【普及奨励事項】
ビート茎葉の飼料的利用試験成績

根室支場

 

目的
 甜菜は寒地農業経営上重要な作物であると共に酪農と結びついて飼料上有効な資源であるが、これが利用上の指導に欠けたうらみがあるので、貯蔵法給与法栄養生理に及ぼす影響等を調査し、耕作農家への指導の指針たらしめる為である。

1. ビートの茎葉サイレージの調整試験
 A) 試験方法
   ビート茎葉単味サイレージと添加物サイレージの比較、単味の場合の細切とビニール使用の影響添加物としての多汁飼料、無機物粗飼料、濃厚飼料の影響を各種のサイロ(トレン
  チ土中ピットサイロ、コンクリートサイロ、木枠サイロ)で調整したものをその有機酸組成色調香気などより品質を鑑定し優劣を比較した。尚一般組成についても分析した。
  各種のサイレージの調製法は次の通りである。

  1) 単味のサイレージの場合の細切ビニール使用の影響
   ⅰ) ビート茎葉単味(トレンチ)
     深さ3尺、巾4尺、長さ上6尺、下5尺のトレンチサイロ詰込はビート茎葉そのままを11月21日で、取出は4月1日、その時5寸低下していた。尚底部側部に麦稈3寸並べたが水分多く
     良質でなかった。
   ⅱ) ビート茎葉単味
     深さ2尺、巾3尺、長さ5尺の火山灰土トレンチサイロに11月4日ビート茎葉そのまま詰込み1月25日堀出したトレンチの土壌接触部の処置を講ぜざる為空気の導入量多く不良水分
     多量であった。
   ⅲ) ビート茎葉単味
     径6尺 深さ10尺の土中ピットサイロにビート茎葉そのままを11月10日詰込み、12月25日に取出したところ黄緑褐色醋酸臭強く水分過多であった。
   ⅳ) ビート茎葉単味
     径4尺 深さ5尺の土中ピットサイロに薄ビニールを円筒にし、その中へカッターで細切したビート茎葉を詰込み10月23日、取出し1月27日、高さは1.5尺下るが芳香あり品質良好で
     あった。

  2) 添加物としての多汁飼料の影響
   ⅴ) ビート茎葉に生澱粉粕20%をくわえたもの
     深さ8尺、径8尺の地下素堀ピットサイロ、詰込はビート茎葉そのままを11月18日で4月10日取出した。その時の高さは5尺になり水分多く大部分水に浸っていた。
     詰込法は横底部に麦稈をしきビート茎葉5寸、麦稈1寸澱粉粕1寸の順序で堆積した。
   ⅵ) ビート茎葉に生ビートパルプ20%を加えたもの
     深さ3尺、巾4尺、長さ底11尺、上12尺のトレンチサイロ、詰込はビート茎葉そのままを11月19日、取出は3月26日で高さ地表より6寸下る。
     麦稈底及び側部に並べビート茎葉5寸、その上にビートパルプ1寸の順序で順次詰込んだ。水分多い。

  3) 添加物としての無機物の影響
   ⅶ) ビート茎葉に過燐酸石灰2%を加えたもの
     深さ3尺、巾4尺、長さ6尺のトレンチサイロ、詰込は、ビート茎葉そのままを11月23日にビート茎葉5寸毎に過燐酸石灰をばらまき全部で1俵使用、底及び側部に麦稈を並べる。
     取出は3月26日 1尺下る。 過燐酸石灰接触部は葉が黄変している。
   ⅷ) ビート茎葉に炭酸石灰 0.5%を加えたもの
     深さ2尺、巾3尺、長さ5尺のトレンチサイロ、詰込は11月4日でビート茎葉そのままに過燐酸石灰を撒播する。1月25日取出したが殆ど葉部腐敗し、黒褐色にとけて不良であった。

  4) 添加物としての乾燥粗飼料の影響
   ⅸ) ビート茎葉に麦稈を挿入したもの
     トレンチサイロ、詰込及び取出期日は上と々、ビート5寸に麦稈2寸挿入堆積する。麦稈部から殆どカビが生え最も不良であった。
   ⅹ) ビート茎葉細切に燕麦稈細切10%を加えたもの
     コンクリートサイロにデントコーンを切込み、その上にビート茎葉の細切に燕麦稈の細切10%を混ぜたものを11月6日切込んだ。取出し12月10日、芳香性甘酸臭あり品質良好なり。
   ⅹⅰ) 細切ビート茎葉に細切乾牧草10%を加えたもの
     径4尺、深さ5尺のピットサイロに薄ビニールを円筒にし、その中へカッターで細切したビート茎葉に細切乾燥を10%の割に混合して詰めこみビニール上部をしぼって結束した。
     詰込10月31日、取出し1月27日、品質は良好であった。
   ⅹⅱ) 細切ビート茎葉に細切デントコーン稈25%(3:1)
      同上のピットサイロにビニール使用、詰込及び取出期日は同上、ビート茎葉及びデントコーン稈共細切3:1の割に混合詰込んだ。品質良好であった。

  5) 添加物としての濃厚飼料の影響
   ⅹⅲ) ビート茎葉に麦糠10%を加えたもの
     深さ12尺、径9尺の木製地下サイロ、詰込みは11月24日で3月24日に取り出したが、その時8.5尺になっていた。詰込み法は底部に麦稈をしき、下から10尺までビート茎葉7寸、麦
     糠5分(各1俵)を繰り返し、その上部にビート茎葉5寸、麦糠5分(各1俵)の順に詰込んだ。
   ⅹⅳ) ビート茎葉に廃糖蜜1%を加えたもの
     深さ2尺、巾3尺、高さ5尺のトレンチサイロ、詰込みは11月4日、ビート茎葉を堆積した上にふりかけ、順次詰込んだ。取出しは1月25日、品質良好であった。

 B) 考察
   サイレージの製法に当たり原料の種類、時期、水分含量、醗酵性成分、蛋白質含量の他に細切、加圧、サイロの種類等が製品の良否に影響するものであるが、デントコーンと異なり
  草類、青刈作物、ビート茎葉類は単一調整が困難なため糖蜜穀類添加、予乾、加酸法等が実施されている。
  従って当場ではビート茎葉サイレージの調製法として各種添加物の品質に及ぼす影響及びサイロの種類による影響等を各種調整サイレージを比較検討した。
   1) 単味サイレージの場合の細切、ビニール使用などの影響
    先ず単味サイレージの比較では細切せずに詰め込んだ場合トレンチサイロⅰ)で底及び側部に麦稈を並べたが火山灰の為空隙量多く醋酸、酪酸の生成多く 28:66:6であった。
    次のトレンチサイロⅱ)も同様火山灰でこれは土中直接であったが46:38:16であり、大型土中ピットサイロⅲ)では51:39:10でトレンチサイロに比較して稍良質であった。
    最後にこれらを勘案して土中ピットサイロにビニールを円筒形に作りその中に細切して詰込んだⅳ)は55:45で酪酸がなく良質のサイレージができ家畜の嗜好性も良かった。
    この様に細切したもの及び土中直接ビニールで空気を遮断した場合が良質なサイレージを作り得ることが分かったが、次に添加物の影響を調査した。

   2) 添加物としての多汁飼料の影響
    次に添加物として水分の多い生澱粉粕ⅴ)や生ビートパルプⅵ)では共に水分が多くなり栄養損失多く、又、澱粉粕の方では酸生成少なく生葉臭をおびていたビートパルプ添加では
    酸生成量は多いが乳酸発酵が少なく共に良質のものは出来なかった、サイロはピットとトレンチであったが差がなかった。

   3) 添加物としての無機物の影響
    次に蓚酸中和等の考えで過石ⅶ)炭酸石ⅷ)等の無機物を添加したが、炭酸石灰は多量の為か化学反応激しく葉肉を腐敗せしめ酸生成が不良で製品の質、歩留など頗る悪く実
    用的価値はない。過燐酸石灰は酸性の為化学反応は少ないが黄褐色となり、土中混入の状を呈し肉眼的には不良であるが、酸生成量は良好で今後検討の余地のあるものである
    が嗜好性が稍劣る。

   4) 添加物としての乾燥粗飼料の影響
    次の水分調節を考慮して麦稈挿入、麦稈細切混入、牧草細切混入、デントコーン稈細切混入を比較したが麦稈挿入法はビート茎葉も細切しない為麦稈部と共に空気量多く黴の発
    生が多く黴臭がして全く不良であった。トレンチサイロであるが空気排除不良によるものであろう。
    次に燕麦稈と共に細切してコンクリートサイロに詰込んだ場合は品質良好で香気も良かったが、麦稈の嗜好性なく、ビート茎葉のみ選択して食べ、麦稈の残量が多かった。従って
    飼料価値の乏しい燕麦稈でなく乾牧草又は玉蜀黍稈ではどうかと考えて作ったのがⅹ)ⅹⅰ)で、これは土中ピットサイロにビニールを使用し細切切り込みの場合は共に良好な酸
    生成で嗜好性もあるが、固い乾草は馴れないと嗜好性に劣る。しかしなれると全く変わらず食べつくす。但し時間は長くかかるようである。

   5) 添加物としての穀類、糖蜜の影響
    次に穀類の中安価な麦糠や糖蜜を添加した場合を検討するとサイロがトレンチでビニールを使用しないでⅹ)ⅹⅰ)に比較すれば品質不良であるが同条件で製造したⅰ)ⅱ)ⅴ)
    ⅵ)ⅷ)ⅸ)等と比較すると共に良好で乳酸量が多く家畜の嗜好性も大である。
    従ってビート茎葉の調製法も草サイレージの調製法と同様に何れの型のサイロに拘わらず火山灰地では空気の排除が特に大切で、その為にはビニールの使用、原料の細切、重
    圧などである。
    添加物では糖蜜麦糠などが栄養成分を増加せしめ水分を調節し良質醗酵に蓋し良好である。経済的に調整する場合乾牧草、デントコーン稈等は水分を調節して液汁を漏出せしめ
    ず栄養分を保持せしめて利用価値があるが、混合時には容量を増して空隙量を多くするので必ず細切して詰込まねばならない。
    尚、添加率は麦糠5~10%廃糖蜜1~2%乾牧草5~10%、デントコーン稈(水分45%程度黴の発生しないもの)15~20% 過燐酸石灰1~1.5%程度であろう。

2. ビート茎葉サイレージによる飼養試験
 A) 試験方法
  1) 供試牛参考事項
供試牛 生年月日 産次 分娩年月日 種付月日 試験前乳量(kg) 試験前体重(kg)
第3フラワー 昭和26.1.27 3 30.12.10 - 26310 540
第5フラワー 27.5.5 2 30.8.1 - 9070 496
ベッシー 2.5.21 3 30.11.13 - 14290 523
ウオーカー 23.1010 4 30.2.28 - 6800 536
クレン 24.10.10 5 31.1.7 - 23800 654
春光 26.2.10 3 30.10.22 - 15420 536

   2) 試験期間並びに方法
    昭和31年2月1日より2月27日に至る27日間を3期に分かち、予備期2日、本試験期7日とし第1・3期を対象期、第2期を試験期とした。
    各期の前後2回体重測定並びに脂肪検定を行い、ビート茎葉サイレージの調整別による嗜好性を観察した。
   3) 飼料の給与法
    試験期間中飼料は同量給与し試験期は対象期におけるデントコーンサイレージとビート茎葉サイレージとを同量置換した。
    ⅰ)飼料給与表
区分    飼料
牛名
サイレージ
(kg)
ルタバガ
(kg)
乾草
(kg)
大豆粕
(kg)
燕麦
(kg)
ふすま
(kg)
米糠
(kg)
dcp
(kg)
TDN
(kg)
 
ビート茎葉
 
第3フラワー 40   5 0.462 3.489 1.511 3.004 1.379 11.607
ベッシー 25 15 5 0.366 0.92 1.339 1.128 0.938 8.497
ビート茎葉
+
デントコーンサイレージ
クレン 40   6 0.431 4.152 0.807 4.410 1.507 12.940
第5フラワー 25 15 5 0.349 0.787 1.145 0.964 4.650 6.379
ビート茎葉
+
乾草サイレージ
春光 40   5 0.217 1.555 0.787 1.102 0.899 8.279
ウオーカー 25 15 5 0.4       0.653 6.142
 註 サイレージとは対象期デントコーンサイレージ、試験期ビート茎葉サイレージである。
   ビート茎葉+デントコーンサイレージとはビート茎葉にデントコーンを加えて作ったサイレージのこと、ビート茎葉+乾草サイレージも同様に… 

    ⅱ)対象期及び試験期の養分摂取割合
供試牛 第3フラワー ベッシー グレン 第5フラワー 春光 ウオーカー
区分 デントコーン
サイレージ
ビート茎葉
サイレージ
デントコーン
サイレージ
ビート茎葉
サイレージ
デントコーン
サイレージ
ビート茎葉
サイレージ
デントコーン
サイレージ
ビート茎葉
サイレージ
デントコーン
サイレージ
ビート茎葉
サイレージ
デントコーン
サイレージ
ビート茎葉
サイレージ
dcp 284.0 452.0 290.0 395.0 284.0 420.0 290.0 375.0 284.0 480.0 290.0 412.5
TDN 3736.0 3180.0 4090.0 3745.5 3736.0 364.8 409.0 403.8 323.6 370.4 409.0 407.3

 B) 試験成績
  1) 泌乳量並脂肪量(1日平均)

区分 供試牛 区分 単位 1期 2期 3期 予想2期 増減量 増減率
ビートトップ
単味サイレージ
第3フラワー 泌乳量 kg 27.405 28.260 25.560 26.483 +1.777 +6.71
脂肪量 g 877 819 792 835 -16 -1.92
脂肪率 % 3.2 2.9 3.1 3.15 -0.25 -7.94
ベッシー 泌乳量 kg 14.985 16.065 16.065 15.525 +0.540 +3.48
脂肪量 g 435 482 466 451 +31 +6.87
脂肪率 % 2.9 3.0 2.9 2.9 +0.1 +3.45
泌乳量 kg 42.390 44.325 41.625 42.008 +2.317 +5.59
脂肪量 g 1.312 1.301 1.258 1.286 +15 +1.17
脂肪率 % 3.05 2.95 3.0 3.03 -0.08 -2.64
ビートトップ・デントコーン

サイレージ
グレン 泌乳量 kg 24.480 25.650 23.985 24.233 +1.417 +5.85
脂肪量 g 979 1.103 959 969 +134 +13.83
脂肪率 % 4.0 4.3 4.0 4.0 +0.3 +7.5
第5フラワー 泌乳量 kg 9.225 8.865 8.195 8.710 +0.155 +1.78
脂肪量 g 258 266 262 260 +6 +2.30
脂肪率 % 2.8 3.0 3.2 3.0 0 0
泌乳量 kg 33.705 34.545 32.180 32.943 +1.572 +4.77
脂肪量 g 1.237 1.369 1.221 1.229 +140 +11.40
脂肪率 % 3.40 3.65 3.60 3.50 +0.15 +4.29
ビートトップ・乾牧草

サイレージ
春光 泌乳量 kg 17.190 17.370 13.405 15.298 +2.072 +13.54
脂肪量 g 498 469 389 444 +25 +5.63
脂肪率 % 2.9 2.7 2.9 2.9 -0.2 -6.89
ウオーカー 泌乳量 kg 7.155 7.335 7.245 7.200 +0.135 +1.88
脂肪量 g 299 249 261 245 +4 +1.63
脂肪率 % 3.2 3.4 3.6 3.4 0 0
泌乳量 kg 24.345 24.705 20.650 22.498 +2.207 +9.81
脂肪量 g 727 718 650 689 +29 +4.20
脂肪率 % 3.05 3.05 3.25 3.15 -0.1 -3.17
総計 泌乳量 kg 100.440 103.545 94.455 97.449 6.096 6.23
脂肪量 g 3.276 3.388 3.129 3.204 184 5.74

  2) 生体重の変化(kg)

供試牛 第1期 第2期 第3期 第1第3平均 増減量 増減率 平均
第3フラワー 553.0 549.0 550.0 551.5 -2.5 -0.51 -0.25
ベッシー 516.0 520.0 524.0 520.0 0 0
グレン 678.0 662.0 651.0 664.5 -2.5 -0.38 -0.57
第5フラワー 526.0 519.0 520.0 523.0 -4.0 -0.76
春光 509.0 526.0 536.0 527.5 -1.5 -0.28 0
ウオーカー 536.0 534.0 529.0 532.5 +1.5 +0.28

 C) 考察
   対象期のデントコーンサイレージと同量のビート茎葉サイレージとを置換した試験期との比較を行った処次の如く考察される。
  ⅰ) 乳量ではビート茎葉に乾草を加えて作ったサイレージ群が高く9.81%、ビート茎葉単用群6.71%、デントコーン混合サイレージ群4.77%と何れも対象期に比し増量した。
  ⅱ) 脂肪量に置いてはビート茎葉にデントコーンを加えて作ったサイレージ群高く11.4%、次はビート茎葉に乾草を加えて作ったサイレージ群4.2%、ビート茎葉単味群は1.17%で何れも対
     照群より増量している。
  ⅲ) 脂肪率はビート茎葉単用群及びビート茎葉+乾草群は減少、ビート茎葉+デントコーンサイレージ群は増加した。これは対象期に比しTDNが少なかったことに起因しよう。
  ⅳ) 乳量、脂肪量ではビート茎葉の調製法による差異もルタバガを給与した場合も殆ど差がないが、嗜好性の点でサイレージ25kg、ルタバガ15kg群が40kgサイレージ群より採食時間
     が早い。従ってこれら混合サイレージの利用では30kgに抑え根菜類と併用すのも一法であろう。

 D) 総括
  ビート茎葉の貯蔵法給与法生理に及ぼす影響を明らかにする為サイレージ調整法、ビート及びビート茎葉の栄養分の変化、乳牛に対する生葉並サイレージの飼養試験等により次の
  ことを明らかにした。

  1) サイレージ調整上良質のものを期するには火山灰地に於いては通気性が大であるのでサイロ側部にビニールを使用すること、手数がかかってもビート茎葉は細切すると単味サイ
    レージでも良質なものを作り得る。又製品も家畜に有害な水溶性蓚酸塩も少なくなりカロチン保持率も生葉放置より頗る良好である。
  2) サイレージの栄養分増加並に良質醗酵生成の為無添加物の効果があるが、廃糖蜜、麦糠等が良好である。経済的に制約のある場合は良質の乾牧草、デントコーン稈等の細切
    添加も効果が大である。その添加適量は麦糠5~10%、廃糖蜜1~2%、乾牧草5~10%、玉蜀黍稈(水分45%前後)15~20%であろう。しかしカロチン保持率は単味サイレージより劣る。
  3) 尚、サイレージ調整時及び長期放置乾草した場合蛋白質は原物100に対し90に下る。
  4) 乳牛に対する生葉給与では40kg採食で泌乳量、脂肪量に大差ない。乳中血中の変化も特徴なく燐の僅かの減少が認められる程度であるので殆ど生理障碍を認め得ない。給与適
    量は40kg以内である。
  5) 乳牛に対するサイレージの給与では単味サイレージ、ビート茎葉に乾草を加えて作ったサイレージ、ビート茎葉にデントコーンを加えて作ったサイレージを比較したが、デントコーン
    サイレージより幾分泌乳効果は大であるが、三者間の差は少ない。これらサイレージに根菜類を併用すると嗜好性を増す。
    即ち、サイレージ25kg、根菜15kg位がよいがサイレージのみでは40kg以内が適量であろう。

3. ビート茎葉の飼養試験
 A) 試験方法
  昭和28年度はルタバガ茎葉の給与試験を実施し、その乳牛への影響を調査したが、実際にはビート茎葉の給与農家が多いことから本年度はビート茎葉給与の影響を確かめるべく実
  施した。自昭和29年10月6日至12月6日60日間を3期に分け各期4日間を予備期、16日間を本試験期として成績を検討した。
  飼料給与は試験機には4頭全部にビート茎葉40kgを給与しその中2頭には炭酸石灰150g、塩50gを給与し、他は無給与とした。対照期にはビート茎葉の代わりにビートパルプ3kgを給与
  し、一般管理は当場慣行法に従った。
  調査項目は前年の如く泌乳量、脂肪量、体重、乳中成分、血清成分を分析した。

 B) 試験成績並に考察
  1) 泌乳量及び脂肪量並に生体量
   上述の飼料給与によって試験期間中に生産された乳量及び脂肪量は炭酸石灰給与、無給与に拘わらず原料する。即ち4頭平均にすると泌乳量-3.28%、脂肪量-4.46%であるが、脂
   肪量の減量は炭酸石灰無給与群は著しい。尚、生理障害は余り認められなかった。従って昨年度のルタバガ茎葉より泌乳効果は少ないことになる。
   又生体量の変化をみると4頭共減重しているが、-1.75%程度であるので、体肉の消耗はそれ程考えられない。
  2) 乳成分変化
   本年度は乳成分は試験期間中のみ調査したが炭酸石灰給与無給与の別なく各期に燐、炭酸石灰共減量しているのは昨年度と比較すれば、燐の傾向は同傾向であり、炭酸石灰は
   炭酸石灰給与により増量の傾向にあった昨年とは異なった傾向である。従って、燐酸炭酸石灰は給与の如何で増減されないと云うことが認められる。
  3) 血液の変化
   対象期と試験期炭酸石灰給与群と無給与群と相対称して比較すると、昨年度はポイド-Pが減少していたが、本年は無機燐が試験期に減少の傾向があり、炭酸石灰無給与群にその
   度が強い。昨年同様血清炭酸の変化は定型的でない。
   マグネシウムは炭酸石灰給与群は稍減少し大差ないが、炭酸石灰無給与群は試験期に増量して蓚酸中毒的な傾向を示すがその度は著しくない。
   加里は炭酸石灰給与群の試験期に減少する。ナトリウムは傾向的な変化が認められない。鉄は試験期に幾分減少するのは血色素量の減少と一致し貧血性となる。
   塩素、ビリルビン共傾向的変化がない。
   血液では本年度は昨年度より変化少なく、赤血球数は変化がない。白血球でも同様変化がない。しかし、血色素は対照期に比し試験期に減少の傾向を示すのは昨年と同様であった
   がその度は少ない。血沈には変化はないのは、健康に障害のないことを示している。赤血球抵抗力では炭酸石灰給与群では対照期、試験期の抵抗力の差は明らかでないが、炭酸
   石灰給与群では昨年同様抵抗力の減弱の傾向が認められ、特に試験期に明かである。
   以上の血液変化からみればルタバガ茎葉給与の影響程大でないが、ビート茎葉給与も同様の影響があるから補助資料の給与に注意すれば40kg給与では差し支えないであろう。 

 C) 要約
  1) 4頭の乳牛を2頭宛炭酸石灰給与、無給与の2群に分かち、40kgのビート茎葉を給与し、飼量試験を実施した。
  2) 泌乳量、脂肪量は共に差異がなかった。
  3) 乳中血中の変化によるとルタバガ茎葉程でないが、無機燐が減少し、赤血球抵抗力が減少の傾向を示す。
  4) 以上によって給与適量は40kg以内にすべきであろう。尚濃厚飼料無機物を必ず補給し、乾草給与も忘れてはならない。
     尚茎葉に対し炭酸石灰は0.1%程度添加すればよい。