【指導奨励上参考に資すべき事項】

1.　成績の概要
　別記の方法によって試験した結果次のような成績を得た。
　(1)　試験機関（100日間）の増体量は南瓜区が最も多く55.167kgを示し、次は標準区で51.266kgとなり、最低は澱粉粕区で46.576kgとなっている。又増体率は標準区、南瓜区、澱粉粕の
　　　順となっている。
　(2)　体長に対する胸囲の割合は各区共に大差を認められなかった。
　(3)　飼料費は全飼料について支場販売価格で計算して100日間の育成費を比較すると、澱粉粕区最もやすく、2569円50銭を示し、次は標準区の4476円58銭であって、南瓜区の5022円
　　　70銭が一番高くなっている。又1kg増体に要する飼料費について見ると、澱粉粕区が一番安く55円10銭となっており、以下標準区の87円30銭、南瓜区の91円00銭の順になっている。
　　　更に1kg増体量に要した飼料は次のようである。

	澱粉粕(kg)	バターミルク(kg)	南瓜(kg)	燕麦(kg)	玉蜀黍(kg)	米糠(kg)
標準区		6188		0.714	0.836	1074
澱粉粕区	10770	15690
南瓜区	5510	10169	6700

　(4)　屠殺率及赤肉に対する脂肪の割合は夫々次の通りであって、屠殺率については各区間に大差はない。

	屠殺率	赤肉に対する 脂肪の割合
標準区	75.51	32.34
澱粉粕区	75.90	35.04
南瓜区	78.38	38.18

　(5)　皮下脂肪の厚さは肩、背、腰各部の間に著しい差は認められない。
　(6)　脂肪の色は澱粉粕区は純白であるが、南瓜区は稍黄色を呈していた。
　(7)　屠肉脂肪の屈折率、溶融点、沃度価の理化学的性状から見た区分は、標準区では軟脂、澱粉粕区では硬～中硬脂、南瓜区は硬脂に属していて、両試験群は共に良好であるが、
　　　南瓜区の黄色のある点は大きな欠点である。この点は商品として出荷する場合考えねばならぬことは出荷前少なくとも30日以前から飼料を変更して著色を除くことが必要と考えられ
　　　る。
　(8)　肉質については化学的成分上からみると、凡て幼齢のため一般に水分が多く蛋白質が少ない傾向にある。特に澱粉粕区に於いて蛋白質少なく、粗脂肪の量が他のものより大であ
　　　った。しかし食味の点では特に変異は認められなかった。

2.　本試験成績を廣用するに当たって注意すべき事項
　前項の成績から之を応用する場合に注意すべき事項は概ね次のような点であろう。
　(1)　馬鈴薯澱粉粕は生で給与するよりも煮熟すれず豚の嗜好度を増加し、これにバターミルクを配合することによって幼豚の発育を順調ならしめることが出来る。
　(2)　更に前項に適量の南瓜を添加することによって尚一層発育を良好にすることが出来る。此の場合の給与日量は次の通りである。
　　　　　　6ヶ月未満の幼豚に対して　　　澱粉粕　　3～10kg、　　バターミルク　5～10kg
　　　此に南瓜を添加する場合は
　　　　　　澱粉粕　　2～3kg、　バターミルク　5～7kg、　南瓜　6～8kg
　　　の範囲が適当であるが、食塩、石灰分、を同時に与え、又日光浴をさせることは保健上必要なのは勿論である。
　(3)　育成費も亦澱粉粕、南瓜を自給すれば極めてやすくなり、1kg増体に対して澱粉粕とバターミルク混合の場合は47円09銭となり、更にこれに南瓜を添加する場合は30円48銭となる。
　(4)　本試験の成績はバターミルクの代わりに脱脂乳を用いた場合にも大体応用出来るものと思われる。

3.　試験成績
　(1)　供試動物

区別	供試豚番号	種類	性	血統	生年月日
標準区	26-3	雑種	♀	父　　中ヨークシャー種公社号 母　　雑種　　H.B　2314号	昭和26.6.13
	26-5	〃	♂
	26-9	〃	♂
澱粉粕区	26-6	〃	♂	〃	〃
	26-8	〃	♂
	26-10	〃	♀
南瓜区	26-11	〃	♂	〃	〃
	26-13	〃	♀
	26-21	〃	♀

　(2)　供試飼料及び成分

	組成分					可消化成分				乾物質	純蛋白質	澱粉価
	水分	粗蛋白質	粗脂肪	可溶無窒素物	粗繊維	粗蛋白質	粗脂肪	可溶無窒素物	粗繊維
燕麦	13.80	10.90	4.80	58.10	9.30	8.70	4.00	44.70	2.30	86.20	7.70	59.60
玉蜀黍	13.80	10.00	4.70	67.10	2.70	7.20	4.20	63.70	160	86.20	6.50	76.30
米糠	13.50	14.80	18.20	35.10	9.00	10.20	16.10	29.00	4.00	86.50	9.10	75.60
バターミルク	91.60	3.10	0.60	4.10	－	2.90	0.60	4.10	－	8.40	2.90	10.80
馬鈴薯澱粉粕	92.80	0.40	－	5.30	1.30	－	－	4.40	0.40	7.20	－	4.90
南瓜										8.00	1.00	6.00

　(3)　飼料給与日量

区別	給与期間 (自～至)	飼料給与量						可消化成分			体重(kg)
		燕麦(g)	玉蜀黍(g)	糠(g)	バターミルク(g)	澱粉粕(g)	南瓜(g)	純蛋白質(g)	澱粉価(g)	乾物(g)
標準区	8.28～9.10	200	300	300	2000	－	－	120.2	790.9	858.5	26000
	9.11～9.24	300	400	400	2000	－	－	141.5	1002.4	1116.4	32000
	9.25～10.12	300	400	400	3000	－	－	170.5	1110.4	1201.4	37000
	10.13～10.21	300	400	600	3000	－	－	188.7	1261.6	1284.4	46000
	10.22～10.28	300	400	600	4000	－	－	207.7	1369.6	1458.4	50000
	10.29～11.11	400	400	700	4000	－	－	234.5	1504.8	1631.1	54000
	11.12～11.16	500	500	700	4000	－	－	250.7	1640.7	1803.5	59000
	11.17～11.26	600	600	800	4000	－	－	274.0	1852.2	2062.4	65000
	11.27～12.5	600	600	800	4000	－	－	274.0	1852.2	2062.4	70000
澱粉粕区	8.28～9.10	－	－	－	5000	3000	－	145.0	687.0	636.0	25000
	9.11～9.24	－	－	－	5000	4000	－	145.0	736.0	708.0	310000
	9.25～10.7	－	－	－	6000	4000	－	174.0	844.0	792.0	37000
	10.8～10.21	－	－	－	7000	4000	－	203.0	952.0	876.0	43000
	10.22～10.28	－	－	－	8000	4000	－	232.0	1060.0	960.0	48000
	10.29～11.4	－	－	－	8000	5000	－	232.0	1109.0	1032.0	52000
	11.5～11.11	－	－	－	9000	6000	－	261.0	1266.0	1188.0	54000
	11.12～11.20	－	－	－	10000	6000	－	290.0	1374.0	1272.0	58000
	11.21～11.26	－	－	－	10000	8000	－	290.0	1472.0	1416.0	63000
	11.27～12.5	－	－	－	10000	10000	－	290.0	1570.0	1560.0	68000
南瓜区	8.28～10.16	全く澱粉粕区と同様である
	10.17～11.4	－	－	－	5000	2000	6000	205.0	674.0	612.0	53000
	11.5～11.11	－	－	－	5000	2000	8000	225.0	678.0	628.0	62000
	11.12～11.20	－	－	－	5000	2000	8000	225.0	678.0	628.0	70000
	11.21～11.26	－	－	－	6000	3000	8000	254.0	843.0	784.0	74000
	11.27～12.5	－	－	－	7000	3000	8000	283.0	951.0	868.0	80000

　(4)　試験日数
　　　　昭和26年8月17日－8月27日　　予備試験
　　　　　　　　　　8月28日－12月5日　　100日間本試験

　(5)　発育試験成績
　　　　（試験期中は3日目毎に重体を測定その結果は下表の如し）

区別		標準区				澱粉粕区				南瓜区
月日		5号	3号	9号	平均	6号	8号	10号	平均	11号	13号	21号	平均
開始時 (kg)		21.650	21.400	23.700	22.250	23.300	22.300	23.000	22.866	25.500	26.100	23.900	25.166
終了時 (kg)		73.500	71.500	75.600	7.3533	71.500	68.700	68.100	69.433	83.100	80.200	77.800	80.333
増体重 (kg)		51.850	50.100	51.900	51.266	82.00	46.400	45.100	46.567	57.600	54.100	53.900	55.167
1日増体量 (kg)		0.518	0.501	0.519	0.512	0.482	0.464	0.451	0.465	0.576	0.541	0.539	0.551
開始時を100 とした増体率(%)		239	234	219	231	207	208	196	204	226	207	225	219
体長に 対する 胸囲 割合(%)	開始時	91.22	92.85	100.00	94.69	94.64	94.64	106.36	98.55	101.69	98.33	101.75	100.59
	終了時	85.24	80.41	91.48	86.04	91.89	88.17	88.04	89.70	90.90	86.00	87.75	88.23
平均1頭の 総飼料費		4476円58銭				2569円50銭				5022円70銭
平均1頭の 所要飼料量 (kg)		燕麦		36.700	(0.714)	澱粉粕		502.000	(10.770)	南瓜		370.000	(6.700)
		玉蜀黍		42.900	(0.836)	バター ミルク		731.000	(15.690)	澱粉粕		304.000	(5.510)
		米糠		55.100	(1.074)					バター ミルク		561.000	(10.169)
		バター ミルク		317.000	(6.188)
1kg増体に 要する飼料費		86円 30銭	89円 40銭	86円 20銭	87円 30銭	53円 30銭	55円 30銭	56円 90銭	55円 10銭	87円 20銭	92円 80銭	93円 00銭	91円 00銭
農家が 飼養 する 場合	総飼 料費	4476円58銭				2193円00銭				1683円00銭
	1kg増体 に要する 飼料費	87円30銭				47円09銭				30円48銭

　備考　(1)　飼料費は昭和26年度購入価格を以て計算せり
　　　　　　　　1kg当　　燕麦　　　25円00銭　　　　　　　　バターミルク　　3円00銭
　　　　　　　　　　　　　玉蜀黍　　30円83銭　　　　　　　　澱粉粕　　　　0円75銭
　　　　　　　　　　　　　米糠　　　 23円33銭　　　　　　　　南瓜　　　　　 8円41銭
　　　　　(2)　平均1頭の所要飼料量欄内の(　)は1kg増体に要する飼料量
　　　　　(3)　農家が飼養する場合欄に於ける飼料費は南瓜並澱粉粕を自給するものとし其の他を購入するものとして算定した。

　体重増加曲線

　(6)　屠殺試験成績
　　　1日絶食せしめ電気屠殺し湯剥をなしたその結果を示せば下表の通りである。
　　イ　体脂赤肉の理化学的性状

区別	供試豚	脂質				肉質					肉エキス
		部位	屈折率	溶融点 (℃)	沃素価	水分 (%)	粗蛋白質 (%)	粗脂肪 (%)	糖類 (%)	粗灰分 (%)	生肉1g中
											クレアチン (mg)	クレアチニン (mg)
標準区	5号	皮下脂肪	1.4595	27.3	82.6	74.66	17.39	6.29	0.55	1.11	1.12	0.064
		腎脂肪	1.4585	28.5	81.2
澱粉粕区	8号	皮下脂肪	1.4570	30.0	77.3	68.50	14.75	14.72	1.10	0.93	1.04	0.068
		腎脂肪	1.4561	45.0	52.6
南瓜区	11号	皮下脂肪	1.4561	35.7	52.7	73.00	17.32	8.14	0.40	1.14	1.18	0.062
		腎脂肪	1.4552	46.8	42.3

　備考：　脂質は北大畜産学科肉製品教室へ依頼分析せるものである。

　　ロ　解体成績

区別			標準区	澱粉粕区	南瓜区	備考
供試豚番号			26-5	26-8	26-11
屠殺前生体量(kg)			72.600	65.500	79.500
技肉量			50.300(54.825)	45.700(49.720)	57.100(62.265)	(　　)内は頭量を含む
屠殺率(%)			69.27(75.51)	69.77(75.90)	71.82(78.32)
右 半 丸	全量(kg)		24.000	22.300	27.800
	精 肉 量	赤肉	13.790	12.355	15.660
		脂肪	4.460	4.330	5.980
		計	18.250	16.685	21.640
	赤肉対脂肪比率(%)		32.34	35.04	38.18
	骨量(kg)		3.800	2.710	4.030
皮			2.800	2.230	2.730
放血量			2.400	2.250	2.750
頭量			4.525	4.020	5.165	第1頸椎部より切断す
内臓量			9.000	8.350	8.650	大腸、小腸、網膜、胃を含む
腎臓脂肪量			.635	.450	.875
大網膜量			.125	.085	.135
	肩部	内脂	2.7	2.6	2.5	第7頸椎部で測定す
		外脂	1.6	1.5	1.4
		計	4.3	4.1	3.9
皮 下 脂 肪 の 厚 さ (cm)	背部	内脂	1.6	1.1	1.6	第9胸椎部で測定す
		外脂	1.4	1.2	1.4
		計	3.0	2.3	3.0
	腰部	内脂	1.4	1.3	1.5	第5腰椎部で測定す
		外脂	1.4	1.2	1.4
		計	2.8	2.5	2.9
屠 肉 状 態	色		淡色	淡白色	黄青色
	光沢		普通	普通	普通
	繊維		〃	〃	〃
	緊縮状態		稍硬	硬	軟
	脂肪の混合状態		少	多	稍多
脂 肪 状 態	ロイン部	色	淡桃色	純白	稍黄色
		硬さ	軟	硬	稍硬
	腎 周囲部	色	淡桃色	純白	稍黄色
		硬さ	軟	硬	稍硬