【指導奨励上参考に資すべき事項】

家畜の飼料中毒に関する試験成績

 

 北海道に於ける家畜の疾病中、飼料の中毒に由来するものが少なくない。そこで之に関連して、最近道立農業試験場の発表した報告を次に紹介する。

 

(1) 羊歯類の中毒症
 本中毒症は羊歯類の採食により馬に発生する。病馬は腰萎を以て主徴とし、後躯強硬、元気沈衰、食欲減退を伴い、体温、脈拍、赤血球数には著変を認めない。
 本症の原因は羊歯類に含まれる或種の毒性分が飼料中のビタミンBを破壊するためであると考えられる。本症は主として馬を侵し、臨床獣医家に依ればビタミンB1の大量注射に依り回復する。本症の多発する十勝地方では「腰ふら」或いは腰萎症などと称している。発生頭数は北海道農業共済組合連合会十勝支部に拠れば次の通りであるが、斃死立は44.7%に達する。

市町村名 20年 21年 22年 23年 24年
川西 2 2 26 4 34
帯広 2 2 9 3 3 19
音更 14 30 29 13 86
芽室 3 4 5 12
鹿追 3 5 2 2 4 16
上士幌 5 2 14 2 23
士幌 9 32 42 57 19 159
西足寄 3 3
本別 4 7 11
池田 1 1 2
幕別 1 2 8 4 15
豊頃 1 1
大樹 3 3
大正 5 3 8
14 68 98 58 54 392

 本症罹病馬の摂取した飼料は、いずれも羊歯類(主としてヒメシダ、ワラビ)を混じ、此の飼料を牧草、稿稈類と変更することにより、本病を治癒し又は防止することが出来た。従って本病の原因を羊歯類に帰することが出来る。
 本病の発生した農家では羊歯類の混在する野乾草を、カッターを以て大豆稈、稲稈などと共に3~4cm細切し、1回に1貫に500匁内外、1日4~6回給与した。
 同地方は野乾草刈取用の原野面積が広大で、植生は荒廃過程にあるので、羊歯類の構成割合が比較的多い。又同一地域に於いても排水不良の湿地に羊歯類が多く繁茂しており、且つ之を採食した馬に発病率が高い。
 以上の結論として本症予防のためには、羊歯類の生育する採草地の改良を根本策と認める。

(2) 赤黴病被害小麦の中毒症
 十勝地方の小麦の中には年々赤黴病の被害を受けるものが少なくない。此の被害小麦を家畜に採食せしむるか或いはその抽出物を15~20cc注射することに依って、中毒を起こし得ることが認められた。山羊及び豚を用いて実験を試み次の結果を得た。
  1. 山羊に於いては体温の上昇、脈拍、呼吸数の増加、赤白血球数の増加、妊羊の流産
  2. 豚に於いては発熱、元気沈鬆、倦怠、可視粘膜のチアノーゼ、転倒、神経症状