【普及上参考事項】
成鶏及び雛に対する紫外線照射について

北海道立種畜場

 

Ⅰ 試験の目的
 北海道の養鶏においては、冬期間長期に亘って(少なくとも5ヵ月以上)舎飼するため、日光浴不足を来たし、成鶏については、産卵率及び孵化率が低下し、いわゆる脚弱症等の障害が多発し雛においても育成率の低下発育の遅延等が現れ経済的に重大な損失を招いている。これらの対策として、紫外線蛍光灯及びビニールフィルムを利用して紫外線の照射を試み、それらの効果を検討した。

Ⅱ 成鶏に対する試験
 1. 試験材料
  (1) 供試鶏 : 昭和30年産の単冠白色レグホーン種成鶏♂3♀27
  (2) 供試紫外線灯 : マツダ蛍光ランプFL-20E、20W
  (3) 供試ビニール : Y社製ビニール厚さ0.1mm
  (4) 供試紫外計 : 中央気象台式紫外計
 2. 試験方法 :
  (1) 試験機関 : 昭和31年2月5日より4月5日まで51日間
  (2) 試験区分
群別 羽数 処理 給与飼料 紫外線
対照群 10 ♂1 対照 基礎資料
♀9
紫外線灯群 10 ♂1 紫外線灯照射
♀9
ビニール群 10 ♂1 ビニール使用
♀9

  (3) 基礎飼料及び給与量 : 
玉蜀黍 燕麦 大麦 米糠 麦糠 魚粕 大豆粕 給与量 その他
35% 15% 5% 10% 10% 5% 15% 5% 1日1羽105g カルシウム 1.0g
塩      0.5g

    基礎資料分析結果
水分 粗蛋白質 粗脂肪 可溶無窒素物 粗繊維 粗灰分
15.08 17.13 2.03 55.34 2.74 7.65

  (4) 紫外線灯照射方法
   試験開始後1週間までは1日4時間(毎夜20~24時)照射したがトサカに皮膚炎を生じたので以後は1日2時間(毎夜20~22時)とした。照射は管球2本ろう棲架上70cmのところに設置。
  (5) ビニールフィルムの使用方法 : 窓ガラス枠に取りつけ1.5ヤール使用

 3. 試験成績 :
  (1) 体重 : 統計処理によって有意の差と認められない。
        週
群別
開始時 3週 6週 終了時
対照群 1988.0(100.0) 1933.5(97.3) 1935.0(97.3) 1980.5(99.6)
紫外線灯群 1861.0(93.6) 1873.0(94.2) 1820.0(91.5) 1824.0(91.8)
ビニール群 1856.0(93.4) 1830.0(92.1) 1845.5(92.8) 1823.0(91.7)

  (2) 産卵数 : 両試験群と対照群との差はいずれも0.1%の危険率で有意の差と認められる。
群別   期間
項目
予備調査
期間(月日)
(2.1~2.14)
試験期間(月日)
2.15~2.29 3.1~3.15 3.16~3.31 4.1~4.5 全期間
対照群 産卵数(個) 57 72(破卵1) 73(破卵1) 68(破卵2、軟卵1) 24(破卵2) 237(破卵6、軟卵1)
産卵率(%) 45.2 53.3 54.1 47.2 53.3 51.6
紫外線灯群 産卵数(個) 62 86 101 108(破卵1) 34 329(破卵)
産卵率(%) 49.2 63.7 74.8 75.0 75.6 71.7
ビニール群 産卵数(個) 48 80 92 112(破卵1) 35 319(破卵1)
産卵率(%) 38.1 59.3 68.1 77.8 77.8 69.5

  (3) 孵化成績 : 孵化率は両試験群との差はいずれも有意と認めた。(紫外線灯1%ビニール5%危険率)
群別    回次
項目
第1回
2.15~2.20
第2回
2.21~2.26
第3回
2.27~3.3
第4回
3.4~3.9
第7回
3.22~3.27
第8回
3.28~4.2
対照群 入卵数 26 29 26 17 18 22 138
無精卵 0 0 2 0 1 0 3
発育中止卵 1 0 0 2 1 5 9
死籠卵 2 3 4 2 3 1 15
発生数 23 26 20 13 13 16 111
孵化率 88.5 89.7 83.3 76.5 76.5 72.7 82.0
紫外線灯群 入卵数 28 38 27 40 28 37 198
無精卵 4 6 7 3 3 0 23
発育中止卵 1 1 1 1 1 1 6
死籠卵 1 3 0 0 0 2 6
発生数 22 28 19 36 24 34 163
孵化率 91.7 87.5 95.0 97.3 96.0 91.9 93.1
ビニール群 入卵数 29 25 33 37 38 40 202
無精卵 0 0 0 1 0 0 1
発育中止卵 0 1 1 1 3 3 9
死籠卵 2 1 0 3 1 6 13
発生数 27 23 32 32 34 31 179
孵化率 93.1 92.0 97.0 88.9 89.5 77.5 89.1

  (4) 健康状態 : 両試験群は対照群よりも活力に溢れ健康状態は良好。
  (5) 紫外線強度 : 
      紫外線灯 : 70cmの距離で1分7.5~8.0(0.4776~0.5849)エルグ・平方cm/分
      ビニールフィルム : 1分7.09.5(0.3899~1.075エルグ・平方cm/分)
  (6) 経済効果 : 
        週
群別
1日1羽当り
飼料費
飼料費計 電力料金 償却費 経費合計 生産卵数 卵1個当り
生産費
同指数
対照群 3円30銭 1514円70銭 - - 1514円70銭 230 6円59銭 100
紫外線灯群 3円30銭 1514円70銭 51円4銭 406円 1971円74銭 328 6円1銭 91.2
ビニール群 3円30銭 1514円70銭 - 15円30銭 1530円 318 4円81銭 73.0

Ⅲ 雛に対する試験
 1. 試験材料 : 
  (1) 供試雛 : 孵化後10日齢の単冠の白色レグホーン種雛♂10、♀20 2群
  (2) 供試紫外線灯及び紫外計 : 成鶏の場合と同じ。
 2. 試験方法 :
  (1) 試験期間 : 昭和30年5月23日より7月12日までの50日間
  (2) 試験区分 : 
群別 羽数 処理 給与飼料 紫外線
対照群 30(♂10 ♀20) 対照 基礎資料
紫外線灯群 30(♂10 ♀20) 紫外線灯照射

  (3) 基礎資料及び給与量 :
   〇基礎飼料の配合割合
飼料 玉蜀黍 砕麦 燕麦 米糠 魚粕 カルシウム 緑餌
配合率 40 10 10 10 10 20 2 0.5 適宜

   〇飼料給与量 : 
週齢 10日~2週 2~3週 3~4週 4~5週 5~6週 6~7週 7~8週 8~終了
期間(月日) 5.23~5.26 5.27~6.2 6.3~6.9 6.10~6.16 6.17~3.23 6.24~6.30 7.1~7.7 7.8~7.12
1日1羽当給与量(g) 10 15 25 30 40 45 55 60

  (4) 紫外線照射方法 : 試験開始後、5週間までは床上0.5mとしたが眼炎を起こしたので以後は1mとし照射時間は毎日4時間(6時30分~10時30分)

 3. 試験成績 :
  (1) 体重 : 試験群と対照群との差は第2週より有意
群別 項目 時開始 第1週 第2週 第3週 第4週 第5週 第6週 終了時
対照群 体重 46.7 65.0 91.5 118.8 157.5 201.0 245.4 286.3
指数 100 100 100 100 100 100 100 100
紫外線灯群 体重 43.7 72.0 110.5 159.3 211.9 270.3 339.2 439.9
指数 93.4 110.8 120.8 134.5 134.5 134.5 138.2 153.7

  (2) 育成成績
群別 開始羽数 斃死羽数 終了羽数 育成率
対照群 30 10 20 66.7
紫外線灯群 30 0 30 100.0

  (3) 健康状態 : 対照群には軽度の脚弱症が散見されたが、試験群はおおむね健康で活力に溢れ、良好であった。
  (4) 紫外線強度 : 
     紫外線灯 : 床上0.5mで1分8.5~10.0(0.7164~1.316エルグ・平方cm/分)
              床上1mで1分4.5~6.0(0.1415~0.2600エルグ平方cm/分)
  (5) 経済効果 : 
群別 1羽平均
増体重(g)
飼料給与
量計(g)
1羽平均
給与量(g)
同飼料費 紫外線灯
償却費
経費合計 電力料金 増体100gに
要した経費
指数
対照群 239.6 43165 2158 78円55銭 78円55銭 52円78銭 100
紫外線灯群 396.2 53100 1770 64円43銭 11円67銭 77円57銭 1円47銭 19円58銭 59.7

 4. 摘要
  (1) 成鶏及び雛に対して、紫外線蛍光灯及びビニールを用いて紫外線照射の効果を試験した。
  (2) 成鶏においては、照射距離70cmで毎日2時間の紫外線灯照射及びビニールフィルムに使用による紫外線の照射は、産卵率孵化率並びに卵殻の質の向上に有効であり、経済効
    果もあるので実用的であると認めた。
  (3) 雛においては、照射距離1mで、毎日4時間の紫外線灯照射は、発育促進ならびに育成率向上に有効であり、経済効果もあるので実用的であると認めた。