【指導奨励上参考に資すべき事項】

成績の概要
　1）　本試験は馬鈴薯を飼料用として長期貯蔵する場合の1方法として考案したもので、先ず馬鈴薯を煮熟し、その8%に相当する米糠燕麦（挽割）等量混合物と共に円筒形地下サイロ（木製5×9尺）に填充し、緻密に踏圧して蓋をなし、重圧を加え、6ヶ月を経て豚に給与し、100日間に亘って飼養試験を行ったものである。
　2）　製品の総酸量は2.26%、P.H4.22、上層の腐敗は殆どなく、豚の嗜好に好適し、詰込後10ヶ月を経過したる後に於いても、全く悪変を認められず、飼料用馬鈴薯貯蔵法としては推賞し得るものである。
　3）　本エンシレージとバタミルクを以て飼養した豚（試験区）はチャールスクラウザーの標準発育曲線を上回る成績を示し、特別配合飼料（配合飼料12.7%、米糠87.3%）とバタミルクを以て飼養した豚（対照区）に比し、飼料の利用率は36%高く、1K増体に要した飼料費は30%安くついた。試験区の給与日量は3～6ヶ月の子豚に対しては体重の1/10のエンシレージとバタミルクを体重の1/5より初め、漸減して1/11となした。
　4）　供試豚を1日絶食せしめて屠殺した結果は両区共屠肉歩合は64.8%であったが、肉質は試験区のものが劣っていた。又脂肪は着色せず、融点の高いものが得られた。
　5）　馬鈴薯煮熟にはその90俵に対し、1屯弱の石灰と20人工の労力を要したが、後日給与に当たっては何等手間を要せず、晩秋又は初冬の農閑期に調整すれば、農閑期の飼養は大いに簡易化されて好都合である。

試験の概要
　1）　供試飼料分析表

飼料名	粗成分					可消化成分				T.D.N
	水分	粗蛋白	粗脂肪	N.F.E	粗繊維	粗蛋白	粗脂肪	N.F.E	粗繊維
配合飼料	13.36	27.63	7.46	34.83	7.90	16.54	5.64	32.99	2.68	6.49
米糠	13.40	14.40	18.90	34.20	8.70	8.60	15.10	23.90	2.60	69.1
バターミルク	91.60	3.10	0.60	4.10	－	2.90	0.60	4.10	－	8.4
薯糠エンシレージ	75.27	1.94	0.61	19.71	1.05	1.63	0.52	14.19	2.67	17.6

2) 薯糠エンシレージ有機酸定量結果

乳酸	醋酸		酪酸		総酸量	乳酸と醋酸の比	P.H
	遊離状態	結合状態	遊離状態	結合状態
1.99%	0.10%	0.17%	－%	-%	2.26%	88：12	4.22

　3）　飼料給与日量

区別	給与期間	給与日量			可消化	T.D.N (g)	体重 (kg)
		特別配合肥料 (kg)	バターミルク (kg)	薯糠エンシレージ (kg)	粗蛋白 (g)
対照区	6月19日～6月29日	1370	2020	－	193.8	1101.7	25100
	6.30～7.9	1850	1810	－	274.4	1415.6	31700
	7.10～7.19	2300	1630	－	253.8	1721.6	38600
	7.20～7.29	2286	1630	－	252.0	1707.8	43300
	7.30～8.8	2280	1630	－	252.0	1707.8	48300
	8.9～8.18	2606	1490	－	291.7	2010.6	54300
	8.19～8.28	2750	1760	－	298.5	2097.6	59300
	8.29～9.7	2610	1850	－	288.6	2005.9	64100
	9.8～9.17	2820	1680	－	302.5	2140.5	68200
	9.18～9.26	2870	1530	－	304.5	2177.5	72600
試験区	6.17～6.29	－	4670	2640	176.0	951.9	23700
	6.30～7.9	－	5100	3240	230.4	1163.2	29700
	7.10～7.19	－	5200	4690	217.1	1364.4	37100
	7.20～7.29	－	5200	4310	220.6	1414.3	42800
	7.30～8.8	－	5200	4310	220.6	1414.3	48100
	8.9～8.18	－	6540	6840	300.5	2100.7	56900
	8.1～98.28	－	6790	7770	322.8	2332.6	65100
	8.29～9.7	－	6660	7190	308.0	2167.5	71400
	9.8～9.17	－	6820	7740	323.2	2328.3	78300
	9.18～9.26	－	6250	8230	314.6	2391.6	87600

　　備考　　特別配合肥料とは乳牛用配合肥料12.7%に米糠87.3%を混じたものである。

　4）　発育成績

	対照区					試験区				中ヨークシヤー種 標準
	1号	4号	12号	17号	平均	2号	3号	8号	平均
体重開始前(kg)	23.9	25.0	18.3	20.0	21.80	21.3	22.0	19.3	20.86	19.78
体重終了後(kg)	83.8	94.7	75.4	54.9	74.9	98.0	92.8	88.1	92.96	68.43
総体重(kg)	59.9	59.7	57.1	34.9	52.90 (100)	76.7	70.8	63.8	72.10 (13.6)	48.65
一日平均増体重(kg)	0.599	0.597	0.571	0.349	0.529	0.767	0.708	0.688	0.721
発育立(%)	251	239	312	175	24.3 (100)	360	322	356	346 (12.2)
胸囲開始前(cm)	60.5	62.5	56.5	57.0	59.13	59.5	58.0	56.5	57.33
胸囲終了後(cm)	103.5	98.5	93.5	82.0	94.40	101.0	102.0	97.0	100.06
増（(cm)	43.0	36.0	37.0	25.0	35.27 (100)	43.5	44.0	40.5	42.67 (121)
発育立(%)	233	198	219	158	202 (100)	245	245	235	242 (120)
体長開始時(cm)	65.0	66.0	61.0	640	64.0	65.5	67.5	63.0	65.33
体長終了時(cm)	102.0	103.5	101.5	86.0	98.25	109.5	104.0	108.0	107.56
増(cm)	37.0	37.5	40.5	22.0	34.25 (100)	44.0	36.5	46.0	42.17 (123)
発育立(%)	196	195	221	128	185 (100)	223	188	238	216 (117)
胸囲に対する体長割合開始時(%)	91.54	94.70	92.62	87.06	91.98	87.79	85.93	89.68	87.80
〃　　　　　終了時(%)	101.47	95.17	92.12	95.33	96.02	92.24	98.08	88.99	93.10

　第1回　　体重の発育曲線
　

区別 項目		対照区	試験区
平均1頭の所要飼料量(kg)		特別配合飼料　　59010	薯糠エンシレージ　　550074
		バターミルク　　　　43730	バターミルク　　　　　588994
平均1頭の所要飼料成分(kg)	可消化粗蛋白	26507	25799
	T.D.N	179784	174848
1kg増体に要する飼料量(kg)		特別配合飼料　　　4462	薯糠エンシレージ　　　　7600
		バターミルク　　　　　3352	バターミルク　　　　　　　8168
〃　　　　　　　飼料成分量(g)	可消化粗蛋白	501.1（100）	357.8（71.4）
	T.D.N	3398.6（100）	2425.1（71.4）
平均1頭の総飼料費（円）		598442（100）	572124（96）
1kgの増体に要する飼料費(円)		113.13(100)	79.74（70）
飼料の利用率		100	136

　　備考　　飼料費は昭和27年度購入価格を以て計算した。即ち1kg　　配合飼料　　325円、米糠　　　21.67円、バターミルク　　31円、　　馬鈴薯　　5.83円
　　　　　　　燕麦　25.0円

　6）　屠殺成績
　1日絶食して電気屠殺し湯剥をした結果は次の通りである。

　　ⅰ）　解体成績

供試豚名号 調査事項			対照区 27-4号	試験区 27-8号	備考
屠殺前生体重(kg)			83.460	93.450
肢肉量(kg)			54.069	60.580
屠肉歩合			64.78	64.83
右 半 丸	全量		21.750	30.030
	精肉量 (kg)	赤肉	17.000	18.600
		脂肪	6.300	7.030
		計	23.300	25.630
	赤肉対脂肪比率(%)		37.06	37.80
	骨量(kg)		3.600	4.060
皮重量(kg)			7.950	11.850
放血量(kg)			1.670	2.300
頭量(kg)			3.587	4.271	第1頸椎部切断
内臓量(kg)			9.508	10.217	胃、大腸、小腸、網膜含む
腎臓脂肪量(kg)			0.330	0.300
大網膜量(kg)			0.080	0.195
皮下脂肪層の 厚さ(cm)		肩部	3.9	3.1	第7頸椎部測定
		背部	3.3	3.1	第9胸椎部測定
		腰部	1.7	2.8	第5腰椎部測定
屠肉状態		色	淡紅色	煮肉様灰白赤色
		光沢	良好	稍劣る
		繊維	細い	荒い
		緊縮状態	良好	普通
		脂肪の混合状態	良好にして筋繊維 間によく入り込んでいる	普通
脂肪 状態	ロイン部	色	純白色	淡桃色
		硬度	軟	硬
	腎囲部	色	白色	淡紅色
		硬度	軟	硬

　7）　肉質の分析成績

区別	供試豚 名号	水分 (%)	粗蛋白 (%)	純蛋白 (%)	粗脂肪 (%)	糖類 (%)	粗灰分 (%)	肉エキス（生肉1kg中）mg
								クレアチン	クアチニン
対照区	27-4号	76.69	16.85	14.52	3.02	2.44	1.00	1.15	0.62
試験区	27-8号	76.73	16.73	14.46	3.93	1.91	1.00	0.5	0.39

　　備考　　糖類はグリコーゲン澱粉並びに糖を示す。