【普及上の参考事項】

りんご(紅玉)に対する開花中の薬撒と摘花効果について

北海道立農業試験場 渡島支場

 

りんご栽培において摘花労力の節約法はいろいろ行われているが、開花中の薬撒もその一つである。なお、摘花としては、良果の得られる初期開花を残し、中期以後に咲く花を除くことが望ましいので、薬撒の時期、方法等もこの目的に添うよう、また、併せてモニリヤ病(実腐)防除効果も調査した。

 試験法
  昭和28.29の2ヵ年は、小型ハンドスプレーで供試花叢にのみ撒布したものであり、昭和30、31の2ヵ年は、動力噴霧機で供試樹全体に撒布したものである。

 調査結果
  1. 薬剤濃度
   石灰硫黄合剤0.5度が適当である。1.0度以上では摘花効果は変わらぬばかりか、葉に薬害を生ずる。
  第1表 濃度別の落花割合(%)
    濃度
年次
0.5度 1.0度 1.5度 2.0度 無処理
28年 71 88 - - 13
29年 95 96 100 97 35
 註 2ヵ年共  1区
    50花叢   2区

  2. 撒布時期と落花程度
   開花当日から3日目までの撒布は最も落花し易く、それ以後は日が経つに従って影響は少なくなる。
  第2表 イ. 紅玉の開花日別の落花割合(%)
   開花日
年次
初日 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 全期
28年 22 20 35 43 48 54 47 35
29年 8 18 29 26 36 36 - 25
 註 供試花数  28年は約1000花
            29年は約500花

       ロ. 撒布時期による落花割合(%)
   開花日
年次
開花当日 開花後
1日目
 〃
2日目

3日目

4日目

5日目

6日目

7日目
28年 62 67 72 58 27 - - -
29年 87 94 90 73 63 44 24 13
  註 2ヵ年共  1区  20花叢  5区制

  3. 摘花目的の撒布
   開花後5日目と8日目に動力噴霧機で樹上撒布を行うと、良果の得られる初期の花(初日、2日目の花)に影響なく、3日目以後の花の9割を除くことができる。数字上は初期の花も落
   花しているが、無撒布のものでも、自然落花は60%を示しているから、薬撒による落花数は極めて少ないと見るべきであろう。
  第3表 樹上撒布による落花割合(%)
     開花日
   区別
年次
初日、2日目の花 3.4.5日目の花 6.7.8日目の花 9日目以降の花 3日目以降の
花の合計
30年 撒布 73 96 87 0 93
無撒布 62 53 64 0 56
31年 撒布 75 88 80 89 87
無撒布 72 72 77 88 77
  註  開花初日とは総花数の1割前後が開花した日を指す。
      30年は  1区半本  4区制
      31年は  1区1本   2区制

  4. モニリヤ病防除効果
   無防除の場合、31年は5~6%、30年では13%内外の被害(実腐)をみており、1回防除を行うと4%程度に減少するが、摘花のため、2回撒布したものはほとんど被害を見ていない。
  第4表 モニリヤ病の被害花叢割合(%)
     年次
   項目
区別
30年 31年
2回撒布 1回撒布
(参考)
2回撒布
1 2 3 4 1 2
撒布 0 1 0 0 1 4 1 0 1
無撒布 9 19 7 17 73 10 5 6 6
  註  30年は 1区半本  4区制
      31年は 1区1本   2区制

  5. 品種による差異
   摘花効果は、品種により異なり「印度」は多少認められる程度、「国光」「デリシャス」等は自然落花と変わらず、効果は認められない。
   摘花目的の薬撒は、一応結果の判明した「紅玉」についてのみ適用したい。
  第5表 品種別の落花割合(%)
     品種名
   区別
開花日
国光 印度 デリシャス
処理 無処理 処理 無処理 処理 無処理
初日、2日目の花 39 41 45 38 77 71
3.4.5日目の花 53 53 68 53 91 89
6.7.8日目の花 75 68 87 50 86 87
9日目以降の花 75 79 64 81 84 84
3日目以降の
花の合計
64 62 69 56 89 89
  註  各品種共31年の成績で  1区1本  2区制

  6. 薬害
   葉に対しては、各品種共薬害を認めないが、果実に対しては「紅玉」、「国光」、「デリシャス」では影響ないが、「印度」では若干銹果の多くなる傾向が窺われる。
  第6表 銹果の発生割合(%)
     銹の程度
   区別
品種名
紅玉 撒布 17 39 31 13
無撒布 16 41 27 16
印度 撒布 24 31 24 21
無撒布 9 36 24 31
  註  被害程度の「多」は果面の3割以上、「中」は2~3割、「少」は2割以下に銹の発生したもの。
      「紅玉」は250~340果、「印度」は90~140果についての調査である。