【指導奨励上の参考事項】

ビニールトンネルによる草苺の早熟栽培

種芸部

 

1. ビニールトンネルによる草苺の早熟栽培について昭和28年29年の両年に亘り、品種フェアファックス、ドルセットを用いて試験を行った。
2. トンネルは3尺巾の平床に4.5尺巾のビニールを用いて試験を行った。
  草苺は畦巾1尺、株間7.5寸で3条植にした。
3. トンネルの作り方とビニール使用時期
 (1) トンネルの作り方
  トンネルは厚さ0.1mm巾4.5尺の梨地ビニールを用い、骨組みを十番線の針金にして次の要領で行った。針金は約6尺2~3寸位に切り地上部が4尺になる様にし地中にさし込む長さは5~7寸位にした。途中に輪を作ったのは骨組みが整一に設置出来易いようにするためである。
 この針金を平床の端に沿って2尺おきにさし、その上からビニールをかけビニールの端はコマイにまき同じ針金で作った止めピンでおさえた(第2図ロ、ハ)
  第2図

 

  第2図(ハ)

 

 トンネルの長さは2.5間とした。
 尚2.5間のトンネル(1.25坪)設置に要した資材は次の通りである。
   トンネルの骨組 十番線針金   6.3尺のもの  9本  136.00円
   止めピン 十番線針金       1.5尺のもの  10本  35.00円
   ビニール端の押えコマイ       2間もの    5本  75.00円
   ビニール  4.5尺巾梨地               7ヤール  735.00円

4. ビニールトンネルの効果は大きく両年とも露地栽培より約3週間早く収穫を始めることが出来た(第1及び2表)使用期間としては4週間以上が経済的には有利のようである。

  第1表 28年度に於ける収穫状況(各畦22株 フェアファックス)
      月日
    項目
区分
6月1~5日 6月6~10日 6月11~14日 6月15~19日 6月20~24日 6月25~7月3日 総計 収穫
開始日
(月日)
個数 重量(g) 個数 重量(g) 個数 重量(g) 個数 重量(g) 個数 重量(g) 個数 重量(g) 個数 重量(g)
(1)3月31日

収穫期被覆
    6 72.0 36 292.5 48 434.0 47 296.5 95 493.0 232 1588.0 6.8
35 372.5 33 267.0 52 378.5 72 458.0 44 275.5 84 493.0 320 2244.5 6.1
西 14 179.5 30 328.5 37 329.5 62 444.0 56 381.0 84 508.0 283 2170.5 6.1
49 552.0 69 667.5 125 1000.5 182 1336.0 147 953.0 263 1494.0 835 6003.0  
(6)
普通露地
                    49 470.0 49 470.0 6.26
                    29 250.0 29 250.0 6.26
西                     36 335.0 36 335.0 6.26
                    114 1055.0 114 1055.0  
(2)4月14日
~4月25日
被覆
                4 24.0 43. 378.5 47. 32.5 6.24
                3 25.5 44 366.0 47 391.5 6.24
西                 5 37.5 47 395.0 52 432.5 6.24
                12 303.0 134 1139.5 146 1442.5  
(3)4月25日
~5月18日
被覆
            10 99.0 33 225.5 49 335.5 92 660.0 6.19
              163.0 36 287.5 48 406.0 99 856.5 6.16
西             11 134.0 42 347.0 78 481.0 131 962.0 6.19
            36 396.0 111 860.0 175 1222.5 322 2488.5  
(4)5月18日
~収穫期
被覆
            2 17.5 35 254.0 66 418.5 103 690.0 6.19
            3 17.0 16 119.0 73 486.5 92 622.5 6.19
西             2 17.5 35 232.0 76 480.0 113 729.5 6.19
            7 52.0 86 605.0 215 1385.0 308 2042.0  
(5)
秋被覆
春は普通
                4 38.5 51 520.0 55 558.5 6.21
            1 9.5 7 72.5 55 479.5 63 561.5 6.19
西                 10 90.5 60 450.5 70 541.0 6.21
              1 9.5 21 201.5 166 1450.0 188 1661.0  

  第2表 29年度に於ける収穫の状況
   イ. フェアファックス(各畦20株トンネル2ヶの平均)
    月日
   項目
区分  畦
6月
1~5日
6月
6~10日
6月
11~15日
6月
16~19日
6月
20~24日
6月
25~30日
個数 重量
(g)
個数 重量
(g)
個数 重量
(g)
個数 重量
(g)
個数 重量
(g)
個数 重量
(g)
ビニール
トンネル
栽培
5.5 53.3 32.5 293.5 60.5 342.3 65.0 262.0 49.0 183.0 17.5 58.3
10.0 97.8 83.5 724.3 84.5 411.0 108.5 369.5 75.0 246.3 25.0 86.8
西 0.5 7.5 23.0 227.5 75.5 421.0 85.0 291.0 124.0 384.8 28.5 86.5
16.0 158.6 139.0 1245.3 220.5 1174.3 258.5 922.5 248.0 814.1 71.0 231.6
露地
栽培
                    65 82.0
                    60 64.0
西                     60 84.0
                    185 230.0
    月日
   項目
区分  畦
7月
1~5日
7月
6~10日
7月
11~13日
総計 収穫
開始日
(月日)
平均
収穫日
個数 重量
(g)
個数 重量
(g)
個数 重量
(g)
個数 重量
(g)
ビニール
トンネル
栽培
            230 1192.4 6.2 6.8.8
            386.5 1935.7 6.2 6.6.1
西             336.5 1418.3 6.5 6.10.0
            953.0 4546.4    
露地
栽培
70.0 739.5 73.5 636.0 56.0 433.0 206.0 1890.5 6.25 7.1.1
66.5 785.5 87.5 905.5 64.5 528.5 234.5 2283.5 6.25 6.30.8
西 66.5 8605 95.5 779.5 39.5 250.0 207.5 1974.0 6.25 6.30.9
203.0 2385.5 2565 2321.0 160.0 1211.5 638.0 6148.0    

   ロ、ドルセット(各畦20株トンネル2ヶの平均)
    月日
   項目
区分  畦
6月
1~5日
6月
6~10日
6月
11~15日
6月
16~19日
6月
20~24日
6月
25~30日
個数 重量
(g)
個数 重量
(g)
個数 重量
(g)
個数 重量
(g)
個数 重量
(g)
個数 重量
(g)
ビニール
トンネル
栽培
    34.0 228.31 73.0 310.0 77.5 242.0 73.0 220.0 225 53.8
1.5 14.0 73.0 483.5 112.0 400.3 63.0 168.8 61.0 170.3 24.5 57.5
西     9.5 56.8 75.5 360.5 86.0 236.5 86.5 257.0 27.5 75.0
1.5 14.0 116.5 768.6 260.5 1070.8 226.5 647.3 220.5 647.3 74.5 186.3
露地
栽培
                    9.0 110.0
                    8.0 105.5
西                     8.0 97.5
                    25.0 313.0
    月日
   項目
区分  畦
7月
1~5日
7月
6~10日
7月
11~13日
総計 収穫
開始日
(月日)
平均
収穫日
個数 重量
(g)
個数 重量
(g)
個数 重量
(g)
個数 重量
(g)
ビニール
トンネル
栽培
            280.0 1054.1 6.6 6.9.8
            335.0 1294.4 6.5 6.8.4
西             285.0 985.8 6.7 6.11.8
            900.0 3334.3    
露地
栽培
59.5 667.0 74.0 695.0 38.0 211.5 180.5 1783.5 6.25 6.30.0
56.5 663.0 92.5 773.5 66.0 514.0 223.0 2056.0 6.25 6.30.0
西 59.5 653.5 76.5 708.5 43.0 343.0 187.0 1802.5 6.26 6.29.9
175.5 1983.5 243.0 2177.0 147.0 1168.5 590.5 5642.0    

5. 用いる株の年次から云えば1年生株が有利でトンネル使用には毎年株を更新した方がよい。之は次の理由に依る。
 イ. 時期別の収量を見ると1年生株は15~20日目に最高の山をなす曲線を画くが、2年生株は5~10日目に最高となり以後急に減少し、然も最初の収量は1年生株の1/5に過ぎない。
 ロ. 果実の大きさは2年生株では6日目位より急激に減少し5g以下の小粒となるが、1年生株は10日目までは10g以上ありそれ以後も7.5g以上であって大粒の揃ったものが収穫される。
 ハ. 奇形果の発生割合は2年生株に多く収穫後の選別に厄介である。

6. 果実は露地のものに比べると稍軟らかく又糖分も低くなる。
  第6表 果実の糖度及び硬さ
   Beix による指度(28年 フェアファックス)
      糖度
区分
7.0

7.5
7.6

8.0
8.1

8.5
8.6

9.0
9.1

9.5
9.6

10.0
10.1

10.5
10.6

11.0
11.1

11.5
11.6

12.0
12.1

12.5
調査個体 平均
ビニールトンネル 1 2 4 5 2 1           15 8.6
露地     1 1 3 5 1 2 1 1 1 16 10.1
      糖度
区分
±
0.5

1
+±
1.5
++
2
+++
3
++++
4
調査個体 平均
ビニールトンネル 1 6 4 5     15 1.4
露地   2 1 11 1 1 16 2.0
  硬さは觸感に依り圧の如き区分によって順位をつけた。

7. 用いる品種としては現在の処フェアファックスが良い。
8. トンネルを用いる事及びその他の支出の増加は予想される収入に対してはるかに少なく、非常に有利な栽培法と認められる。
  但し ビニールの利用方法と耐用年限に未だ若干の問題がある。