【指導奨励上参考に資すべき事項】
春播小麦極早播試験成績
北見支場 |
1. 目的
早播が春播麦類に及ぼす生育及び収量を調査する。
2. 試験方法
イ 耕種梗概
反当施肥量(貫) | 畦巾 (cm) |
播種法 | ||
硫安 | 過石 | 硫加 | ||
4 | 7 | 1 | 50 | 条播 |
ロ 播種期
4月1日、4月10日、4月20日、4月30日、5月10日、5月20日
3. 試験経過
昭和26年 | 昭和27年 | |
播種 状況 |
融雪期は3月20日で「4月1日播」は土壌凍結していたため耕鋤しても細土は出来なかった。播種当日は凍結状態の土壌は泥濘化し、畦立出来めため正常な播種は困難であって泥土を覆土した状態となった。 4月10日以降は耕鋤整地共に容易に出来得る状態で正常に播種された。 |
融雪期は3月28日で「4月1日播」当時土壌凍結の状態にあったので耕鋤できず、地表面5~6cm位まで耕鋤して播溝を作り播種した。4月10日以降は耕鋤整地共に容易に出来得る状態となった。 |
発芽 状況 |
「4月1日播」は地温低く発芽始めまでに19日を要し発芽率は僅かに24%であった。次いで「4月10日、20日播」は前播種に比べて地温は稍高かったが大差なく「4月10日播」は18日間「4月20播」は13日間、発芽始までの日数を要した。その後の播種区は異状なく発芽を了した。
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発芽は地温が低く過湿であったので発芽始までに15日間要した。発芽率は66%であった。「4月10日、20日播」は前播種より地温は稍高く経過したが発芽始まで「4月10日播」は16日間「4月20日播」は11日間を要した。その後の播種区は良好に発芽を了した。 |
生育 状況 |
生育は播種期に差があり早播区ほど優る6月中旬寡照多湿に経過したので「4月30日播」以降の播種区は徒長軟弱の生育となった。7月12日7月25日の降水風害で全区倒伏の被害を受けたが、単播3処理は恢復し概ね正常となったが他区は上部節より囲って穂だけ追立した。 |
発芽後各区共に生育は良好、6月下旬に降水量が少なく土壌は旱魃の状態となり、生育は稲抑制され晩播程被害は大であった。7月上旬に多量の降雨により恢復したが分げつは抑制された。6月下旬より赤銹病、7月下旬より黒銹病の発生をみた。赤銹病は各播種期に差はなく、罹病程度は「中」黒銹病は「5月10日播」は「中」で「5月20日播」は「多」で他は「少」であった。 |
4. 試験成績
生育調査
播種期 | 発芽期 (月日) |
6月1日 | 7月1日 | 成熟期 | 止葉期 (月日) |
出穂期 (月日) |
成熟期 (月日) |
生育 日数(日) |
結実 日数(日) |
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草丈 (cm) |
茎数 | 草丈 (cm) |
茎数 | 草丈 (cm) |
穂数 | 穂長 (cm) |
|||||||||
昭26 | 昭27 | 昭28 | |||||||||||||
4月1日 | 4.21 | 32 | 85 | 98 | 87 | 106 | 86 | 63 | 75 | 1.0 | 6.8 | 6.19 | 7.31 | 120 | 42 |
4月10日 | 5.1 | 33 | 102 | 105 | 94 | 112 | 98 | 76 | 87 | 9.5 | 6.21 | 6.21 | 8.1 | 113 | 41 |
4月20日 | 5.7 | 30 | 109 | 97 | 93 | 109 | 97 | 64 | 81 | 9.6 | 6.16 | 6.25 | 8.3 | 106 | 39 |
4月30日 | 5.11 | 24 | 110 | 83 | 106 | 111 | 117 | 60 | 89 | 9.7 | 6.22 | 6.28 | 8.7 | 99 | 41 |
5月10日 | 5.21 | 18 | 60 | 78 | 112 | 117 | 101 | 53 | 77 | 9.8 | 6.27 | 7.5 | 8.1 | 93 | 37 |
5月20日 | 5.28 | 12 | 43 | 68 | 115 | 116 | 94 | 59 | 77 | 9.6 | 7.6 | 7.13 | 8.16 | 88 | 34 |
収量調査
播種期 | 子実歩合(%) | 反当子実重量(貫) | 収量割合(%) | 一升重(匁) | 千粒重(g) | ||||||||||
昭26 | 昭27 | 平均 | 昭26 | 昭27 | 平均 | 昭26 | 昭27 | 平均 | 昭26 | 昭27 | 平均 | 昭26 | 昭27 | 平均 | |
4月1日 | 37.1 | 42.9 | 40.0 | 63.0 | 73.5 | 68.3 | 78 | 90 | 84 | 349 | 368 | 359 | 38.7 | 47.5 | 43.1 |
4月10日 | 39.2 | 40.8 | 40.0 | 80.9 | 81.3 | 81.1 | 100 | 100 | 100 | 354 | 371 | 363 | 40.3 | 47.2 | 43.8 |
4月20日 | 36.7 | 36.4 | 36.6 | 74.6 | 65.2 | 69.9 | 92 | 80 | 86 | 351 | 368 | 360 | 38.3 | 45.4 | 41.9 |
4月30日 | 33.9 | 33.8 | 33.9 | 71.1 | 59.3 | 65.2 | 88 | 73 | 81 | 340 | 363 | 352 | 36.1 | 43.6 | 39.9 |
5月10日 | 30.9 | 27.9 | 29.4 | 65.4 | 41.0 | 53.2 | 81 | 50 | 66 | 326 | 351 | 339 | 30.4 | 39.9 | 35.2 |
5月20日 | 26.2 | 22.0 | 24.1 | 53.2 | 30.1 | 41.7 | 66 | 37 | 52 | 336 | 336 | 336 | 33.7 | 34.8 | 34.3 |
播種期による生育速度図表(昭和27年度)
各播種期による主要特性の変異(2ヶ年平均4月10日を100とした場合の比率)
考察
収量では極早播の「4月1日播」では土壌乾燥していないため発芽が悪く収量劣ったが其の他の区では「4月10日播」が最も優り順次播種期が遅れるに従って収量を減じ「5月20日播」では最も劣り「4月10日播」の52%を示すに過ぎない。
此れを収量構成要素より見ると穂数は「昭和26年」は晩播区に多く「昭和27年」は早播区に多い傾向を示したが昭和27年度は生育の途中に旱魃に遭ったため有効穂数が少なくなったと考えられる。一升重、千粒重は播種期が遅れるに従って減少し登熟不十分なことを示し、収量に最も大きい影響を与えたものと考えられる。尚「昭和26年度」の「5月10日播」が「5月20日播」よりも一升重千粒重が劣っているのは出穂直後の風雨により倒伏甚しかったためである。
以上のことより融雪後、発芽に障害がなく耕鋤整地等が容易に出来得る状態になれば、春播麦類は努めて早く播種することが最も良好である。