【指導奨励上参考に資すべき事項】
寒冷感作が離乳仔牛の発育に及ぼす影響
道立農業試験場根室支場 |
道立農業試験場根室支場に於ける昭和26年度に於いて実施した試験成績を紹介する。
1. 試験方法
(イ) 供試仔牛は4頭で何れも生後6~7ヶ月の離乳牡仔牛を使用した。
(ロ) 試験期間並びに試験方法
離乳期に於ける仔牛の寒冷作用に対する感作を明らかにする為め12月28日より3月6日に至る最も寒い時期90日間に於いて、ほぼ月齢
の近似した仔牛を選んで対応させ各1組とし此の各組を寒冷群と温暖群に区別し、寒冷群は収納舎の一部を改造し、賊風の入らぬ様にし
て、且つ零度以下に保たれる様にし、温暖群は防寒設備を良好にし最低零度以上に保たれる様注意した。
(ハ) 飼料の給与は、粗飼料は良質の乾牧草を予め残食調査により飽食量を調査し、モリソン氏飼養標準により不足分を別表割合の濃厚飼
料で給与した。
舎温外気温の観測は毎日6時、12時、20時の3回行い、供試仔牛の体各部位及び体重の測定は、試験開始時及び終了時に慣行法に
より測定した。
尚敷藁は充分に与えて糞尿による牛体の汚染を防止した。
第1表 供試仔牛
群別 | No | 名号 | 種類 | 性別 | 生年月日 |
寒冷群 | Ⅰ | 花雄 | ホ雑 | 雄 | 昭和26年5月18日 |
Ⅱ | 赤堀 | ホ雑 | 雄 | 〃 6月16日 | |
温暖群 | Ⅲ | 第5キング | ホ | 雄 | 〃 7月8日 |
Ⅳ | ダンテス | ブ | 雄 | 〃 5月12日 |
第2表 供試飼料
飼料名 | DLD | TDN | 1日分給与量 | 備考 |
配合肥料 | 12.21 | 72.09 | 1.7~2.1kgを体重に応じ給与 | 配合割合 玉蜀黍25%、乳牛配合34%、燕麦41% |
乾牧草 | 4.49 | 40.38 | 4.5kg |
2. 試験成績
(1) 体重及び体各部位の測定平均値(開始時を100とした各群別平均発育 (%)
群別 | 体重 | 体高 | 十字部高 | 座骨高 | 胸巾 | 胸深 | 腰角巾 | かん巾 | 座骨巾 | 尻長 | 体長 | 胸囲 | 管囲 |
寒冷群 | 114.0 | 104.7 | 103.6 | 105.1 | 102.3 | 107.8 | 109.6 | 107.3 | 107.3 | 105.6 | 104.3 | 104.7 | 104.4 |
温暖群 | 126.4 | 104.7 | 104.0 | 105.9 | 106.9 | 107.7 | 109.8 | 110.2 | 114.2 | 108.3 | 111.0 | 107.6 | 105.7 |
(2) 試験群週別総体量平均値 kg
群別 | 1週 | 2週 | 3週 | 4週 | 5週 | 6週 | 7週 | 8週 | 9週 | 10週 | 計 |
寒冷群 | 3.0 | 3.0 | 3.0 | 2.5 | 2.5 | 2.25 | 2.75 | 2.0 | 2.5 | 2.5 | 26.0 |
温暖群 | 4.25 | 4.25 | 5.5 | 5.75 | 5.25 | 4.5 | 4.75 | 5.25 | 5.0 | 5.0 | 49.5 |
(3) 試験期間中の気温
試験期間中平均気温 | 寒冷群 | 温暖群 | 外気温 |
試験期間中平均気温 | -7.82℃ | +1.63℃ | -11.01℃ |
試験期間中両群温度差 | 9.46℃ |
3. 考察及び結論
以上の成績によれば体各部位の発育は温暖群は全般的に良好であった。之に反し寒冷群は全般的に発育が劣り、特に体長、胸囲胸巾等に於いて劣っており、寒冷環境下にあっては標準飼育に於いても尚体躯の矮小化をもたらし、然も乳用形としての重要部位にその度が強く、乳用牛としての体形育成上大いに阻害せられる傾向を示している。
体重は、寒冷群はその発育増量は極めて悪く長期に渉るに及び益々温暖群との差が大になる。
以上を要約すれば冬期の離乳期の仔牛を育成に於いては牛舎の防寒施設に万全を期せぬ時は充分な発育を期することは出来ない事を示している。