【普及奨励事項】
薄荷新品種作条栽培について
北海道農業試験場北見支場 |
Ⅰ 薄荷に対する作条設置の必要性
薄荷は宿根草であるから、一度栽培すると翌年から毎年散状に萌芽するので従来品種の栽培に当たっては萌芽数が比較的少ないので、このまま連作栽培を行うことが可能であった。しかし新品種の「万葉」および「涼風」は栽植当年の収油量が最も高いので原則として一年栽培を奨励している現状にあるも、主産地である網走支庁管内の所によっては、一農家経営面積の3~6割も薄荷を栽培している農家が多い。このような場合従来品種を栽培した場合と同様に散栽培を行うことは、次の如き不利な問題が生ずる。
(1) 極端な密植による徒長のため病害虫に対する抵抗力が著しく減退すると同時に倒伏の危険性が多くなる。
(2) 枝亜数および葉数が減少するので、収油率の低下はまぬがれない。
(3) 畜力農機具の活用範囲が狭いため、労力がかさむばかりでなく非能率的である。
Ⅱ 試験成績
薄荷新品種は越冬性強く増殖率が極めて高いため、連作した場合芽立多く、栽植密度が密となり極端に徒長や落葉をするので、これによる減収を疎止し得る立植巾および間隔を査察するため栽培した結果は、別表のとおりである。
1 耕植梗概 北見支場標準耕植法による。
2 供試品種 「涼風」
3 昭和30年、31年2ヵ年の平均成績
試験区別 | 収穫期調査 | 1/10陌当り収量(kg) | 油重 割合(%) |
収油率 (%) |
||||||
削り巾 (cm) |
生え巾 (cm) |
草丈 (cm) |
枝亜数 (本) |
葉数 (枚) |
50cm間 個体数 (個体) |
生草重 | 乾草重 | 油重 | ||
38 | 48 | 95 | 26 | 199 | 59 | 2042 | 606 | 4236 | 105 | 0.21 |
〃 | 36 | 101 | 25 | 167 | 46 | 2037 | 656 | 4312 | 107 | 0.21 |
〃 | 24 | 98 | 28 | 222 | 33 | 2098 | 655 | 4455 | 111 | 0.21 |
〃 | 12 | 96 | 32 | 254 | 22 | 1873 | 627 | 4052 | 101 | 0.22 |
26 | 48 | 98 | 24 | 156 | 60 | 1886 | 660 | 3942 | 98 | 0.21 |
〃 | 36 | 97 | 27 | 190 | 47 | 1909 | 628 | 4240 | 106 | 0.22 |
〃 | 24 | 92 | 25 | 194 | 29 | 1847 | 626 | 4078 | 102 | 0.22 |
〃 | 12 | 89 | 27 | 197 | 22 | 1878 | 615 | 4353 | 108 | 0.23 |
無処理 | 99 | 23 | 122 | 59 | 1927 | 696 | 4016 | 100 | 0.21 |
Ⅲ 結論
(1) 削り巾26cm
収量的に考えて安定はしているがこのグループ中、最も収量の高かった「26~12」の場合でも実質的にはほとんど密条の体形であるので、畜力の導入はやや困難となる。しかし従来のように手取除草を行う考えでその他の管理に重点を置くことにより、かなりの多収性があると考えられる。
(2) 削り巾38cm
種々の点からみて生え巾の狭いものが理想的であるが、低温年および旱魃年は茎葉の繁茂が不良になりがちであるので、或る程度、広巾の状態のものが安全度が高い。
(3) 以上の結果から考えて、今後やむなく連作栽培を行う農家に対して
削り巾 1尺2寸~1尺3寸
生え巾 5寸~8寸
尺間個体数10~15個体が適当と考えられるので、今後の指導に活用したい。