【指導奨励上参考に資すべき事項】
傾斜地に於ける土壌流亡防止に関する試験調査成績 等高線栽培に関する調査成績(春季豪雨に於ける効果) 傾斜地研修室 |
1952年5月27日~29日に襲来せる豪雨によって羊蹄山麓地帯を始め、本道各地の傾斜地地帯には近年稀有の土壌浸蝕と之による災害を被ったのであるが、該時期における浸蝕の特性と等高線栽培の効果を確認したのでその調査成績を報告する。
1.降雨の性質
1952年5月27~29日に於ける降雨の性質を傾斜地研究室の圃場に設置した自記雨量計によって調査した結果は表1の如く、5月27日に於いて10分間最大1.8mm総降雨量21.5mmの降雨を見、その後5月28日20時20分より10分間最大6.8mm降水時間3時間10分間降水量19.4mmの降雨によって甚だしい浸食を示した。
表1 降雨の性質
月日 | 最大雨量 | 10分最大 | 30分最大 | 60分最大 | 合計 |
5.27 | 1.8mm | 2.8mm | 7.0mm | 21.mm5 |
月日 | 時間 | 23時00 | 23時10分 | 23時20分 | 23時30分 | 23時40分 | 0時30分 |
5.27 | 雨量 | 2.0 | 6.8 | 2.7 | 1.3 | 1.5 | 3.4 |
2.土壌及び地表面の状態
調査時(5月28日)に於ける、土壌及び土壌面の状態は越冬作物を除き各作物共耕株及び播種后3~18日であり、何れも発芽前及び直後であって土壌面は殆ど裸地に等しく極めて脆弱な状態にあった。土壌は膨軟にして可成り浸透性は高い状態にあったが、前日(5月28日)の降雨によって土壌水分は飽和に近い状態にあった。
3.調査結果(1952.5.29調査)
第1表 供試作物 燕麦(発芽直後) 斜面 7-8°(50m)
区別 | 流去土壌量 1/10ha当kg |
流去水量 mm |
流去水率 % |
最小浸透度 mm |
SWg |
1.上下耕栽培 | 750 | 3.09 | 13.7 | 3.71 | 243 |
2.等高線栽培 | 484 | 1.85 | 8.2 | 4.95 | 262 |
3.等高線帯状 | 397 | 1.70 | 7.6 | 5.10 | 234 |
第2表 供試作物 馬鈴薯 播種直後
区別 | 流去土壌量 1/10ha当kg |
流去水量 mm |
流去水率 % |
最小浸透度 mm |
SWg |
1.上下耕栽培 | 454 | 1.61 | 7.2 | 5.19 | 282 |
2.等高線栽培 | 325 | 1.39 | 6.2 | 5.41 | 234 |
3.等高線帯状 | 139 | 115 | 5.1 | 5.65 | 83 |
第3表 急傾斜における成績 燕麦(発芽直後) 斜面23-25°(25m)
区別 | 流去土壌量 1/10ha当kg |
流去水量 mm |
流去水率 % |
最小浸透度 mm |
SWg |
1.上下耕栽培 | 668 | 2.17 | 9.6 | 4.63 | 308 |
2.等高線栽培 | 566 | 3.09 | 13.7 | .71 | 83 |
3.等高線帯状 | 1076 | 3.09 | 13.7 | 3.71 | 348 |
考察
作物の生育中及収穫後に於いて等高線栽培が極めて有効な侵食防止の効果を示すことはすでに発表されているが、春季作物が播種及び発芽直後に於いて単に播溝の方向或いは斜面を緑地帯で分割することによって極めて顕著な侵食防止効果を示した。
尚急峻な斜面に於いては上下方向畦に比して斜畦が極めて流去土壌量を多く示しているのは畦の総長によるものであり、又等高線畦に比して上下向畦は流去水量が少ないにもかかわらず、流去土壌の多かったことは播種直後に於ける浸蝕状況は播溝内に集水され畦に沿って流去し、播溝の全長が長い程損失される土壌量が多く、同時に災害的条件も倍加されることは春季における土壌侵食の特異性とも云える。