【普及奨励事項】

作物の種類と土壌侵蝕防止効果試験

土壌保全研究室

 

1. 設計及び試験方法の概要
 (1) 試験区     20~23℃、NW、1区 20㎡、1区制
 (2) 区の構成    (第1表)
 (3) 供試品種及耕種梗概    (第2表) 等高線栽培、30年のみ培土を行わなかった。
 (4) 調査事項    流去水量、流亡土壌量、作物の生育及び収量、降雨の性質

  第1表 試験区の構成
   年次
区分
27 28 29 30
馬鈴薯 ライ麦 玉蜀黍  大豆
玉蜀黍 大豆 蕪菁  馬鈴薯
ライ麦 馬鈴薯 大豆  燕麦
牧草 牧草 牧草  玉蜀黍
甜菜 玉蜀黍 燕麦
(クローバー)
赤クローバー
大豆 蕪菁 燕麦
(クローバー)
赤クローバー

  第2表 供試品種及耕種梗概
作物 品種 1/10ha 当施肥量(kg)  畦巾
(cm)
株間
(cm)
基肥 追肥
堆肥 N P K N
馬鈴薯 男爵 2000 5635 6762 6762   75 30
玉蜀黍 坂下 1500 3757 6010 3005   90 45
ライ麦 ペトクーザ 1600 3005 6010 1875 1875 45 -
牧草 赤クローバー
チモシー
オーチャード
1600 3005 3750 2628 3005 - -
甜菜 本育192 2000 7513 7513 6762   55 22.5
大豆 大谷地2号 600   5635 1878   50 25
燕麦 前進 1200 3757 5635 1878   50   
蕪菁 紫雲英 2000 7513 7513 6762   55 22.5

2. 試験成果の概要
 (1) 降雨の性質による影響
  第3表 降雨の強度別、雨量別分布と流亡、降雨頻度(昭和27~30年)
     10分間
     最大雨量
1雨
雨量
1mm
以下
1~2 2~3 3~4 4~6 6~8 8~10 頻度率
(%)
10mm以下 139 35 8(1) 3(2) 1     186(3) 16.1
10~20 14 18 8(2) 4(3) 6(5) 2(2) 1(1) 53(13) 24.5
20~40 4 14 8 1 3(3)   2(2) 32(5) 15.6
40~60   1 1(1) 2(1) 1(1)     5(3) 60.0
60~80       1(1)       1(1) 100.0
157(0) 68(0) 25(4) 11(7) 2(9) 2(2) 3(3) 277(25)  
頻度率(%) 0 0 16.0 63.6 81.8 100.0 100.0   9.0
 括弧内数字は流亡降雨回数を示す。

  第4表 本試験区における流亡降雨頻度(昭和27年~30年)
                                一等高線栽培
     10分間
     最大雨量
1mm
以下
1~2 2~3 3~4 4~6 6~8 8~10   計 
流亡降雨回数(A) 0 0 1 2 1 2 3 9
   同    (B)           1 2 3
 註. (B)は1/10ha当100kg程度以上の流亡土壌を認めた場合の回数

  第5表 本試験区に於ける流亡降雨の性質
月日 1雨雨量
   mm
10分間
最大雨量mm
5分間
最大雨量mm
27 5.28~29* 19.4 8.0 6.0
27 9.24~26 61.6 3.6 2.4
28 9.25~26 55.3 3.0 2.0
28 10.7~8 44.4 2.6 2.0
29 9.11 15.4 6.0 4.0
30 6.22 47.6 4.6 3.0
30 8.1* 17.8 6.5 5.5
30 8.18 22.2 8.3 4.5
30 8.20* 38.6 8.5 7.5
 *は1/10ha当100kg程度以上の流亡土壌を認めた降雨

 第3表は計60余区の各種流亡試験区の4年間の成績から裸地区及び上下耕区の流亡降雨の頻度を降雨の強度別及雨量(1雨の)別に示したものであり、第4表は作物を等高線に栽培した本試験区の流亡降雨の頻度を示し、第5表は第4表の結果を降雨の性質で示したものである。

 (2) 作物の種類による影響
  第6表 各区年次別の侵蝕量
  年次
 種別
27 28 29 30
土壌(kg) 水(mm) 土壌(kg) 水(mm) 土壌(kg) 水(mm) 土壌(kg) 水(mm)
1840 10.48 - 2.23 - 2.2 1872.9 6.26
1245 11.76 - 7.74 - 4.2 524.5 3.34
1564 8.33 - 3.89 12.2 5.5 225.0 2.99
- 2.95 - 1.68 - 2.6 453.4 3.82
1605 6.12 3.5 4.30 - 2.8 - -
1555 14.95 38 3.94 - 3.2 - -
 流亡土壌量は1/10ha当

 (3) ライ麦の土壌流亡量は疑問の点があるからこの数字は保留とする。
  第7表 昭和27年5月28日~29日の侵蝕状況
流亡量 地面の状態
土壌(kg) 水(mm) SWg/l 播種月日 播種後日数
1815 4.29 433 5.9 18
1245 4.07 306 5.24 3
1555 3.66 425 - -
- 0.37 - - -
1605 3.75 428 5.9 18
1555 不明   5.24 3
 流亡量は1/10ha当 ライ麦の土壌流亡量は保留とする。

  第8表 昭和30年8月1日の侵蝕状況
作物 流亡量 SWg/l 被覆度(%)
土壌(kg) 水(mm)
大豆 795 2.41 330 50
馬鈴薯 38 0.88 48 55
燕麦 - - - 75
玉蜀黍 169 1.18 143 40
クローバー - - - 50
クローバー - - - 50

  第9表 昭和30年8月20日の侵蝕状況
作物 流亡量 SWg/l 被覆度(%)
土壌(kg) 水(mm)
大豆 827 2.64 312 60
馬鈴薯 424 2.16 196 45
燕麦 225 2.24 100 15(+5)
玉蜀黍 271 2.47 110 50(+10)
クローバー - - - 70
クローバー - - - 70
 (+ )は雑草

 第6表は4年間の流亡量について年次別に示したものであるが、28.29年は殆ど土壌流亡が無かった。27年の土壌流亡は5月28~29日、30年の大部分は8月1日と8月20日に生じたものである。そのときの流亡量と地表状態を夫々第7、第8、第9表に示す。
 この結果から本道における春季と夏季の土壌侵食の特徴を等高線栽培における畦立或は培土の土壌保全的意義を推知できる。
 以上4年間の成績から次の如き結論が得られる。
 (Ⅰ) 4年間の流亡試験結果を降雨の性質との関連で考察し、喜茂別土壌の限界降雨強度を概ね10分間3ミリの雨量と規定できる。
 (Ⅱ) 1/10ha当10.0K(乾土)程度以上の流亡土壌を示したのは4年間で3回のみであり、そのいずれもが各作物とも培土を行わなかった時であり、等高線栽培における畦立或いは培土の
   侵食防止効果の大きいことが認められる。
 (Ⅲ)  顕著な流亡量を示した3回の降雨につき、その性質を検討したが、流亡土壌量は10分間最大雨量より5分間最大雨量の影響が強いことを認めた。
 (Ⅳ) 作物の種類の影響は春季においては永年牧草以外の作物(玉蜀黍、甜菜、大豆)はともに侵蝕防止効果が少なく、夏季においては牧草(赤クローバー)の効果の著しいことはいつ
   までもないが、燕麦も収穫跡地といえどもその刈り株による侵蝕防止効果が大きく、大豆の侵蝕防止効果が著しく弱いものであることが認められた。馬鈴薯、玉蜀黍は被覆土の消長
   による影響がみられるが、その侵蝕防止効果は概ね燕麦と大豆の中間に位した。