【普及奨励すべき事項】

薄荷銹病防除について

北海道立農業試験場北見支場

 

Ⅰ. 目的
 ハツカ銹病に対し、新農薬による防除効果を検知する目的で昭和31年以降3ヵ年試験を実施した。

 

Ⅱ. 試験方法
 1. 試験年次      昭和31年~33年
 2. 試験場所
     昭和31~32年    農試北見支場圃場
     昭和33年       常呂郡留辺蘂町  脇太郎外圃場
 3. 供試品種     万葉
 4. 供試薬剤
     有機水銀剤      フミロン錠、PS粉剤(昭和31年)
     銅水銀剤        CP粉剤
     有機硫黄剤      ジネブ水和剤、フアーバム水和剤(10L当り25g)
     銅剤          石灰ボルドー液(6~6式)
                  銅水和剤
ああああああああああああ A 塩化性塩化銅(Cu 45%)
(10L当31.3g)
ああああああああああああ B
ああああああああああああ C   塩化性硫酸銅(Cu 24%)
(10L当41.7g)
ああ亜 キヤプタン水和剤 オルソサイド (10L当25g)
ああ亜 ジクロンチユーラム剤

 

Ⅲ. 試験結果の概要
 1. 昭和31年における結果
  銅剤、有機水銀剤及び有機硫黄剤を供試したが、有機硫黄中ダイセン水和剤が最も勝っていて、6-6式石灰ボルドー液がこれについでいる。
 2. 昭和32年度における結果
  傾向は前年とほぼ同様であって、ダイセン水和剤及び6-6式石灰ボルドー液は相伯仲して効果を示し、キヤプタン剤、銅水和剤もこれについて防除効果を示している。
 3. 昭和33年度における結果
  銅剤が最も効果的であって、有機硫黄剤がこれについで効果顕著であるが、本年は前年度と異なりキヤプタン剤の効果が見られなかった。

  昭和31年度成績
  1) 新農薬数種を供試して1区15坪の2連制とし7月29日、8月10日および8月28日の3回散布を行って次の様な結果を得た。 
  草丈(cm) 分枝数   葉数 発病葉率 発病程度 同標準比(%) 生草重(kg) 同標準比(%)
標準無散布区 85.4 19 93 94.5 79.6 100 1811 100
フミロン錠 85.8 19 86 90.5 67.2 84 2269 125
PS粉剤 92.8 20 115 67.0 51.3 64 2352 130
6-6式石灰ボルドー 88.2 23 160 9.5 1.7 2 2717 150
散粉ボルドー 94.3 29 121 72.0 26.1 33 2318 128
ダイセン水和剤 94.7 26 210 6.5 1.0 1 2695 149
ダイセン粉剤 89.5 21 136 88.5 65.3 82 1744 96
CP粉剤 85.4 20 125 71.0 28.2 35 2025 112

  昭和32年度成績
  1) 1区3.3㎡の2連制とし8月19日、9月4日、9月16日の3回散布を行って次の様な結果を得た(2区平均)
    発病程度(%) 同標準比(%) 生草重(kg) 同標準比(%)
無処理区 70.0 100 46373 100
チユウラムB 45.0 64 60000 129
オルソサイド 25.0 36 61125 132
水銀ボルドーCP 83.0 102 63000 136
チユウラムA 63.0 90 61500 133
クプラビット 48.0 69 60983 132
馬鈴薯ボルドー 40.0 57 59408 128
ダイセン水和剤 18.0 26 66750 144
6-6式石灰ボルドー 20.0 29 68250 147

  昭和33年度試験成績
   発病葉率(%) 発病程度(%) 同標準比(%) 生草重(g) 乾草中(g) 乾燥比(%) 同標準比(%) 油重(g) 同標準比(%) 採脳率(%) 同標準比(%)
8月18日 9月3日 9月13日
標準無処理区 27.0 61.3 84.5 27.6 100 10090 2413 23.9 100 40.5 100 61 100
6-6式石灰ボルドー 25.2 58.5 80.6 14.5 53 8018 1957 24.4 102 51.0 126 61 100
銅水和剤 A 22.4 54.2 72.3 11.5 42 8338 1982 23.8 100 44.8 111 65 107
 〃     B 23.2 57.4 71.5 14.7 53 9092 2181 24.0 100 41.5 102 65 107
 〃     C 31.6 58.3 78.3 19.3 70 9580 2350 24.5 103 53.0 131 61 100
ジネブ水和剤 23.7 56.8 81.1 18.3 66 8493 2119 24.9 104 44.0 109 61 100
フアーバム水和剤 22.5 54.7 75.1 16.7 61 9395 2275 24.2 101 46.0 114 64 105
キヤプタン水和剤 26.4 59.9 80.4 23.3 84 9240 2225 24.1 101 43.0 106 61 100
ジクロンチュウラム水和剤 35.5 66.3 83.2 21.6 78 8572 2075 24.2 101 38.5 95 64 105
ああ発病程度ああ F 9 (0.01) 3.60 あああ F 9 4.31**
18 18

 

Ⅳ. 考察
 ハツカ銹病に対しては石灰ボルドー液の効果が古くから認められていたものであって、供試した新農薬では安定して石灰ボルドー液に勝っているものがない。
 しかし、石灰ボルドー液に比べて使用の容易な点において、しかも石灰ボルドー液とほぼ同等の防除効果を有するものとしては銅水和剤及び有機硫黄剤(ヂネブ剤)であって、防除剤として十分に使用し得るものと認められる。