【指導奨励上に資すべき事項】

蚕簡易飼育法に関する試験成績

 

 本道に於いては府県に於けるよりも農家1戸当たりの経営面積が広く随って農家に於ける余剰労力が比較的小さいので、本道の養蚕経営はなるべく労力を節約し得る飼育法でなければならない。而して養蚕経営上最も多くの労力を要するのは壮蚕期即ち4.5齢期であるから特にこの時期の労力を節約し得る簡易な飼育法を明らかにしようとして行った試験成績は次の如くである。

 (1) 供試品種   日115号×支108号
 (2) 試験施行年次  昭和26年及び同27年春並びに夏蚕
 (3) 試験方法
   試験区             飼育概要
  普通区(対照区)     壮蚕期即ち4.5齢に於いて普通の棚解を行う
  4.5齢平飼         4齢及び5齢期を平飼とし、4齢期は就眠の際蚕座に燕麦稈を敷き、又5齢期には毎日一回給桑前蚕座に燕麦稈
                 を敷き除沙を行わない。
  5齢平飼          4齢期には普通の棚卸しを行い、5齢期には前区と同様な平飼を行う。
 (4) 試験成績 (対掃立1万頭)
  (イ) 飼育経過調査
     (一) 春蚕
試験区 飼育日数 飼育温湿度 減蚕歩合(%)
4齢 5齢 温度(度) 湿度(%)
普通育 7日19時 10日12時 18日7時 21.4 74.8 6.5
4.5齢平飼 10日5時 18日- 74.6 13.3
5齢平飼 5.9

     (二) 夏蚕
試験区 飼育日数 飼育温湿度 減蚕歩合(%)
4齢 5齢 温度(度) 湿度(%)
普通育 5日22時 9日17時 15日15時 23.0 82.0 10.0
4.5齢平飼 9日14時 15日12時 8.8
5齢平飼 7.1

  (ロ) 収繭調査
     (一) 春蚕
試験区 収繭量 繭質(対1顆平均)
上繭
(g)
同項繭
(g)
屑繭
(g)

(g)
繭重
(g)
繭層重
(g)
繭層歩合
(%)
普通育 15.345 1.581 214 17.140 1.843 0.357 19.5
4.5齢平飼 14.270 1.270 113 15.653 1.830 0.376 20.8
5齢平飼 16.305 1.129 263 17.697 1.799 0.348 19.5

     (二) 夏蚕
試験区 収繭量 繭質(対1顆平均)
上繭
(g)
同項繭
(g)
屑繭
(g)

(g)
繭重
(g)
繭層重
(g)
繭層歩合
(%)
普通育 12.485 843 1063 14.391 1.797 0.322 18.0
4.5齢平飼 12.795 688 668 14.151 1.709 0.295 17.8
5齢平飼 13.775 875 508 15.158 1.716 0.306 18.0

  (ハ) 労力調査
     (一) 春蚕
試験区 令別 摘桑
(時分)
給桑
(時分)
除沙分箔
(時分)
上簇
(時分)
其の他
(時分)

(時分)
普通育 4齢 57 3.1 27 - 9 4.34
5齢 5.53 6.53 2.37 4.35 41 20.38
6.50 9.54 3.4 4.35 50 25.12
4.5齢平飼 4齢 59 1.51 18 - 9 3.17
5齢 5.53 3.45 1.6 3.55 41 15.20
6.52 5.36 1.24 3.55 50 18.37
5齢平飼 4齢 57 3.1 27 - 9 4.34
5齢 5.50 3.36 54 4.26 41 15.27
6.47 6.37 1.21 4.26 50 20.1

     (二) 夏蚕
試験区 令別 摘桑
(時分)
給桑
(時分)
除沙分箔
(時分)
上簇
(時分)
其の他
(時分)

(時分)
普通育 4齢 32 1.26 20 - 19 2.37
5齢 4.9 5.18 1.28 3.46 53 15.34
4.41 6.44 1.48 3.46 1.12 18.11
4.5齢平飼 4齢 32 58 12 - 14 1.56
5齢 4.7 3- 35 4.39 39 13-
4.39 3.58 47 4.39 53 14.56
5齢平飼 4齢 32 1.26 20 - 19 2.37
5齢 4.7 3.1 34 4.26 38 12.46
4.39 4.27 54 4.26 57 15.23
  同上労力百分率

      春蚕
試験区 摘桑
給桑
除沙分箔
上簇
其の他

普通育 100 100 100 100 100 100
4.5齢平飼 100 57 43 85 100 74
(64)
5齢平飼 100 66 43 98 100 80
(72)

      夏蚕
試験区 摘桑
給桑
除沙分箔
上簇
其の他

普通育 100 100 100 100 100 100
4.5齢平飼 100 59 41 122 79 82
(56)
5齢平飼 100 65 50 115 86 84
(59)
  備考  上表中計の(  )の中の数字は摘桑を除ける屋内作業労力の百分率である。

 (5) 考察
  (イ) 飼育日数は春夏蚕共三区間に殆どその差が認められない。次に減蚕歩合は春蚕に於いては5齢平飼は普通育よりも僅かに少ないが
     4.5齢平飼は遙かに多く、又夏蚕に於いては5齢平飼が最も少なく4.5齢平飼が之に次ぎ普通育が最も多い。

  (ロ) 収繭量は春蚕に於いては5齢平飼と普通育は殆ど差異が認められないが4.5齢平飼は之よりも少なく、又夏蚕に於いては4.5齢平飼と
     普通育は殆ど差がなく5齢平飼は之よりも多い。次に繭層歩合は春蚕に於いては、5齢平飼と普通育は同一で4.5齢平飼は之よりも
     稍多く、又夏蚕に於いては三区間に殆どその差が認められない。

  (ハ) 労力は春夏蚕共平飼を行えるものは普通育に比較し給桑と除沙分箔が特に多く節約し得られ、又合計労力に於いては4.5齢平飼が
     最も少なく5齢平飼が之に次いでいるが、この両者の差は比較的少ない。

 

結論
  以上の結果を通覧するに春夏蚕共5令平飼は減蚕歩合少なくして収繭量多く、比較的労力を節約し得る有利な飼育法と認める。