【普及奨励事項】
玉蜀黍ゴールデン・クロス・バンタムについて

北海道立農業試験場 畜産部
     飼料作物第二研究室

 

Ⅰ 来歴
 「玉蜀黍ゴールデン・クロス・バンタム」は昭和27年に北海道農業試験場が米国インディアナ州農業試験場プランソン教授よりその親系統と共に分譲を受けたスイート種単交配一代品種である。昭和28年より畜産部において生食または加工用として生産力検定を行い、昭和30年より一部支場その他に配布して適応性を併せ検討して来たものである。その組合せ内容は次のとおりである。
     玉蜀黍ゴールデン・クロス・バンタム  P39×P51B

Ⅱ 特性概要
 「玉蜀黍ゴールデン・クロス・バンタム」は粒が黄色で、絹糸抽出期では対照品種「ゴールデン・バンタム」に比較して約10日晩い中晩熟に属し、生食適期における経済雌穂重は概ね5割前後の増収率を示す。食味は「ゴールデン・バンタム」より良好で、また甘味強く、生食用は勿論、罐詰加工原料として適当している。
 草勢は「ゴールデン・バンタム」より遙かに良好であり、分げつの多い特性を有し、雌穂を生食または加工用として収穫した残茎葉は家畜の嗜好にも適し、T.D.Nで黄熟期収穫のデントコーン全植物体の7割近くの飼料価値も残っている点より生飼草としての利用性を有している。

Ⅲ 奨励態度
 「玉蜀黍ゴールデン・クロス・バンタム」は生食または罐詰加工用として北海道中・南部の栽培に適し、平年の気象であれば十勝中央部地方でも栽培可能である。なお種子には必ず有機硫黄剤による粉衣を行い、不発芽防止の処置を行わなければならない。

Ⅳ 試験成績
 1. 特性並びに生育調査成績
一代雑種名
又は品種名
雄穂
抽出期
(月日)
絹糸
抽出期
(月日)
収穫期
(月日)
収穫
日数(日)
稈長
(cm)
着穂高
(cm)
1株当
有効雌
穂数(本)
病虫害 倒伏 反当
生体
総重(貫)
成熟期における(cm) 穂芯
ブリックス
(%)
食味 粒色 粒の
種別
雌穂長 雌穂径 雌穂重
(匁)
粒列数
ゴールデン・クロス・バンタム 8.14 8.20 9.17 126 162 53 1.3 999.0 19.7 4.4 64.2 10~14列
11.8
14.3 3.7 スイート
ゴールデン・バンタム(対照品種) 8.3 8.11 9.8 117 134 40 1.2 590.6 17.5 3.9 42.3 8~12列
8.9
13.6 2.8 スイート
  表註 1. 上表の数字は、標準栽培における昭和28年~昭和31年の4ヶ年平均である。
      2. 対照品種は北海道におけるスイート種優良品種(中の早)である。
      3. 食味は最高5、最低1とした場合の10人前後の試食点平均である。

 2. 収量調査成績
一代雑種名
又は品種名
経済雌穂重(反当・貫) 備考
昭和28年   29   30   31 平均 同左比率(%)
ゴールデン・クロス・バンタム 179.7 236.8 167.3 214.2 199.5 154  
ゴールデン・バンタム(対照品種) 137.3 150.6 107.3 122.4 129.4 100  
  表註 1. 経済雌穂重とは”Mkbl.Ear.Wt”すなわち支場価値のある苞皮を除いた生雌穂重のことである。

 3. 一般分析成績
一代雑種名
又は品種名
調査部位 水分
(%)
粗蛋白質
(%)
粗脂肪
(%)
可溶性
無窒素物(%)
粗繊維
(%)
粗灰分
(%)
D.C.P T.D.N 同左
比率
ゴールデン・クロス・バンタム 茎葉(含苞皮) 84.86 1.49 0.37 8.43 3.80 1.11 1.13 11.85 69
雌穂 73.03 3.25 1.32 18.00 3.71 0.69
デントコーン(6品種平均) 全飼草 78.89 1.70 0.44 13.22 4.62 1.13 1.29 17.25 100
  表註 1. 「ゴールデン・クロス・バンタム」は昭和31年度乳熟期糊熟期の収穫物を当部飼料化学研究室において分析した結果である。
      2. 「デントコーン」は昭和13年北農試分析彙集による。
      3. DCP,TDNはモリソンの消化率を引用した。

Ⅴ 各支場、罐詰会社の試作成績並びに意見
 1. 各支場の成績
   昭和30年度……道内3支場、2原々種農場に試験を依頼したが、発芽不良のため試験を中止した場所多く、十勝支場の成績のみ得られた。
場所名 品種名 雄穂
抽出期
(月日)
絹糸
抽出期
(月日)
成熟期
(月日)
生育
日数(日)
草丈
(cm)
着穂高
(cm)
反当子実
重量(貫)
同左
比率(%)
一升重
(匁)
備考
十勝支場 ゴールデン・クロス・バンタム 8.5 8.19 未熟  214 57 98.9 157 265 昭和30年度成績
ゴールデン・バンタム(対照品種) 7.24 8.4 9.30 135 185 48 63.0 100 268
  表註 本試験は子実用に準じて施行された。

   昭和31年度……道内3支場、2原々種農場に依頼した中間報告のあった試験成績は次のごとくである。
場所名 品種名 雄穂
抽出期
(月日)
絹糸
抽出期
(月日)
収穫期
(月日)
収穫
日数(日)
稈長
(cm)
着穂高
(cm)
1株当
有効雌
穂数(本)
反当経済
雌穂重(貫)
同左
比率(%)
備考
本場
(種芸部)
ゴールデン・クロス・バンタム 8.16 8.27 9.23 132 138 47 1.2 215.7 222 昭和31年度成績
ゴールデン・バンタム(対照品種) 8.5 8.10 9.6 115 128 41 1.1 97.2 100
場所名 品種名 雄穂
抽出期
(月日)
絹糸
抽出期
(月日)
成熟期
(月日)
生育
日数(日)
草丈
(cm)
着穂高
(cm)
反当子実
重量(貫)
同左
比率(%)
一升重
(匁)
備考
原々種農場
士別分場
ゴールデン・クロス・バンタム 8.11 8.16 未成熟 - 231 55 91.2 133 320 昭和31年度成績
ゴールデン・バンタム(対照品種) 7.29 85 9.24 131 193 33 186.6 100 301
場所名 品種名 雄穂
抽出期
(月日)
絹糸
抽出期
(月日)
成熟期
(月日)
生育
日数(日)
草丈
(cm)
着穂高
(cm)
反当子実
重量(貫)
同左
比率(%)
一升重
(匁)
備考
十勝支場 ゴールデン・クロス・バンタム 8.17 8.22 10.7 143 221 - 96.2 149 - 昭和31年度成績
ゴールデン・バンタム(対照品種) 8.5 8.12 9.26 132 176 - 64.6 100 -
 北見支場は盗難により中止

 2. 罐詰会社の試作結果並びに意見
   北海道内では、帯広、士別、清水沢(夕張)、苗穂(札幌)、喜茂別、三川(由仁)、乙部等の罐詰工場が、輸入種子により「ゴールデン・クロス・バンタム」を契約栽培して罐詰を製造し
  ているので主な工場に種子を送付して試作を依頼した。
   昭和30年度……昭和29年産種子は冷害により未熟なため生え切れ多く収量調査は不可能であったが品質調査、特性調査では輸入種と大差を認めない意見が多かった。
   昭和31年度……配布した工場中下記の会社より試作結果の意見があった。
地名 会社名 配布種子
試作面積
意見 備考
帯広 日本罐詰KK帯広工場 7反歩 発芽良好にして皮付生穂重の反収308~324貫、
輸入種に比較して、発芽、生育、収量原料品質
に変りを認めない。
契約作付 110町歩
喜茂別 北海道農村工業KK喜茂別工場 5 発芽良好にして皮付生穂重の反収342~360貫、
輸入種と同一の成績である。 
契約作付 27町歩
士別 日本アスパラカスKK士別工場 2 発芽90%以上の見込み。
他に報告なし。
契約作付 18町歩
乙部 北海道食糧罐詰KK乙部工場 4 発芽良好。
他に報告なし。
契約作付 19町歩