【普及上参考事項】
背負動力撒粉兼ミスト機について

北海道農業試験場農機具試験室

 

合理的使用法を知るため性能試験を行ったが、その結果は次の通りである。

 

Ⅰ 風速風量について
 撒粉機の場合、標準回転3000r.p.m内外における風速は30~45m/sec 以上のものが多く、風量は3~4.5m3/minで4m3/min、以上が多い。ミスト機の場合は破細装置の関係から回転数が多いにかかわらず、(3500r.p.m内外)撒粉機に比べ風速風量ともに減少して20~35m/sec(30m/min)、2~7m3/min(3m/min以上)となっている。なおエンジンの回転数が増減すると風速風量が急激に増減するものがあった。

Ⅱ 薬剤地上撒粉性能について
 地上撒粉をして一定面積に粉剤を受けた試験においては、もっとも多量に落下堆積する範囲は粉口の先4~7m位であった。全般に一様に堆積したものとある一定の範囲に特別に多量に堆積したものとがあった。前者は風速が比較的大きく風量が小さな機種に、後者は風速が小さく風量が割合大きな機種にみられた。
 粉口からの距離を異にする地点撒の粉量をみると堆積量が比較的多い範囲は5~6m乃至8~9m位で7m内外がもっとも多い。最大堆積地点以遠は堆積量が漸次減少するが、減少の様相には(1)減少程度の弱いもの、(2)中程度のもの、(3)はなはだ強いもの3の種が認められる。
 減少程度の弱い(1)の型は風速が比較的大きく風量が小さな機種(標準回転において45m/sec、3m3/min内外、(3)の型は風速が小さく、風量が割合大きなもの(30m3/sec、4m3/min内外)、(2)の型は風速風量共に中程度乃至大きなもの(40~45m3/sec 3.5~4.5m3/min)にみられた。
 均一な撒粉を行うためにはその機種の特性、主として(第2~第3図)風速、風量を十分知っておかなければならない。また購入に当たっては、均等撒粉可能な機種を選ぶべきである。

Ⅲ 送薬調節器の開度の大小と吐粉量の変化について
 最小吐粉量は0.03~0.16kg/min、で0.05kg/min内外のものが多かった。最大吐粉量は0.7~1.2kg/minで0.7kg/min位のものが多かった。調節器の開度の大小及び回転数の増減いよる吐粉量の変化はおおむね比例していた。しかしこれを詳細に調査すると、標準回転より500r.p.m低下しても吐粉量にあまり変化のないものが多く、さらに、1000r.p.m位遅くても大差のないものもあった。しかし1000r.p.m位遅くなると急激に減少するのが普通である。薬剤調節器レバーの目盛を、変えても吐粉量はほとんど差異がないものもあった。
 エンジンの回転数が1000r.p.m程度すると吐粉量が急激に減少するから爆発音や振動状態等により標準回転数を熟知しておく必要がある。

Ⅳ 薬槽内の薬剤量の増減と吐粉量の変化について
 機種によってはタンク内に中程度になった時に多量に吐粉されるものあるいは反対に少量に吐粉されるものもあったが、おおむね平均して吐粉されたものもあった。粉剤タンク内の粉剤量が変化しても単位時間当りの吐粉量は一定であることが望ましいが、吐粉量が変化するものがあった。このことは使用中絶えず送薬調節器レバーを調節しなければならないことになる。あるいは作業速度を変えなければならない、さもないと不均一な撒粉状態になる。常に撒粉量が一定名機種を選択すべきである。

Ⅴ 吐水性能について
 標準回転において最小口径のノズルを使用した場合の吐水量は0.2r.p.m~0.8L/minくらいで0.5L/min内外が多かった。最大口径ノズルをしようした場合は、0.6~1.7L/minで1L/min内外が多かった。また同一ノズルの場合にエンジンの回転数の大小により吐水量の変化が大きなものと小さなものとがあった。

Ⅵ 振動について
 撒粉機の場合
  前後の毎秒振動数は49~63、上下は44~149で60内外が多く、左右は47~67である。前後の振巾は1~1.8mm、上下は0.4~2.2mmで1mm内外が多く、左右は0.6~1.6mmで1mm以上
  が大部分である。
 ミスト機の場合
  前後の毎秒振動数は56~66、上下は59~131で60内外が多く、左右は56~73であった。前後の振巾は1.1~2.1mm、上下は0.5~2.0mmで1mm以下が大部分であり、左右は0.5~1.5で
  1mm以下が大部分である。  一般的にみて、毎秒振動機は機種により差異が少ないが、振巾には相当の開きがある。ミスト機は撒粉機に比べ振動数は一般に多く(エンジンの回転
  数の関係から)振巾は反対に小さくなる傾向がある。

  背負った時の感じでは振巾が小さく振動の波が単純な形でしかも規則正しいものが楽な感じがした。共鳴現象などのための不規則あるいは複雑な波形のものは不快な感じがした。
  撒粉機とミスト機を比較すると振動数の少ない撒粉機の方が楽な感じがした(エンジン爆発音の影響もあろうが)。

Ⅶ 燃料消費について
 撒粉機の場合は標準回転において0.4~0.7L/nミスト機の場合は0.5~0.9L/nまたミスト機の方が0.1~0.2L/n内外多くなるものが多かったが、ほとんど変わらないものもあった。

Ⅷ 消音器からの排気あるいは発動機の冷却風が人体の方に流れることは作業者の保健上不都合であり不快の感を与える。
  薬剤タンクは異物混入防止のため濾過網が必要である。