【指導奨励上の参考事項】

小麦「大中山」に関する試験成績

渡島支場

 

1. 来歴
 本品種は十数年前に七飯村字大中山付近で初めて試作されたものと言われる。但し草丈の長短、芒の有無、ふ毛の有無、出穂の早晩等、各種形質が混在して居り、品種として取り扱うことは出来ず、又名称もつけられず二三の農家により栽培が続けられていた。そこで渡島支場では昭和25年以来「大中山」と仮称し選抜に着手し、昭和26年夏に80系統を分離し、翌年更に15系統選抜した。然し当初は単に品種の混合と予想した所が実は遺伝的に雑種であった為選抜固定に数ヶ年を要したが、この中「大中山13号」と称していたものが適当と認められた。

2. 特性概要
 当地方としては小麦の作付が極めて少なく、比較対照として適当とは言われないが一応「赤銹不知1号」「農林62号」と比較すれば、
  (1) 短稈(20~30cm短)で倒伏しない。
  (2) 出穂は数日早く赤銹病に強い。
  (3) 収量は安定していて年による差は少なく且つ多収である。
  (4) 肥沃な蔬菜地跡では特に増収する。
  (5) 品質は「赤銹不知1号」より稍劣る。

3. 奨励地帯
 渡島、桧山地方の限定品種として奨励したい。

4. 試験成績  自昭和26年 至昭和29年  4ヶ年平均
  (1) 特性調査
品種名 叢性 穂型 ふ色 ふ毛 粒型 粒の大小 粒色 品質 硝子率(%)
大中山13号 稍短 中ノ下 61.5
赤銹不知1号 頂短 中ノ上 49.5
農林62号 長多 45.5

  (2) 生育調査
品種名 年次 出穂期
(月日)
成熟期
(月日)
成熟期 冬損 倒伏 病害
草丈(cm) 茎数(本) 穂長(cm) 赤銹 ウドンコ
大中山13号 26 6.1 7.23 130 93 8.4
27 5.29 7.21 111 64 8.2
28 6.7 7.25 126 92 9.5 極少
29 6.6 7.27 110 79 8.9
平均 6.5 7.24 119 82 8.7
赤銹不知1号 26 6.6 7.25 137 103  
27 5.29 7.23 153 74 8.5 極多 極多
28 6.8 7.26 140 68 8.0
29 6.10 7.29 133 87 8.8
平均 6.6 7.26 141 83 8.4
農林62号 26 6.3 7.23 142 91  
27 5.29 7.19 136 62 8.5 稍多
28 6.7 7.24 127 64 7.0
29 6.9 7.27 110 76 7.8
平均 6.4 7.24 128 73 7.7

  (3) 収量調査
品種名 年次 反当子実収量 千粒重
(g)
一升重
(g)
重量(貫) 俵数 収量割合(%)
大中山13号 26 92.8 5.7 176    
27 75.2 4.7 127 37.7 332
28 78.9 4.9 127 38.6 333
29 77.8 4.8 105 47.3 352
平均 81.2 5.1 131 41.2 339
赤銹不知1号 26 52.8 3.3 100    
27 59.2 3.7 100 38.2  
28 62.1 3.9 100    
29 74.2 4.6 100 45.1 366
平均 62.1 3.8 100    
農林62号 26 65.6 4.1 124    
27 49.6 3.1 84 32.8  
28 50.9 3.2 82    
29 79.7 4.9 107 40.6 348
平均 61.4 3.8 99