【普及上の参考事項】
新墾地の果樹園化に関する試験

岩宇試験場

 

1. 爆薬による果樹植穴の深耕
 果樹植穴を深く掘ることは苗木定植後の生育促進上極めて効果が大きいが、経費労力の関係から従来余り実行せられていない感がある。本試験は下層土が堅密な粘土で、人力ではこの草の穴掘りが非常に困難と見られる高台地に於いて、果樹植穴の堀り方について、爆薬を用いて試験し、その効果と経費及び労力を調査したものである。
 (1) 先ず初めに普通の深さの(径150cm、深さ60cm)植穴を人力で掘って置き、その下層の堅硬層を爆薬によって60~80cm程度深く掘ることを企図した。
   その結果は次図に示す通りである。
  第1図 爆破後の土の状態(縦断面)

 (2) 労力並に経費の概要は次の通りである。
  (イ) 爆破労力
    穿孔係2人、爆破係1人計3人1組で作業し、1日8時間で96ヶ所爆破し得る。
  (ロ) 爆破経費
費目 100ヶ所未満の場合(円) 200ヶ所の場合(円)
新桐ダイナマイト 黒扇カーリット 新桐ダイナマイト 黒扇カーリット
爆破 56.25 31.50 42.75 24.00
6号雷管 15.00 15.00 12.30 12.30
第2種導火線 18.90 18.90 15.54 15.54
賃金 12.50 12.50 12.50 12.50
合計 102.65 77.90 83.09 64.34
  備考 1. 新桐ダイナマイト112.5g、黒扇カーリット75g 装填
      2. 第2種導火線長さ70cm
      3. 賃金は1日3人、96ヶ所爆破、1人1日400円
      4. カーリットは供試しなかったが、岩手大学の試験成績より類推したもので、カーリットの爆破効果は新桐ダイナマイトの5割増と仮定した推定値である。

2. 笹に対するクロレートソーダの効果
 果樹園を開設せんとする場合、笹、根曲竹などの繁茂している土地であると、その開墾は非常に困難を極めるのみならず、一旦開墾した畑も笹根の再生力が強いために再び笹の繁茂に悩まされることが多い。
 この試験はクロレートソーダの撒布によって笹枯しの効果と処理跡地の生物生育の状況を調査したものである。
 試験の結果を要約すると次のとおりである。
 (1) クロレートソーダを株当8~10匁を5.5~5合の水にとかして夏秋期に撒布すると、根曲竹は無撒布100に対し410内外の殺草効果を期待し得る。
 (2) 翌年ソバを栽培しても何等の障害を及ぼさない。
 (3) クロレートソーダは地上部のみならず、地下部も枯死させると思われ、笹生未墾地を開墾する際は、従来の刈り取りに比して相当有利で、特に耕鋤墾地は非常に容易となる。
 (4) 所要経費は笹の繁茂の程度によって異なるが、その比較は次表の通りである。

処理地の
笹繁茂程度
刈取経費
(円)
撒布経費
反当3貫撒布の
場合(坪10匁)
反当2貫撒布の
場合(坪7匁)
密生 1960 1613 1125
稍密生 1330 1583 1095
粗生 715 1549 1061