【指導奨励上の参考事項】

水田の深耕並心土耕に関する試験成績

道農試化学部

 

 本試験は昨28年度第一年目の成績により指導参考事項として決定を見たものであるが、第二年目の成績を掲げ参考に供する。
 前年度の成績と必ずしも軌を一にしない場合もあり、本年度の異常気温の影響下の成績なので平年の参考とはなし得ないが、冷気温年の成績として其の意義も少なくないと考え発表するのである。

 

1. 試験施行地
     大野村試験地     亀田郡大野村字大野
     栗沢町試験地     空知郡栗沢町南五線三号
     沼田町試験地     雨竜郡沼田町第三区
     東神楽村試験地    上川郡東神楽村十二号北一番
     風連町試験地     上川郡風連町二十五線西一号
  但し風連町試験地はイネヒメハモグリバエの被害大、且つ低温の影響を著しくうけたので成績は省略した。

2. 試験設計
 試験区別
  昭和28年春に次の如く三首の耕起方法を行い夫々につき三種の施肥区を設け試験したが本年は各区とも馬耕による普通耕を行った。
     1区   標準肥料普通耕
     2区     〃   心土耕
     3区     〃   深耕
     4区     〃   窒素三割減 普通耕
     5区     〃     〃     心土耕
     6区     〃     〃     深耕
     7区     〃   窒素三割増 普通耕
     8区   標準肥料窒素三割増 心土耕
     9区     〃           深耕
  備考
   1) 前年の耕起は次の如くであった。
     普通耕は畜力により3寸乃至4寸に耕起、心土耕及び深耕はトラクターにより6寸5分乃至7寸に耕起を目標とした。(実際に於いては
     心土耕区もトラクター耕のため、心土の上広に混入が免れなかった。
   2) 窒素3割減及び3割増は夫々硫安の施用量のみ標準肥料に比し増減あり他は同量とした。

3. 試験成績
 (1) 大野村試験地
  イ、供試品種     南栄
  ロ、耕種法       冷床苗、移植6月1日
               栽植密度  10寸×6.5寸2本植
  ハ、耕深        全区馬耕により4寸
  ニ、施肥量       標準肥料区は次の通り(反当貫)
                硫安  4.0、過石  8.0
                硫加  2.5、堆肥  220貫
  ホ、生育調査成績
区別 穂孕期 出穂期
(月日)
成熟期
草丈(cm) 茎数(本) 草丈(cm) 穂長(cm) 穂数(cm)
標準肥 普通耕 64.5 20.5 8.26 91.7 15.1 17.6
心土耕 68.0 22.6 107.2 15.6 21.1
深耕 66.3 22.3 108.3 17.2 21.0
窒素三割減 普通耕 62.8 18.0 8.23 90.9 14.9 18.0
心土耕 65.7 21.5 105.2 15.2 20.9
深耕 65.0 21.8 99.5 17.2 19.6
窒素三割増 普通耕 61.4 20.5 96.4 16.5 19.2
心土耕 66.9 20.8 8.26 104.5 16.9 22.5
深耕 66.1 24.0 108.8 18.0 19.6

  ヘ、収量調査成績
区別 昭和29年反当
収量(貫)
籾収量
指数
籾1升
重量
昭和28
年度籾
反当収量
(貫)
収量
指数
総重 籾重 藁重
標準肥 普通耕 - 83.0 - 100 240 100.2 100
心土耕 - 109.0 - 121 250 117.0 117
深耕 - 102.0 - 108 246 125.4 125
窒素三割減 普通耕 - 82.0 - 100 245 88.0 100
心土耕 - 100.2 - 122 242 114.0 130
深耕 - 89.8 - 109 234 108.0 123
窒素三割増 普通耕 - 86.6 - 100 248 110.4 100
心土耕 - 108.8 - 125 240 125.4 114
深耕 - 100.5 - 116 230 130.2 118
  註: 窒素三割増の心土耕、深耕区は倒伏した。

 (2) 栗沢町試験地
  イ、供試品種     栄光
  ロ、耕種法       冷床苗
               栽植密度 8寸×7.5寸 一株3本植
  ハ、耕深        各区馬耕により3.5寸
  ニ、施肥量       標準肥料区は次の通り(反当貫)
                硫安  6.0、過石  7.0
                硫加  3.0
  ホ、生育調査成績
区別 最高分げつ期 8月20日
草丈(cm)
開花期
(月日)
草丈(cm) 茎数(本)
標準肥 普通耕 39.7 27.5 64.0 8.28
心土耕 43.3 31.2 67.7 8.28
深耕 45.8 31.7 71.7 8.29
窒素三割減 普通耕 39.7 28.0 61.2 8.27
心土耕 40.7 31.1 64.7 8.27
深耕 41.6 32.6 65.9 8.27
窒素三割増 普通耕 44.5 30.8 69.5 8.29
心土耕 45.7 38.7 71.3 8.29
深耕 45.5 33.7 70.9 8.29

 ヘ、収量調査成績
区別 昭和29年反当
収量(貫)
籾収量
指数
昭和28年度
総重 籾重 藁重 籾反当
収量(貫)
収量
指数
標準肥 普通耕 231.0 94.5 121.5 100 105.8 100
心土耕 255.0 99.0 127.5 106 134.5 127
深耕 252.0 96.0 138.0 102 133.9 127
窒素三割減 普通耕 199.5 75.0 99.0 100 112.3 100
心土耕 214.5 82.5 109.5 111 135.5 121
深耕 250.5 94.5 141.0 124 134.5 120
窒素三割増 普通耕 270.0 87.0 166.5 100 - -
心土耕 307.5 97.5 187.5 112 - -
深耕 280.5 96.0 160.5 110 - -

 (3) 沼田町試験地
  イ、供試品種     農林34号
  ロ、耕種法       冷床苗  移植6月3日
               栽植密度 10寸×6寸 2本植
  ハ、耕深        各区馬耕により3寸
  ニ、施肥量       標準肥料区は次の通り(反当貫)
                堆肥  250
                硫安  6.0、過石  8.0
                硫加  3.0
  ホ、生育調査成績
区別 幼穂形成期 止葉期 出穂期
(月日)
成熟期
(月日)
成熟期
草丈(cm) 茎数(本) 草丈(cm) 茎数(本) 草丈(cm) 穂長(cm) 穂数(cm)
標準肥 普通耕 35.3 12.7 74.4 24.3 8.17 10.11 81.0 15.9 25.4
心土耕 36.1 11.9 67.9 19.7 10.12 74.6 15.1 20.1
深耕 35.1 10.7 67.4 21.5 10.11 78.1 15.3 22.6
窒素三割減 普通耕 43.8 13.1 79.5 22.4 82.4 16.1 23.8
心土耕 39.3 9.1 70.7 18.6 75.7 15.3 20.1
深耕 42.0 14.0 73.4 18.9 78.7 15.3 18.9
窒素三割増 普通耕 35.5 9.9 69.9 22.0 76.2 14.9 20.1
心土耕 37.1 11.7 61.3 20.8 10.12 77.1 15.3 21.2
深耕 35.6 13.1 65.3 20.5 74.2 14.4 21.8

  ヘ、収量調査成績
区別 昭和29年反当
収量(貫)
籾収量
指数
昭和28年度収量
総重 籾重 藁重 籾反収(貫) 指数
標準肥 普通耕 - 110.0 105.0 100 123.0 100
心土耕 - 90.0 94.5 81 123.6 100
深耕 - 94.5 100.5 85 130.2 106
窒素三割減 普通耕 - 100.5 117.0 100 114.0 10
心土耕 - 75.0 100.5 75 108.0 95
深耕 - 73.5 93.0 73 114.0 100
窒素三割増 普通耕 - 109.5 121.5 100 127.8 注-
心土耕 - 87.0 88.5 79 143.1 -
深耕 - 108.0 100.5 92 140.4 -
  注 雀害の為収量指数計算せず。

 (4) 東神楽村試験地
  イ、供試品種     栄光
  ロ、耕種法       冷床苗  移植5月30日
               栽植密度 10寸×5寸 一株3本植
  ハ、耕深        各区馬耕により 寸
  ニ、施肥量       標準肥料区は次の通り(反当貫)
                堆肥  200
                硫安  7.0、過石  8.0
                硫加  3.0
  ホ、生育調査成績
区別 幼穂形成期 出穂期
(月日)
出穂期 成熟期
草丈(cm) 草丈(cm) 茎数 草丈(cm) 穂長(cm) 穂数(本)
標準肥 普通耕 52.4 8.22 77.2 19.9 72.7 15.8 19.5
心土耕 53.8 80.1 18.2 74.1 15.4 19.1
深耕 53.4 78.7 17.9 71.6 15.6 18.9
窒素三割減 普通耕 55.9 811 19.5 76.3 15.7 19.0
心土耕 55.7 81.6 18.5 76.8 15.9 17.4
深耕 54.1 76.9 190 76.1 14.9 16.9
窒素三割増 普通耕 55.9 81.8 21.0 75.0 15.8 20.6
心土耕 56.5 82.2 19.3 80.4 15.6 19.9
深耕 56.0 87.9 19.0 79.0 15.2 20.1
  成熟期に関する調査記録を欠くが、担当者より聴取によれば殆ど各区差はなかった。

  ヘ、収量調査成績
区別 昭和29年度反当
収量(貫)
籾収量
指数
籾千粒重
(g)
昭和28年収量
総重 籾重 藁重 籾反収(貫) 指数
標準肥 普通耕 240.0 129.0 96 100 21.0 146.7 10
心土耕 271.2 145.2 111.6 113 21.3 171.5 117
深耕 276.0 136.8 114.6 106 20.6 165.2 113
窒素三割減 普通耕 258.0 138.6 103.2 100 21.4 100.1 100
心土耕 255.0 136.8 102.0 99 22.0 152.7 159
深耕 228.0 113.4 94.8 82 21.1 135.3 135
窒素三割増 普通耕 271.8 138.0 118.2 100 20.3 142.8 100
心土耕 297.0 148.8 122.4 108 22.7 150.0 105
深耕 300.0 151.8 129.0 110 21.2 164.4 115

4. 総評
 以上の成績を綜合して考察すれば上記試験地に於ける水田のトラクターによる心土耕並に深耕の効果は沼田町試験地以外は初年目に於いて顕著であり本年度に於ける各区普通耕を行った場合に於いても沼田町試験地を除けば増収率はあまり高くなかったが、低温の年であったに係らず効果の持続することを確認し得た。但し排水不良地では注意を要する。
 沼田町試験地については尚研究を要するものがある。