【指導奨励上の参考事項】

トレンチサイロ利用による草サイレージ製造指導要領

農試畜産部

 

1. トレンチサイロの設置場所
 トレンチ又はピットサイロ(素堀り角型又は丸型サイロ)を設置する場所は地下水位の低い、高燥地を選定し、排水の便良く、且つ埋草作業の容易なる場所であることが望ましい。特に春先の融雪期においても、サイロ下部に地下水が浸透することのない様、場所の選定に注意を要する。トレンチの深さは、地下水位の程度によって決め、土質も砂土、礫土、火山灰土などは側壁がくづれ易いので特別の考慮が必要である。

2. サイロの型及び大きさ

(A)トレンチ型(素堀り角型)

(B)ピット型(素堀り丸型)

 深さはトレンチにおいては上巾程度が望ましい。ピットについても直径と同じか、或いはそれ以上の深さを持つのが、サイレージの損失を少なくする。一般に良好な状態で埋草された場合は、1立方尺当たり9~11kg埋草され、出来上がりサイレージが12~15kg程度であるからサイレージの全必要量より決定すべきである。
 最近道内各地で利用されている一般的な型は
     トレンチ型 : 上巾5~6尺、下巾4~5尺、長さ8~15尺で容量2.5~10屯位のものが多い。
     ピット型 : 直径5~6尺  深さ5~8尺で容量1.8~2.5屯位のものが多い。
 又トレンチサイロの側面の傾斜は、深さが5尺ある場合は、上巾より下巾が0.7~1尺程度狭めて作るほうが、サイレージの沈下と共に空間が出来ずに理想的である。土質によっては更に上巾を広くし傾斜を緩めるほうが、側面の崩壊を防ぐ場合もある。

 

3. サイロの構築

(A)

(B)

(C)

(D)

(E)

(F)

(G)

サイロの設置場所は、前項1に準ずるが、今一般に使用されているのは(A)であり、素堀りで埋草後は充分加圧の上、土盛りの加重をする。この場合、雨水の浸入或いは融雪水又は地下水などの浸透する虞れがある。
 (B)の如く排水路を作り雨水の浸入防止施設することにより、上記の危険を避けることが出来る。
 但し、(A)(B)何れも素堀りであるので、冬期間凍結による側面の崩壊により、毎年サイロ内面の改修が必要で、サイレージの取りだしにも若干の困難を伴う。
 (C)の如く、板、ブロックなどを使用し、上に屋根を用うれば、耐久性のサイロが出来る。
 更に地下水位の高いところでは、(D)又は(E)も考慮する必要がある。
 素堀りの場合の浸透水による損失を防ぐために(F)の如く内壁面に各々組立式板張りを容易するのも効果がある。
 ピット型の場合は(G)の如くに埋草後は押蓋を敷きその上に重石で加圧する。半永久的には、大型井戸桶を地下に埋めて、サイロにあてると便利である。
 

4. 埋草原料
 塔型サイロの場合と同じく牧草、野草、根菜その他の自給飼料用の作物各種が利用出来る。原料の埋草時期としては
     デントコーン : 乳黄熟期
     荳科牧草  : 開花期
     禾本科牧草 : 開花直前(出穂完期)
     野草類  : 主体野草の開花又は出穂期
のものが適当している。原料水分としては65~75%のものが良い。即ち、原料の刈取時は高水分にあるので、3~5時間の予乾の後水分の調整されたものを切込み埋草するのが望ましい。
 

5. 添加物
 塔型サイロ利用によるサイレージの調製の場合(前年度発表)に準ずる。

6. 細切り及び加圧
 トレンチサイロの場合は、塔型サイロにおける場合よりも、加圧による沈下その他の面で、空気の搬出が困難であるから、この点細切中においても踏付けを行い、埋草後も充分なる加圧処置が必要である。
 (例)切込みを開始したなら、サイロの底部1~1.5尺程度埋草ごとに均等に均しながら踏付を行い、切込終了後も10~20分丁寧に充分なる踏付、加圧を行う。細切りの程度は、水分の不
   足の場合は1寸程度の長さに細切する。1日作業で、埋草が終了しない時は、降雨を予想される場合は覆いを怠らないようにする。

7. 埋草順序
 原料草の刈取。牧草類が刈取適期であれば午前中に刈取。3~4時間陽風にあてて予乾する。運搬。細切しながら添加物。踏付。加圧。管理。図の如く適当な厚さごとに切り込みと踏付を繰り返し、最上部の場合には、サイロの高さより1~1.5尺盛上げ、充分に踏付する。それが終了すれば上表面を農業用ビニールで覆い更に乾草、麦稈又は莚の如きものを敷き、その上に1尺以上盛土をする。ビニールを使用しない時は乾草または筵で覆ってもよいがこの場合は幾分上部が腐敗する。場合によっては盛土を直ちに行わず、埋草後3日間位を毎日踏付けし、落付かせた上に充分盛土するのも一方法である。盛土には、サイロを掘った時の土を利用する。盛り土による加圧不充分な場合は別途土嚢を用意する。更にサイロ周辺を傾斜の方向に排水路を作り、屋根又は被覆物を配すれば、雨水の浸入を防ぐことが出来る。

8. 取出し
 サイレージは約30日で完全なものに出来上がる。取出しの場合は下図の如く垂直に必要量だけ毎日取出す。冬期間凍結の虞れある場合は取出口に覆いをして防ぐ。

 取出しに際しても側面の土砂とサイレージの混合を防ぐよう注意を要する。