【普及奨励事項】

ケネベツク栽培上注意すべき点及び疫病菌新系統発生に関する調査成績

病理昆虫部 作物部

 

 ケネベツクは疫病抵抗性品種として普及され、特に疫病多発地帯に適した品種として本道東部、及び北部に栽培され相当の収量を上げて来たが近年に到り、この品種が疫病に罹病するようになり、これが本品種を侵かす疫病菌系統の発生によることが明らかとなった。この事実はケネベツク栽培上大きな問題であるのみならず今後育成される抵抗性種間雑種栽培に当たっても過痕を残すこととなる。よって今後この品種栽培に当たっては、新病原菌系統の発生を抑えるため注意する点として下記事項が考えられる。

 1. 種薯は無発病地のものを用いること。
 2. 薬剤撒布は必ず励行すること。
 3. 万一発病を見た場合には速やかに抜き取りを行って、蔓延を防止すること。
 4. 土寄せを充分に行って罹病薯の発病を防ぐこと。
 5. 収穫後は堀り残し等を出さぬようにし 罹病薯は早急に処分し圃場を清潔に保つこと。

 尚、出来るならば栽培品種から隔離して栽培すると共に多発地帯ではこの品種の栽培を一時見合わせた方がよいと考える。

調査結果
 1. 新疫病菌系統の発生 : 昭和29、30両年に亘る試験調査の結果、第1表に示すように道内各地に於いても、ケネベツクを侵かす系統が発生している。

 第1表 ケネベツクを侵かす疫病菌系統(1)の発生 
菌株番号 分離寄生植物 場所 時期
H3 ケネベツク 菅平 1954年9月
H7 琴似   〃 9月
H15 嬬恋   〃 秋(塊茎)
D7 根室 1955年9月10日
D13   〃 8月17日
D26 北海10号   〃 8月27日 
D21 ケネベツク 十勝   〃 8月24日
D36 4710-113 島松   〃 9月14日
D38 島系344号   〃 9月14日
D44 北海10号 琴似   〃 9月21日
D41 北見   〃 9月14日
D14 菅平   〃 8月14日
D31   〃 8月24日
D28 ケネベツク   〃 8月24日
  ※ 1は世界命名規約による型

 2. ケネベツクの罹病状況 : ケネベツクの罹病状況を調査したがケネベツク栽培町村の中回答のあった58ヶ町村中、発生のないのは14ヶ所にすぎず、18ヶ所は発生が多く被害も大で
  あった。その分布は第1図に示す通りである。

考察
 以上の結果に示されたようにこの品種の罹病は新病原菌系統の発生によることが明らかであり、その発生は広汎且つ減収(2割内外)を表している。
 新系統は先ず栽培品種に発生した普通菌系統から突然変異によって生ずるものと考えられ、又一旦発生した場合には、その罹病塊茎で越冬することは疑いない。よってこの新系統の発生を防止するために採種栽培に於ける管理及び薬剤撒布の励行を必要とする。