
(103)
0.91
(124)
1/10陌当生産養分量(kg) 17.45
(98)
6.04
(108)
139.21
(99)
80.46
(93)
12.89
(99)
1.42
(101)
2.34
(121)
N.P.K+
石灰施用区
固形物百分中(%) 7.21
(106)
2.18
(101)
50.90
(95)
34.49
(105)
5.22
(105)
0.64
(120)
1.17
(160)
1/10陌当生産養分量(kg) 19.94
(112)
6.03
(108)
140.67
(100)
95.33
(111)
14.44
(111)
1.76
(125)
3.23
(168)
厩肥+N.P.K+
石灰施用区
固形物百分中(%) 7.19
(106)
2.63
(122)
50.00
(93)
34.72
(106)
5.46
(110)
0.65
(122)
1.07
(146)
1/10陌当生産養分量(kg) 24.86
(140)
9.10
(162)
172.85
(123)
120.05
(139)
18.87
(145)
2.24
(160)
3.69
(192)
耕耘
赤クロバー、
チモシー播種区
固形物百分中(%) 10.20
(150)
2.41
(112)
46.38
(86)
34.27
(104)
6.74
(136)
0.88
(166)
0.78
(106)
1/10陌当生産養分量(kg) 100.71
(568)
23.83
(426)
457.67
(327)
338.39
(394)
66.58
(513)
8.71
(622)
7.69
(400)
耕耘
赤クロバー
播種区
固形物百分中(%) 13.61
(201)
3.30
(154)
44.58
(83)
30.54
(93)
7.97
(161)
2.25
(424)
0.69
(94)
1/10陌当生産養分量(kg) 93.44
(527)
22.64
(405)
306.07
(218)
209.75
(244)
54.77
(422)
15.46
(1104)
4.75
(247)

 

 表2 放牧地並に採草地の良否と飼育成分の関係
  その1. 飼料成分
区分 表示区分 水分 粗蛋白質 粗脂肪 可溶
無窒素物
粗繊維 粗灰分 石灰 燐酸 カロチン
良好放牧地草 原物中 84.48 2.23 0.50 5.75 5.89 1.15 0.15 0.14 368
固形物百分率 14.40 3.20 37.04 37.93 7.43 0.99 0.88 2369
不良放牧地草 原物中 81.87 1.56 0.35 9.79 6.43 1.49 0.08 0.16 372
固形物百分率 8.63 1.95 45.78 35.44 8.20 0.15 0.89 2053
良好乾草 原物中 11.65 11.40 1.79 37.52 32.87 4.77 0.42 0.71 2530
固形物百分率 12.90 2.02 42.48 37.20 5.40 0.47 0.88 2863
不良乾草 原物中 12.65 7.32 2.01 44.77 28.61 4.64 0.31 0.76 890
固形物百分率 8.38 2.30 51.25 32.75 5.31 0.35 0.87 1018

  その2. 不良草を基礎とした比較
区分 表示区分 粗蛋白質 粗脂肪 可溶
無窒素物
粗繊維 粗灰分 石灰 燐酸 カロチン
良好放牧地草 原物中 167 164 81 107 90 220 97 115
固形物百分率 100 100 100 100 100 100 100 100
不良放牧地草 原物中 154 87 83 113 101 134 92 281
固形物百分率 100 100 100 100 100 100 100 100

 

 図1 低位生産牧野における土壌緊密度調査 
その1  良好牧野(反当生産収量3360kg)
     低位生産牧野(反当生産収量840kg)と                
      未作地における調査                          
その2 放牧地とデスクの程度による影響

 

       備考 緊密度K=1000/円錐の深さ(北農式硬度測定器による)