【普及奨励事項】
栽培法による土壌浸蝕抑制について

北海道農業試験場土壊保全研究室

 

 本試験は傾斜地における各種作物栽培に当り培土、間後作、混播、敷草などの方法と侵蝕抑制効果との関係を知らんとしてアスパラガス、大豆、燕麦および馬鈴薯などにつき行われたものでその成績次の如くである。(表中数字は水1立により流された土壌量g)

17年生アスパラガス上下耕 傾斜度15°
1) 対照区(無作付裸地) 126
2) 慣行区(作付無培土) 101
3) 敷草区(青刈燕麦反300kg)     39
4) 同上  ( 同上   600kg)  31
5) 間作区(菜種8月初撒播) 23
6) 培土区(培土) 99

大豆(北見長葉)等高線栽培傾斜度32° 
1) 裸地 181
2) 無培土 85
3) 早期培土(6月16日) 118
4) 普通培土(7月16日) 74

馬鈴薯 等高線栽培
1) 馬鈴薯単作 443
2) 同上 甜菜交互作 273
3) 同上 燕麦交互作 313

馬鈴薯 傾斜度17°等高線栽培
1) 裸地 209
2) 設溝(10米間隔溝内敷藁) 32
3)  〃 (5米  〃  ) 0
4) 設溝(10米間隔敷藁せず) 111
5)  〃 (5米  〃  ) 161

燕麦(傾斜度17°等高線栽培)
1) 裸地     7月14日培土 131
2) 単作培土(畦幅45cm) 62
3)  〃   ( 〃 75cm) 61
4)  〃   ( 〃 90cm) 94
5) 赤クロバー混播(畦幅45cm) 53
6)  〃   ( 〃 75cm) 61
7)  〃   ( 〃 90cm) 67

1) 単作(収穫後放任) 29
2) 黄花ルーピン間作(8月10日播種) 20
3) 蕎麦全面耕起撒播(8月1日2) 79
4) 蕎麦作条間播種(8月10日) 42
5) 菜種   〃   (8月12日) 68

 以上の成績によれば傾斜地におけるアスパラガスの慣行栽培法に表土の侵蝕損失著しく裸地に匹敵す。なお同一降雨条件ではアスパラガス採取期間中の方が侵蝕の危険が大きいので採取終了後培土を崩し畦間に敷草をする効果著しく敷草は必ずしも多量でなくとも土壌および水の流亡を抑制する。また間作緑肥もその効果顕著である。
 侵蝕助長作物なる大豆もその地上部生育の最盛期前後には侵蝕抑制効果が高いが培土もまた抑制効果著しい。馬鈴薯と甜菜または燕麦との交互作はいずれも単作に比し侵蝕抑制効果を示し殊に秋季馬鈴薯収穫跡地においてその効果顕著である。なお馬鈴薯収穫跡地に等高線に設溝し更に溝内に敷藁を施すことは侵蝕量を著しく軽減し抑制効果大である。
 また燕麦に対し培土または間混作の関係を見るに春期における混播牧草の侵蝕抑制効果認められ、燕麦収穫後においては培土も混播牧草もほぼ同程度の顕著な侵蝕抑制効果を示し、収穫跡地に間後作を行う時刈株を残しその畦間に播種することは抑制効果著しいが全面耕耘を行うことはむしろ侵蝕を助長する。