【指導奨励上の参考事項】

薄荷新品種の栽培上注意すべき事項

北海道農試特用作物第三研究室
道立農試北見支場

 

実際栽培上の注意すべき諸点

 慣行の連作栽培に於いては、栽植初年目の収量が少なく最高数量に達するまで多くの成圃費を要し、然も収量も少なく不安定で、雑草駆除や病害虫防除等によって生産費が極めて割高で、外国産薄荷との競合に伍して行くことは困難であった。さいわい高度耐病多収性の「万葉」「涼風」が育成されたので、新品種の特性を発揮させると共に、これ等の新品種の導入によって、慣行の連作栽培体系の欠点を是正し、本道の経営様式に適した新しい耕種肥培体系を確立するため各種の試験調査を行ったが、要約して実際栽培上の注意すべき要点を挙げると、次の通りである。

 1) 地力が減耗するから1~3年で更新すること。
  開墾当初は土地も肥沃であったが、近年は地力が瘠薄化し、連作すると減耗度が著しくなってきている。特に新品種の「万葉」「涼風」は肥料の吸収が強く大体甜菜程度であるから、栽培条件によってことなるが、1~3年で更新することが肝要である。輪作に組み入れる作物は、従来は雑草駆除と残肥利用の点から、前作は大豆、甜菜俊作は麦類、豆類とされていたが、新品種の場合には、前後作共に豆類、馬鈴薯、麦類がよく、甜菜は薄荷の前後作からは除外すべきである。

 2) 雑草駆除や安全確収を行うための条薄荷を主体とすること。
  新品種は栽植初年目より高度の反収を得られるが、栽植二年目以降は冬損に強いため、反って倒伏して収油量が少なく収穫労力もかかるから、除草労力の軽減や適度の栽植密度を保持し安全確収を行うため、反当栽植本数25000~30000本を標準として、植巾4~6本、畦巾(内径)1~12尺の作条を設置する必要がある。秋植種根量は50~70貫が適当であるが、種根が少ない場合には30貫位でも多肥栽培すればかなりの収穫を挙げることが出来る。

 3) 多肥性で地力が瘠薄化するから肥料の増施が大切である。新品種の標準肥料は地力等によって異なるが生草600~700貫(反収10斤前後)生産するものとして、窒素3貫、燐酸2.5貫、加里2貫(堆肥400貫)、硫安基肥4~5貫、硫酸加里2.5貫位が適当であるが、特に新品種の「万葉」は倒伏性が弱いから、加里の増施が望ましい。従来薬害や労力の関係で遅効性の魚粕等を施用していたが新品種の場合は、栽植2年目以降が条薄荷となり、追肥が容易となるから、7月上中旬に肥料撒布器で3~5倍の土と混和して、チリ-硝石3~4貫を施せば肥料費も少なくて済む。

4) 脳油の収量に影響が大きいから収穫は適期に行うこと。
  一般に生育の経過と共に脳油の収量が増加するが、開花期過ぎると脳分含量は高くなるが、取却油量は減少する。従って開花始から開花期に刈り取るのが適期とされているが、新品種の場合には晩生で開花が遅いから収穫期は開花始を標準とし、倒伏したり病害虫が多発し落葉が著しい際には、早めに収穫するほうがよい。又新品種は刈取時期が遅いので、乾燥が不十分となり、鬱蒸したり雨露にあたったりして、収油率が減少することが多いから乾燥には注意が必要である。