【指導上の参考事項】

ビニールフイルムの有滴剤について

北海道農業試験場作物部作物第一研究室

 

Ⅰ 目的
 ビニールフイルムの使用年数にともなう無滴化を更正するための各種有滴剤についてその実用性を比較検討した。

 

Ⅱ 試験方法
 1. 製品メーカー       : 三井化学、モンサント化成
 2. 有滴剤の種類と性状  : 三井化学  7種類、油性液状
                    モンサント化成  3種類、油性液状(内1種はやや固いクリーム状)
 3. 使用法           : 原液または稀釈液をフイルムに噴霧または塗布
 4. 供試フイルム        : 1期間育苗に用いて無滴化したフイルム。比較として未使用フイルム
 5. 試験規模及び期間
   A 圃場 -- 1/20坪の木枠に被覆、1区制で7月25日~12月10日まで、4回反覆
   B 温室内 -- 1/20万のポットに被覆、1区制で12月1日~1月30日まで、3回反覆

 6. 設置後時期を追って水滴の付着状態を観察調査した。

 

Ⅲ 成績
  A 滴の状況について
試験
開始(月日)
区別 設置後日数 概評
2日 5~10日 30日 新を100とした比 有効順位 実用性の有無
7.25
(圃場)
普Ⅴ新無処理 小滴密
(良)
やや小滴化
(良)
100
無滴化Ⅴ旧無処理 大滴疎
(無滴化)
流滴
(完全に無滴化)
10
同上モンサントA塗布 やや小中滴密
(良)
中滴密
(多少むらがある良)
75 1 有(安定)
10.1
及び
10.10
(圃場)
普Ⅴ新無処理 小滴密
(良)
やや小~中滴密
(良)
100
無滴化Ⅴ旧無処理 大~流滴
(無滴化)
流滴
(完全に無滴)
10
無摘化

Ⅴ旧

三井 A塗布 中~大滴やや疎
(やや不良)
大滴疎
(不良)
大滴疎~流滴
(無滴化)
30 3 無(不安定)
B塗布   〃      
( 〃 )
  〃
  ( 〃 )
30 4
DM3塗布 大滴疎
(不良)
大~やや流滴
(無滴化)
流滴
(ほとんど無滴化)
20 6
DM4塗布 大~流滴
(無滴化)
大~流滴
(無滴化)
 〃
  ( 〃 )
20 7
DM5塗布 小~中~大滴やや疎
(やや良)
中~大滴やや疎
(やや不良)
大滴やや疎
(やや不良~不良)
55 1 有(不安定)
DM6塗布 中~大滴やや疎
(やや不良~やや良)
大滴やや疎
(不良~やや不良)
大滴疎やや流滴
(不良~稍無滴化)
40 2
DM7塗布 大滴やや疎
(不良~やや不良)
大~やや流滴
(無滴化)
流滴
(ほとんど無滴化)
25 5 無(不安定)
試験
開始(月日)
区別 設置後日数 概評
2日 30日 新を100とした比 有効順位 実用性の有無
12.15
(温室)
普Ⅴ新無処理 小滴密
(良)
小~中~大滴やや密
(良)
100
無滴化V旧無処理 大~流滴
(ほとんど無滴化)
大~流滴
(完全に無滴)
15
無摘化

Ⅴ旧

モンサントA やや小~中滴密
(良)
流滴
(完全に無滴)
75 1 有(安定)
 〃  B  中~大滴
(不良)
  〃
  ( 〃 )
25 5 無(不安定)
 〃  Bの100倍 大滴疎
(不良)
流滴
(ほとんど無滴化)
20 7
 〃  C 中~やや大滴疎
(不良)
大滴疎~流滴
(不良)
35 4
 〃  Cの3倍 中~大滴疎
(不良)
大~流滴
(ほとんど無滴)
25 6
 〃  Cの20倍 中滴やや疎
(やや良)
中~大滴疎
(やや不良)
45 2
 〃  Cの50倍 中~やや大滴疎
(やや良)
やや大滴疎
(稍不良~不良)
40 3

 以上の結果からもっとも実用性のある有滴剤は「モンサントA」で、水滴の付着状態もほぼ整一で、日数の経過による変化も少なく、育苗期間中(30日)は安定して使用できるものと思われる。ついで(三井DM5)も有効であるが、前者よりは不安定で日数の経過による変化が大きく、初期には比較的安定しているが後半には不安定で滴の流下が見られる。その他の各種有滴剤については、いずれも小滴の附着少なく、なお流下する傾向があり、効果はみられなかった。
 なお「モンサントA」は揮発性で、フイルムとの親和性が強く、乾燥後は水滴に溶ける心配がない。これに対して「モンサントB及びC」はフイルムとの親和性が少なく、水滴の付着によりフイルムと有効剤の皮膜が分離して水滴の流下とともに流れ落ちるのが欠点である。
 三井製有滴剤は全部油性であるためフイルムにはよく附着するが、乾燥することがなく、30℃以上の高温になれば、水滴とともに溶融落下するので、フイルムに有滴剤の附着している間は概して良好であっても、一度高温にあえば直ちに変化を来すのが欠点である。
 本試験は現在まだ継続中なので、不明な点は今後の調査にまたなければならないが、今回の試験に供試した材料の範囲内においては有滴剤を使用しても初年目フイルムとまったく同様に再生しうる段階に至っていないのでなお一層の研究改良が必要であろう。

  B 有滴剤の適正塗布量について
   (1) 坪当塗布量と塗布後の観察
モンサントA剤  坪当27g=多すぎて「ベタ」つき乾きにくい。
 坪当20g=やや多すぎる。有滴剤の皮膜が厚く乾きがやや遅い。
 坪当13g=有滴剤の皮膜も適当で乾きも早い。
 坪当9g=皮膜がかなり薄くなるが注意して均一に塗れば不十分とは思われない。
三井DM5剤  坪当7g=多すぎる  油性で少量でもよく伸びる。揮発しないので乾くことがない。
 坪当3g=適量と思われる  

   (2) モンサント有滴剤の揮発性程度
    有滴剤 100g を容器に移し30分毎の減量をみた。
      30分後    8g減 (8%揮発)
      60分後   15g減 (15%揮発)
      90分後   20g減 (20%揮発)
      120分後   25g減 (25%揮発)
   (3) 塗布法
    軟らかい布地を使用、布を有機剤に浸し、軽くしぼってフイルム面を片道宛均一に塗布する。

 

Ⅳ 指導上の注意
 

 以上から適正塗布量を考察すると
  モンサント有滴剤Aについては、坪当10~20gの範囲で適当と考える。なお本剤は揮発性であるため塗布作業は迅速を要する。
  三井有滴剤DM5については油性で乾くことなく、よく伸びるので3~5g程度が適当と思われる。
 なお本剤は引火性があるので取扱いには火気について特に注意する必要がある。
 またいずれの有滴剤もポリエチレンフイルムに使用してもその効果はほとんど認められないから使用しても無意味である。