【普及奨励事項】
根釧火山灰地における牧草施肥法について

北海道立農業試験場根室支場

 

 本試験は摩周A層およびB層の新墾地ならびに開墾後25年普通作物栽培地に牧草を播種した既墾地(永年牧草地)における牧草施肥法を知るために三要素試験を行ったもので、牧草はチモシー及びクロバーを供試し、単播(反当チモシー2フィート听、クロバー1听)および混播(播種量それぞれ半量)などの場合につき試験されその成績つぎの如くである。(乾草重収量比率)

Ⅰ 新墾地の場合
区別 チモシー単播 混播
a層 b層 a層 b層
無肥料区 4 0 14 3
無窒素区 80 21 87 22
無燐酸区 6 0 8 3
無加里区 97 58 98 39
三要素区 100 100 100 100
三要素燐酸30貫区 172 210 177 297

Ⅱ 既墾地の場合(三カ年平均)
区別 チモシー単播 クロバー単播 混播
毎年無肥料区 28 46 28
 〃 無窒素区 39 94 94
 〃 無燐酸区 80 68 70
 〃 無加里区 59 49 53
 〃 三要素区 100 100 100
初年無窒素以後無肥料 41 67 47
 〃 無燐酸以後無肥料 42 54 44
 〃 無加里以後無肥料 44 49 33
 〃 三要素以後無肥料 59 71 66
初年目三要素以後窒素単用 73 57 73
 〃     燐酸単用 54 63 57
 〃     加里単用 55 88 75

以上成績によれば
 新墾地もしくはこれに準ずる牧草地の如く従来燐酸施肥を行わなかった場合には燐酸吸収力極めて大なるため燐酸の肥効著しく大で窒素これに次ぎ加里の肥効は小であるので、特に燐酸施肥の効果が著しい。既墾地で牧草に転換したような場合には永年月間耕起しないため播種当年にのみ燐酸の肥効が認められるが年次の経過と共に固定燐酸が有効化して燐酸の肥効が低下し窒素加里の肥効が現れる。
 この傾向はチモシーの如き浅墾性牧草では一層著しく3年後のチモシー畑は窒素、加里の欠乏のため減収し易いので年次経過と共に窒素、加里に重点を置き施肥すべきである。また混播の場合窒素施用により特にチモシーの生育旺盛となりクロバーの生育かえって抑制されるのでクロバーの収量を高く保つには特に加里を増施すべきである。
 なお播種当年目各種施肥処理を変えてもその後無肥料とする時は3年目でほとんど差異を認めない従って施肥効果の持続年限はほぼ2ヵ年であるので当初より適当の施肥を行う要がある。