【普及奨励事項】

玉蜀黍月交193号

北海道農業試験場畜産部
飼料作物第二研究室

 

Ⅰ 来歴
 「玉蜀黍月交193号」は昭和15年より旧農林省札幌農事改良実験所-現北海道農業試験場畜産部において「坂下」並びに「maispeta」より育成した自殖系統を昭和26年組合わせたフリント種の3系交配一代雑種である。昭和27年より畜産部において生産力検定を行い昭和30年より道立農試各支場に配布して適応性を併せ検討して来たものである。その組合せ内容は次のとおりである。
  玉蜀黍月交193号(N21×N19)×T6

Ⅱ 特性概要
 「玉蜀黍月交193号」は粒が橙黄色で絹系抽出期では道内各地共「坂下」に比較して大差なく、子実重量は4割前後の増収率を示している。草勢は「坂下」よりやや良好であり、且つ葉身に紫色を帯びる部分がある。雌穂は円錐型に近く、粒はやや小で熱帯系フリント種と北方系フリント種の中間型をなす。その他の特性は「坂下」に比較して大差を示さない。

Ⅲ 奨励態度
 「玉蜀黍月交193号」は子実用として北海道東北部すなわち十勝、北見地方及びその他の坂下奨励地帯に適する。

Ⅳ 試験成績
 1. 特性並びに生育調査成績
一代雑種名
又は品種名
雌穂
抽出期
(月日)
絹糸
抽出期
(月日)
成熟期
(月日)
生育
日数(日)
稈長
(cm)
着穂高
(cm)
1株当
有効
雌穂数
病虫害 倒伏 雌穂長
(cm)
雌穂径
(cm)
粒列数
(列)
一升重
(匁)
千粒重
(g)
粒色 粒の
種別
品質 備考
月交193号 8.1 8.8 9.29 138 179 55 1.0 18.6 4.2 8~16列
11.9
348 307 橙黄 フリント 中の上   
坂下
(対照品種)
7.30 8.9 9.25 135 173 57 1.0 19.4 3.5 8.0 360 303 褐黄 フリント 中の上  
  
  表註  1. 上表の数字は標準栽培における昭和27年~昭和31年の5ヶ年平均である。
       2. 対照品種は道東道北地帯の子実用奨励品種である。

 2. 収量調査成績
一代雑種名
又は品種名
子実重量(反当、貫) 子実容量(反当、石)
昭和27年 28年 29年 30年 31年 平均 同左比率(%) 昭和27年 28年 29年 30年 31年 平均 同左比率(%)
月交193号
 
144.9 109.0 123.9 108.4 107.6 118.8 140 3.938 3.178 3.812 8.054 3.074 3.411 144
坂下
(対照品種)
100.6 79.5 89.9 74.6 80.0 84.9 100 2.756 2.184 2.591 2.096 2.180 2.361 100

Ⅴ 各支場の成績
場所名 一代雑種名
又は品種名
雌穂
抽出期
(月日)
絹糸
抽出期
(月日)
成熟期
(月日)
生育
日数(日)
稈長
(cm)
着穂高
(cm)
反当子実
重量(貫)
同左
比率(%)
一升重
(匁)
備考
十勝支場 月交193号
 
7.31 8.7 9.22 127 242 56 148.1 154 351 昭和30.31年
2ヵ年平均  
坂下
(対照品種)
7.30 8.9 9.22 127 215 50 96.3 100 352
北見支場 月交193号
 
8.2 8.12 9.28 130 (草丈)
222
56 134.0 136 352 同上
坂下
(対照品種)
7.31 8.12 9.28 128 196 44 98.4 100 365
滝川
原々種農場
月交193号
 
7.29 8.4 9.19 122 (草丈)
231
51 143.2 145 343 同上
坂下
(対照品種)
7.27 8.4 9.18 121 199 42 98.8 100 349

上士別分場
月交193号
 
7.29 8.3 9.16 122 (草丈)
247
54 146.5 131 326 同上
坂下
(対照品種)
7.26 8.4 9.16 122 226 42 112.0 100 345
本場
種芸部
月交193号
 
8.1 8.6 9.19 128 168 50 113.8 158 362 同上
坂下
(対照品種)
7.31 8.8 9.19 128 148 46 72.0 100 374