【普及奨励すべき事項】

焦性亜硫酸曹達添加サイレージの調製について
 B. 1957年における基礎試験

北海道農業試験場畜産部牧野研究室

 

 1956年における小型サイロによる試験において一応のSMSの効果が認められたので、今回は実際農家における規模に拡大しつぎのような方針のもとに実験を進めた。すなわち

 1) 諸条件下におけるSMS添加サイレージの品質向上性と経済効果
 2) SMS添加サイレージの家畜に対する嗜好性、消化性及び栄養価
 3) SMSの適切な使用法の解明

 これらのためにトレンチサイロ、塔型サイロ別SMS使用法と添加効果、乳牛及び緬羊による嗜好性と消化性及び若干箇所における現地試験を行った。

 

(実験第1) ビニールトレンチサイロによるサイレージの調製

 目的 : トレンチサイロを用い対照無処理、5%ふすま添加、US-SMS 0.4%、J-SMS 0.4%の4処理による添加処理を行い、その効果を酸組成、嗜好性、栄養価及び消化率から検討す
       る。

US-SMS 米国 MONSANT.Chem.Co.製 Meta-green
J-SMS 国産 三菱商事扱 Daiya-green

 

1. 実験方法
 (1) 原料牧草の状況
   刈取り圃場は畜産部26号用地で更新2年目の牧草地である。6月19日、午前中トラクターモアーにより刈取りを行ったが、平均収量は3200kgであった。

  第11表 原料草の植生状況
草種 割合(%) 生育時期 草丈(cm) 刈取時
水分(%)
赤クロバー 64.2 1/20開花期 85(70~90) 83.1
チモシー 28.2 穂孕み期 85(70~85) 80.1
ラデノグロバー 5.6 開花期 85(20~30)
野草 2.6 出穂期

 牧草は生育極めて良好であり、赤クロバーは開花1/20であり、チモシーも穂孕み期で牧草の利用としては望ましい早刈りのものである。

  第12表 刈取時の混合サンプルの一般組成(%)
区分 水分 粗蛋白質 粗脂肪 NFE 粗繊維 粗灰分
生草   82.7 2.4 0.8   7.8 4.9 1.4
無水物 - 13.6 4.7 45.6 28.0 8.1

 (2) 供試サイロ
   サイロビニールを常法により用い上巾150cm、下巾120cm、深さ150cm、長さ30cmの標準サイロ4基を用いた。
 (3) 埋草処理法
   原料草は圃場で午前10時刈取り後すぐヘイレーキで集草を行い台馬車にて1晩積み置きを行い、翌朝切込みを行った。この間原料に若干の醗酵が認められた。埋草にあたっては原
  料を1.0cmに細切を行いふすま添加区は常法によりカツターブロワーの穴より吸引せしめ均等な混合を計り、SMSの添加にたってはイルリガートルを飼養してカッター喰込口より原料に
  均一な添加を行った。
 (4) 成牛による嗜好試験
   成牛8頭を用いて2頭あて4グループとし4処理サイレージを4反覆した Latin Square design によった。
  試験は埋草後50日を経過した8月11日より開始した。試験開始後5日間に予備として各ブループには混合サイレージを給与し、その後1期7日間として更に7日のうち2日を移行期の予
  備期とした。また各期の最終日は飽食試験を行った。また各試験期の2日間は採食速度試験を行った。すなわち朝5時30分に各組の該当サイレージ15kgを給与し、30分後における採
  食量を測定した。

  第13表 供試牛
グループ 牛名 体重(kg)
ヘンドリツクロメオドラークヰーン 680
ヘンドリツクローズロメオバーク 595
クヰーンセジスルンドダビソン 570
第2ヘンドリツクロメオルンドダビソン 623
セジスポンチヤツクアイコールカンナ 518
アイコールヘンドリツクグローリー 580
クヰーンセジスロメオルンドダビソン 557
ルンドダビンアスター 522

   給与飼料は1日1頭当り草サイレージ50kg、1番刈雑草4kg、配給飼料3.7kgを1日3回給与とした。その他管理は畜産部常用管理法に従った。配合飼料は米糠35、ふすま40、コプラミー
  ル10、亜麻仁粕10、燕麦5、食塩2、コロイカル1の配合である。

 (5) 若牛による嗜好成績
   若牛4頭を用い、2頭ずつ2グループとしたが、双生児で体重平均212kgのものである。試験は第1期はJ-SMSと無処理サイレージ、第2期は無処理サイレージとふすま添加サイレージ
   の比較を行ったが方法は成牛に準じた。給与飼料は1日1頭当たり草サイレージ8kg2番乾草自由採食、配合飼料500とし、脱脂乳給与は畜暗部慣行給与法に準じた。
 (6) 消化試験
   2歳の去勢牡羊3頭を用い、対照無処理サイレージとJ-SMSサイレージについて行った。両サイレージとも5日間の予備期後7日間の Total collection 法により行った。
   緬羊は消化試験箱に繋留し1日1頭当り4kgのサイレージと200gの燕麦を給与し朝、夕2回にわけた。供試緬羊は平均40.7kgの体重であり、試験前にフェノチャジン給与による駆虫を
   行った。試験は8月14日より開始した。

 

2. 実験成績
 (1) サイレージの品質

  第14表 各処理別サイレージの品質*
区分 記号 添加量(%) 色沢及び香気 PH 酸組成(%)
総酸 不揮発酸 揮発酸
US-SMS A 0.4 緑オリーブ色、スイートな新鮮草臭   5.0   0.68
(100)
0.56
(82)
0.12
(18)
J-SMS B 0.4 緑オリーブ色、スイートな新鮮草臭 5.3 0.69
(100)
0.62
(90)
0.07
(10)
ふすま C 5.3 褐黄緑色、甘酸良臭 4.4 1.40
(100)
1.00
(71)
0.40
(29)
対照 D - 褐黄色、甘酸小刺激臭 5.0 1.23
(100)
0.77
(63)
0.46
(37)
  ※ 各サイロ上、中、下3ヶ所の平均

 (2) サイレージの栄養組成及び Spoilage 量

  第15表 原料、サイレージの一般組成及び損失量*
区分 Bag sample
の重量変化
(g)
一般組成(原物中%) Spoilage
(%)
水分 粗蛋
白質
粗脂肪 NFE 粗繊維 粗灰分
US-SMS 原料 2000   78.2   2.9 1.0   10.2 5.3 2.4 7.8
サイレージ 2034 78.9 3.1 1.3 9.2 5.3 2.2
J-SMS 原料 2000 77.5 3.1 1.0 10.5 5.7 2.2 7.8
サイレージ 2029 78.2 3.1 1.6 9.2 5.6 2.3
ふすま 原料 2000 78.6 3.1 0.9 9.7 5.7 2.0 4.4
サイレージ 1997 78.8 3.2 1.8 8.6 5.6 2.0
対照 原料 2000 77.5 3.3 0.9 10.0 6.1 2.2 4.0
サイレージ 2045 78.2 3.2 1.6 8.8 6.0 2.2
  ※ 各サイレージ3点の平均

 SMSサイレージは酸量低く、PHが高いためと特に夏季高温時の取り出し及びSMSの十分なる均等混合ができなかったためか、SMSの混入不足と思われる部分やサイロの隅の部分に損失がみられた。しかしSMSのこれら高い Spoilageは1957年の桶サイロ及び現地試験、1958年の基礎試験において
  ① 取り出し時は高温の時期をはずすこと
  ② 1日の取り出し量を多くすること
  ③ 添加量を0.5%に増加し、その他の増量剤を加え均一に添加することなどによって十分予防されることが明らかに示された。

 (3) SMSサイレージと乾草の栄養価

  参考第1表 茎葉割合
区分 原料 自然乾燥
植生(%) 葉(%) 茎(%) 植生(%) 葉(%) 茎(%)
赤クロバー 58.8   21.9   78.1 62.5   11.7   88.3
チモシー 34.2 20.5 79.5 37.5 18.0 82.0

  参考第2表 SMS サイレージと乾草の成分
区分 水分 一般組成(無水物中%)
粗蛋
白質
粗脂肪 NFE 粗繊維 粗灰分
SMSサイレージ   78.5   14.4
(127)
6.9   42.4 25.6 10.7
自然乾燥 22.5 11.1
(100)
3.3 43.3 36.7 5.4

  自然乾燥では赤クロバーの葉の損耗が多いことが示され、同時にSMSサイレージと比較すれば蛋白質含量は低く、逆に繊維が高かった。

 (4) 処理別サイレージの嗜好性
  (A)  成牛
  第16表 成牛による菜食速度*
区分 対照
サイレージ
ふすま
サイレージ
J-SMS
サイレージ
US-SMS
サイレージ
1頭30分間
当りの
採食量(kg)
  1組 10.3 13.9 12.5 16.7
2組 10.5 14.5 12.4 15.8
3組 6.2 12.4 11.9 13.4
4組 11.5 13.0 13.4 13.3
平均 9.6 13.5 12.6 14.8
1分間当採食量(g) 320
(100)
450
(140)
420
(131)
493
(154)
  ※  試験開始時、平均体重581kg、終了時605kg(平均)通常50kg給与、飽食時各サイレージ70~75kg採食

  (B) 若牛
  第17表 若牛による採食速度*  
区分 第1次 第2次
対照
サイレージ
J-SMS
サイレージ
対照
サイレージ
ふすま
サイレージ
2頭平均30分
当の採食量(kg)
3.4 5.0 4.8 5.6
1分間当採食量
(g)
113
(100)
166
(147)
160
(100)
186
(116)
  ※ 試験開始時平均体重 212kg、終了時 237kg
     通常試験日は8~11kg給与し残食なし
     飽食試験15kg、給与し残食なし

 (5) 対照サイレージとSMSサイレージの消化性
  第18表 両サイレージの平均消化率
試験羊 区分 固形量 粗蛋
白質
粗脂肪 NFE 粗繊維
対照
サイレージ
1号羊 57.1   54.5 75.4   61.9 54.3
2号羊 58.3 60.1 84.4 61.4 54.6
3号羊 52.9 46.8 76.7 51.0 52.8
平均 56.1 53.8 78.8 58.1 53.9
J-SMS
サイレージ
1号羊 58.8 63.7 86.2 61.8 50.9
2号羊 60.4 70.0 86.2 61.7 53.6
3号羊 53.2 55.2 82.2 56.0 46.6
平均 57.4 62.9 84.8 59.8 50.4

  対照サイレージに対し J-SMSサイレージは全般的に良好な消化性を示し、特に粗蛋白質、粗脂肪の消化が良好のようであった。

  第19表 処理別サイレージの栄養組成
サイレージ 原物中% 無水物中(%)
DCP TDN DCP TDN
SMS   1.9   12.5   8.9   58.6
ふすま 1.9 13.0 8.9 61.3
対照 1.7 12.8 7.8 58.7

 

    

(実験第2) SMSと慣行塩化物の併用添加効果及びSMS添加量とサイレージ品質について

 目的 : 小型サイロを用いSMSの添加量及び糟糠類などの併用による効果を酸組成及び栄養価などから解明しようとした。 

1. 実験方法
 (1) 原料牧草の状況
   6月21日に実験第1と同一原料を刈り取り、直ちに運搬しカッターで1.0cmに細切した。
 (2) 使用サイロ
   1956年における試験用桶サイロを慣行法によりサイロビニールを用いた。
 (3) 埋草法
   細切原料は均一に混合し20kgずつ秤量の上該当添加物を十分混合して埋草した。
 (4) 供試緬羊及び嗜好調査
   畜産部飼養中のコリデール羊中より当歳牡緬羊20頭を選出し供試した。体重は42~49kgで平均45.5kgであった。嗜好性は9月26日開始し4種ずつのサイレージを2期に分けた。
   5日間の予備期と5日間の本試験期とした。その他給与飼料は朝・夕2回に各サイレージを20kgずつと1日1頭当たり250gの配合飼料(燕麦10、ふすま10、麦糠5)を与え、更に2番草を
   1日1頭当たり0.5kg給与した。

2. 実験成績
 (1) サイレージ品質
   第20表に各サイロに処理、第21表にサイレージ外観及び酸組成と栄養組成を示した。処理法としては無処理対照、SMS 0.2%、SMS 0.4%とSMS 0.8% (倍量)、SMS 0.2%+5%ふすま、
   SMS 0.4%+5%ふすまに原料に加水してSMSを 0.4%添加したものを作成した。

  第20表 埋草処理
サイロNo. 埋草量
(kg)
添加物
1 500 加水、SMS 0.4%、排水なし
2 500 加水、SMS 0.4%
3 450 SMS 0.2%
4 450 SMS 0.4%
5 450 SMS 0.8%
6 450 ふすま 5%、SMS 0.2%
7 450 ふすま 5%、SMS 0.4%
8 450 なし

  第21表 処理別サイレージの品質
分析No. サイロNo. 処理 色沢及び香気 PH 酸組成 上部の
損失(kg)
区分 一般組成(無水物中%)
 総酸  不揮
発酸
揮発酸  水分  粗蛋
白質
粗脂肪 NFE 粗繊維 粗灰分
1 8 無処理 褐黄色
甘酸刺激臭
  4.3   1.17
(100)
  0.66
(56)
0.51
(44)
25.0 原料
サイレージ
  79.8
79.6
12.3
12.0
4.4
5.7
 46.9
41.5
26.5
31.5
9.9
9.3
2 3 SMS 0.2% 暗緑黄色
甘酸なるもアンモニア臭
4.9 0.98
(100)
0.48
(49)
0.50
(51)
10.0 原料
サイレージ
72.6
73.3
12.4
10.9
4.6
5.1
47.5
43.9
23.9
28.2
11.6
11.9
3 4 SMS 0.4% 新鮮草色
スイートな新鮮臭
4.9 0.47
(100)
0.38
(82)
0.09
(18)
13.0 原料
サイレージ
79.6
81.4
12.3
12.7
4.3
5.3
47.6
41.4
25.5
29.1
10.3
11.5
4 5 SMS 0.8% オリーブ色
スイートな新鮮臭
4.8 0.62
(100)
0.50
(80)
0.12
(20)
15.0 原料
サイレージ
78.5
80.9
12.6
12.7
5.6
5.2
46.3
42.2
24.1
27.4
11.4
12.5
5 6 SMS 0.2%、ふすま 5% 黄緑色
甘酸
4.8 1.25
(100)
0.80
(64)
0.45
(36)
10.0 原料
サイレージ
79.0
81.5
12.3
10.7
5.3
8.2
47.2
44.9
26.1
26.0
9.1
10.2
6 7 SMS 0.4%、ふすま 5% 黄緑オリーブ色
甘酸快臭
4.6 1.14
(100)
0.96
(84)
0.18
(16)
7.0 原料
サイレージ
76.0
77.8
12.8
12.8
5.1
6.5
48.2
46.8
24.7
24.7
9.2
9.2
7 1 SMS 0.4%、加水 緑淡黄色
甘酸芳香
5.4 0.42
(100)
0.34
(80)
0.08
(20)
14.0 原料
サイレージ
78.4
83.9
13.5
12.7
4.3
6.0
49.0
46.5
24.1
29.5
9.1
5.3
8 2 SMS 0.4%、加水 緑淡黄色
甘酸芳香
5.3 0.40
(100)
0.33
(82)
0.07
(18)
14.0 原料
サイレージ
81.7
81.6
12.6
11.5
4.4
5.8
48.0
46.1
24.0
26.5
11.0
10.1

 SMS 0.4%またはそれ以上添加したサイレージは従来の成績の如く緑色多く、スイートな新鮮草臭を有したが、0.2%では暗緑色でアンモニア臭を有した。
 一方SMS 0.4%に5%のふすもの併用添加はサイレージの品質を著しく改善することが示され、SMS 0.2%添加のものでは蛋白質含量が低いことが示された。

 (2) サイレージの嗜好性

  第22表 SMS 添加量とサイレージの嗜好*
区分 5日間延
採食量kg(%)
30分間
食彩量kg△
採食頭数
 5分 10分 15分 20分 25分 30分  計 
対照 153.6
(82.7)
6.7 8 4 5 6 3 4    30
0.2% 160.9
(87.0)
7.6 3 4 3 1 3 2 16
0.4% 173.1
(93.6)
10.5 4 5 6 6 8 5 34
0.8% 174.3
(94.2)
15.4 5 6 6 7 3 7 34
  ※ 1日各サイレージ40kg 延200kg給与
  △ 各サイレージ20kg給与、合計採食量から算出し1日1頭当り 6.6kg採食

  第23表 SMS とふすまの併用添加サイレージの嗜好
区分 5日間延
採食量kg(%)
30分間
食彩量kg△
採食頭数
 5分 10分 15分 20分 25分 30分  計 
SMS 0.4%、加水(排水) 119.4
(59.7)
2.8 3 1 2 2 2 2    12
SMS 0.4%、加水 179.4
(89.7)
3.2 1 2 2 2 1 1 9
SMS 0.2%、ふすま 5% 168.8
(84.4)
1.3 0 0 0 1 1 1 3
SMS 0.4%、ふすま 5% 196.5
(98.3)
8.7 14 14 15 12 11 8 74

 SMS添加量別サイレージの嗜好性では、延採食量については添加量ともに嗜好性が増加し、また30分当りの採食速度でも同様であった。また併用添加試験サイレージでは特にSMS
 0.4%に5%ふすま添加サイレージが極めて良好な嗜好性を示した。

 

 

(実験第3) 塔型サイロによるサイレージ調製

 目的 : 塔型サイロを用い、SMS添加によるサイレージ調整法とその効果を明らかにしようとした。

1. 実験方法
 (1) 原料草の状況
   刈り取り圃場は畜産部26号用地で実験1、2に用いた牧草に同一草地の2番刈りである。8月26日モーアにより刈り取りを行った。平均10a当り1785kgの草量である。

  第24表 原料草の状況
草種 割合(%) 生育時期 草丈(cm) 刈取時
水分(%)
赤クロバー 53.3 開花後期 75 80.6
チモシー 27.3 出穂開花 90 72.2
ラデノクロバー 6.1 開花期 20 -
エゾノギシギシ 13.3 出穂期 80 -

 原料は適期より約2週間刈遅れの原料であり、詰込時の原料は淡褐緑黄色を呈した。

  第25表 原料草刈取時の成分(%)
 水分 区分  粗蛋
 白質
粗脂肪 NFE 粗繊維 粗灰分
無水物中
(%)
赤クロバー 66.8 6.0   40.0 29.7 7.5
チモシー 9.4 5.6 47.2 31.1 6.7
混合 12.9 6.6 42.0 30.7 7.8
原物混合  78.6 2.8 1.4 8.9 6.6 1.7

 (2) 埋草処理法
   原料は予乾せず、カツターで1.0~1.5cmに細切し刈り遅れであったので0.6%添加した。牧草を切り込みながら、SMS添加中はサイロ内に人は入らず平均50cm埋草毎にSMS添加と牧
  草の切り込みを中止し、カツターのみを空転した空気を喚流し5人が10分間原料を均しながら十分に踏付を行った。
   埋草後は常法によりサイロビニールを被覆し、その上に莚をあげ屑草を3寸詰め込んだ。埋草後は10日間3人で20分づつ踏付を行った。埋草量は6.9屯である。
 (3) サンプル採取
   Bag sample method によって 1500kg入り5ヶを用い常法により行った。
 (4) 添加 SMS
   下部1/3は J-SMSを用い、上部2/3は US-SMSを用いた。

2. 実験成績
 (1) サイレージの品質

  第26表 サイレージの品質
Bag 処理 色沢及び香気 PH 酸組成 区分 一般組成(無水物中%)
総酸  不揮
発酸
揮発酸  水分  粗蛋
白質
粗脂肪 NFE 粗繊維 粗灰分
5 US-SMS 褐黄色
甘酸刺激臭
  4.8   1.38
(100)
0.98
(70)
0.41
(30)
原料
サイレージ
 62.7
64.8
15.3
15.8
3.4
2.8
 42.2
41.5
30.9
29.9
8.2
10.0
4 US-SMS 暗緑黄色
甘酸なるもアンモニア臭
5.3 0.69
(100)
0.62
(90)
0.07
(10)
原料
サイレージ
67.7
63.6
16.6
16.4
3.7
3.2
40.1
39.9
28.5
32.5
11.1
8.0
3 US-SMS 新鮮草色
スイートな新鮮臭
4.6 1.41
(100)
1.02
(72)
0.39
(28)
原料
サイレージ
67.7
64.9
15.2
14.3
2.9
3.0
42.1
42.8
30.3
31.0
9.5
8.9
2 J-SMS オリーブ色
スイートな新鮮臭
5.3 0.83
(100)
0.74
(89)
0.09
(11)
原料
サイレージ
67.9
66.2
15.6
15.5
3.1
3.9
42.1
42.4
28.1
28.5
11.1
9.7
1 J-SMS 黄緑色
甘酸
5.2 0.84
(100)
0.79
(94)
0.05
(6)
原料
サイレージ
55.9
56.0
16.9
16.3
4.3
3.5
42.5
48.2
26.4
23.1
9.9
8.9
平均    黄緑オリーブ色
甘酸快臭
5.0 1.03
(100)
0.83
(80)
0.20
(20)
原料
サイレージ
64.4
63.1
15.9
15.6
3.4
3.4
41.9
42.9
28.8
29.0
10.0
9.1

  原料草は刈遅れと晴天による予乾現象が伴い埋草時は水分64%と低く、かつ緑色が少なかったため、でき上がりサイレージは淡緑黄褐色であった。香気は甘酸なる芳香を有した。
  平均PH5.0で総酸1%、そのうち揮発酸は20%を占めていた。また、第27表に示すようにサイロ上層部は最高50℃を示し、原料水分不足と刈り遅れによりSMSの十分なる効果は示されな
  かった。

  第27表 埋層後の変化
埋草日数 原料
沈下(m)
温度(℃) 踏圧
作業時間
0 4.7 28 -
1 4.4 45 4人 30分
2 4.3 50 5人 10分
3 4.1 43 6人 10分
4 4.1 42 2人 30分
5 4.1 40 3人 20分
6 4.1 39 3人 20分
7 4.0 38 2人 25分
8 4.0 38 2人 20分
9 4.0 35 2人 20分
30 4.0 27 -

 (2) サイレージの嗜好性
   サイレージは10月10日より11月20日まで成牛1日1頭当り(放牧中の乳牛)15kgを給与したが良好な採食が示された。また乳牛に対する特別の異常は認められなかった。

 

 

(実験第4) 1957年における現地応用試験

 目的 : 2ヵ年間の基礎試験において一応の調製法および効果が明らかに示されたので道内4ヶ所で現地試験を行い、その実用性を検討した。

1. 実験方法
 (1) 原料
   原料にはビートトップとルタパカを用いた。
 (2) 詰め込み方法
   サイロは塔型およびトレンチサイロで常法によりサイロビニールを使用した。原料はすべてカッターにより1.0~2.0cmに細切し、J-SMSを用いた。またSMSと慣行添加物の併用効果を
  も検討した。原料は秤量のうえ所定量の添加物と十分混合した。

2. 実験結果

  第28表 現地試験における原料状況とサイレージ品質
試験地 使用サイロ 添加物 色沢及び香気 PH 酸組成(%) 一般組成 詰込み
原料
 総酸 不揮発酸 揮発酸  水分 粗蛋白質 粗脂肪 NFE 粗繊維 粗灰分
新得種畜場 コンクリートトレンチサイロ
底部なし
サイロビニール使用
        (1.2屯)
原料
 
88.0 3.3 0.7    5.3 1.3 1.4 ルタパカ茎葉100%
SMS 0.7%、ふすま 7.5% 完全緑色保持
新鮮草臭
  5.5 1.13
(100)
0.91
(80)
0.22
(20)
76.7 4.4 1.2 12.2 2.5 3.0
ふすま 7.5% 暗緑黄色
甘酸なる芳香
4.5 1.67
(100)
1.46
(87)
0.21
(13)
81.5 3.7 1.2 8.9 2.5 2.2
米糠 7.5% 暗緑黄色
甘酸芳香
4.7 1.41
(100)
1.25
(87)
0.16

(11)

83.5 3.3 1.2 8.0 2.1 1.9
滝川種畜場 小型ビニールトレンチサイロ
        (0.2屯)
原料
 
87.4 2.8
(22.5)
0.2 5.2 2.0 2.4 ビート茎葉100%
SMS 0.5% 暗緑色
甘酸新鮮草臭
5.4 0.38
(100)
0.30
(79)
0.08
(21)
84.0 3.2
(18.2)
0.7 6.4 2.4 3.5
ふすま 5%、米糠5% 暗緑色
甘酸刺激臭
5.7 0.48
(100)
0.46
(96)
0.02
(4)
82.3 3.2
(18.2)
0.4 8.8 2.1 3.2
北見 ビニールトレンチサイロ
底なし
サイロビニール使用
        (3.0屯)
原料
 
86.8 1.7 0.2 8.4 1.7 1.2 ビート茎葉100%
2日 予乾
燕麦 1.4%、SMS 0.35% 緑黄色
甘酸新鮮草臭
4.9 0.71
(100)
0.64
(90)
0.07
(10)
79.6 2.2 0.7 11.0 2.5 4.0
燕麦 1.4% 暗褐緑黄色
甘酸良臭
4.2 1.24
(100)
0.95
(77)
0.29
(23)
80.5 2.5 0.7 10.8 2.4 3.1
弟子屈
拓殖実習所
9×12尺
塔型サイロ
サイロビニール使用
原料
 
89.3 1.7
(15.8)
0.1 6.1 1.4 1.4 ビート茎葉90%
乾牧草10%
SMS 0.5% 緑黄色
甘酸新鮮草臭
4.1 1.44
(100)
1.17
(81)
0.27
(19)
76.8 3.2
(13.8)
1.7 10.1 4.1 4.1