【普及上の参考事項】

昭和29年産種籾の選種と発芽に関する試験成績

原々種農場

 

試験目的
 昭和29年は冷害年であって水稲は著しく生育遅延し中晩生種では登熟不充分の品種が多かったので種籾として使用する場合の適当な選種の方法を知る為に試験を行った。

試験方法
 1. 選種の方法
  普通に唐箕選を行ったものについて次の様な比重法を行い浮上したものを供試材料とした。
   (1)水選   (2)塩水選ボーメ 1.03   (3)同  1.05   (4) 同   1.08
   (5)同  1.10   (6) 同1.10に沈下したもの。

 2. 発芽試験
   (1)普通温度区 ~ 温紙シャーレ27℃で10日間発芽勢は4日間
   (2)低温区    ~ 1.03の塩水選で沈下したものについて行った。
                畑土シャーレ18℃で7日間発芽勢は4日間

供試品種並種子
 1. 供試品種    極早生種    走糯
            早生種     農林20号、早生錦、北糯
            中生種     石狩白毛、栄光、雪糯
            晩生種     富錦、新栄
   各品種は台風の被害を受け相当の脱粒を見た。又10月6日圃場で降霜(草上気温-2.2℃)に遭遇した。
 2. 供試種子
   供試した種子は全て原々種農場生産で唐箕選後の1升重及び千粒重は次の通りである。尚有芒種は脱芒したものである。
品種名 一升重(匁) 千粒重(g) 品種名 一升重(匁) 千粒重(g) 品種名 一升重(匁) 千粒重(g)
走糯 259 北糯 240 20.0 雪糯 24.1 20.7
農林20号 268 石狩白毛 250 19.7 富錦 24.0 19.7
早生錦 270 20.8 栄光 260 19.8 新栄 20.5 16.4

試験結果
 1. 発芽試験
  (1) 普通温度区
品種名 区別 発芽
歩合(%)
発芽勢(%) 平均発芽
日数(日)
千粒
重量(g)
農林
20号
1 42.0 13.0 4.9 15.5
2 63.0 22.0 4.9 18.5
3 90.0 39.0 4.6 19.5
4 94.0 50.0 4.3 20.0
5 95.0 71.0 3.7 21.0
6 100.0 94.0 3.2 23.5
早生錦 1 49.0 19.0 4.8 14.9
2 74.0 32.0 4.7 16.4
3 81.0 44.0 4.4 18.2
4 94.0 73.0 3.7 19.2
5 92.0 75.0 3.6 20.6
6 100.0 94.0 3.0 22.7
石狩
白毛
1 47.0 28.0 4.2 16.9
2 66.0 41.0 5.3 19.4
3 72.0 55.0 4.2 20.2
4 82.0 80.0 3.2 20.6
5 94.0 85.0 3.2 21.7
6 99.0 96.0 2.9 24.1
栄光 1 34.0 14.0 5.3 14.2
2 75.0 45.0 5.2 17.8
3 97.0 64.0 3.9 18.7
4 99.0 89.0 3.8 20.4
5 93.0 86.0 3.4 22.2
6 95.0 89.0 3.8 22.5
富錦 1 69.0 47.0 4.5 15.5
2 87.0 69.0 4.0 16.0
3 94.0 81.0 3.4 17.0
4 99.0 94.0 3.0 18.5
5 99.0 95.0 2.8 19.0
6 100.0 96.0 2.4 20.0
品種名 区別 発芽
歩合(%)
発芽勢(%) 平均発芽
日数(日)
千粒
重量(g)
新栄 1 44.0 14.0 5.4 14.5
2 91.0 75.0 4.7 17.5
3 98.0 87.0 3.5 19.0
4 94.0 95.0 3.4 19.5
5 98.0 95.0 2.8 21.0
6 100.0 100.0 2.6 22.0
走糯 1 73.0 63.0 3.4 185
2 94.0 93.0 2.8 20.0
3 97.0 96.0 2.4 21.0
4 100.0 10.0 2.2 22.0
5 98.0 98.0 2.2 23.2
6 100.0 100.0 1.9 25.5
北糯 1 81.0 69.0 3.8 16.5
2 97.0 93.0 3.0 20.0
3 100.0 100.0 2.9 20.5
4 100.0 100.0 2.9 21.7
5 99.0 98.0 2.7 22.5
6 94.0 93.0 2.5 23.0
雪糯 1 77.0 59.0 3.4 19.0
2 98.0 81.0 3.4 21.5
3 98.0 94.0 3.3 22.5
4 99.0 98.0 2.9 24.0
5 100.0 100.0 3.0 24.5
6 100.0 100.0 3.0 25.0

  (2) 低温区
品種名 発芽
歩合(%)
発芽勢(%) 平均発芽
日数(日)
発芽の整否
農林20号 85 61 4.6 稍不整
早生錦 88 42 4.6 不整
石狩白毛 99 88 3.8 稍不整
栄光 99 82 4.1
富錦 95 79 3.9 稍不整
新栄 98 77 4.1 稍不整
走糯 99 94 3.8
北糯 93 61 4.2 稍不整
雪糯 100 85 4.0

 2. 沈下割合
   水選及び1.03、1.08の塩水選による沈下割合は次の通りである。

品種名 沈下割合(%)
1.03 1.08
農林20号 88.4 - 46.4
早生錦 86.0 59.3 36.6
石狩白毛 54.3 51.1 31.2
栄光 60.8 55.2 39.8
富錦 60.9 60.9 42.3
新栄 39.0 28.6 13.8
走糯 83.9 - 39.6
北糯 45.5 25.8 2.3
雪糯 44.0 17.3 3.0

結論
 各試験の発芽力を見ると普通温度では水で浮上したものは何れも発芽力は低い。特に中晩生種では著しい。比重1~1.03のもの即ち1.03で浮上したものは農林20号、早生錦、石狩白毛、栄光、富錦が低いが多は90%以上を示す。比重1.03~1.05のもの即ち1.05で浮上したものは早生錦、石狩白毛を除き何れも90%以上の発芽力を存する。比重1.05~1.08即ち1.08で浮上したものは石狩白毛を除き90%以上の発芽を示す。
 更に比重1.08以上のもの即ち1.08で沈下したものは何れも90%以上の発芽力を有する事が窺われる。従って1.08の塩水選で沈下したものを取れば90%以上の発芽力のものが得られるが、沈下割合が甚だしく少ない為種子の不足を来す品種も在る事が考えられるので此の成績から比重1.03、1.05以上のもの即ち1.03で沈下したものを種子として使用することが良いと思われる。
 此の方法によって選種した種籾は低温でも良好に発芽する事が見られる。