【普及奨励すべき事項】

焦性亜硫酸曹達添加サイレージの調製について
 C. 1958年における基礎試験

北海道農業試験場畜産部牧野研究室

 

 1956年の小規模な基礎試験および1957年における広汎な基礎および若干のSMS添加法および長期給与効果について問題が残されたので基礎試験を行った。すなわちこれらのために桶サイロおよび小型ビニールトレンチサイロによるSMSの添加法の検討および大型ビニールトレンチサイロによる調製と緬羊による大型給与試験を行った。

 

  

(実験第1) 桶サイロ及びビニールトレンチサイロによるSMS添加法とSMSサイレージ品質

 目的 : 2番刈牧草を用い対照無処理、SMS屯5kg板状添加の処理を行い、その品質を検討した。

1. 実験方法
 (1) 原料草の状況
   刈取圃場は畜産部18号用地で2番草である。8月11日午前10時 John deer の Forage haruester により刈取り、細切を行い運搬した。平均収量は平均836kgである。

  第29表 原料草の状況(二番刈草)
草種 割合(%) 生育時期 草丈(cm)
オーチャードグラス 74.5 生育期 70
白クロバー 15.8 開花期 25
赤クロバー 9.1 開花期 42
野草 0.6

  第30表 原料草の一般組成(%)
区分 水分 粗蛋白質 粗脂肪 NFE 粗繊維 粗灰分
原物   78.1 3.2 1.0   8.8 6.5 2.4
無水物   14.7 4.5 40.1 30.0 10.7

 (2) 供試サイロ
   第1編、第2編の実験に用いた桶サイロ、小型トレンチサイロは上巾3.0尺、下巾2.0尺、深さ3.5尺、長さ3.2尺で常法により使用した。
 (3) 埋草方法
   Forage haruester により圃場運搬し、混合の上実験2と同様の方法により埋草した。
 (4) 埋草処理

  第31表 サイロ埋草処理
サイロNo. 使用サイロ 埋草量(kg) 処理
1 300 無添加
2 300 SMS 屯5kg 均等添加
3 300 S.G  屯5kg 均等添加
4 300 SMS 屯5kg 均等添加、加圧なし
5 ビニールトレンチ 320 SMS 屯5kg 層状添加
6 ビニールトレンチ 320 SMS 屯5kg 板状添加

2. 実験成績
 (1) サイレージのPHおよび酸組成

  第32表 サイレージの処理別酸組成
サイロNo. 処理 区分 色沢及び香気 PH 酸組成(%)
総酸 不揮発酸 揮発酸
1 対照 褐黄緑色
甘酸なるも少刺激臭
 5.2 0.75
(100)
0.54
(72)
0.21
(28)
2 SMS 5kg均等 淡褐緑黄色
少甘酸臭を有する新鮮草臭
5.3 0.52
(100)
0.47
(91)
0.05
(9)
3 S.G 5kg均等 淡褐緑黄色
甘酸にして新鮮草臭に乏し
5.4 0.48
(100)
0.34
(71)
0.14
(29)
4 SMS 5kg均等
加圧なし
同上 5.5 0.63
(100)
0.60
(95)
0.03
(5)
5 SMS 5kg 層状 SMS 1/2層
SMS 2倍層
淡褐黄色、甘酸対刺激臭
淡緑黄色、甘酸臭
5.7
4.7
0.72
0.85
0.62(86)
0.71(84)
0.10(14)
0.14(16)
6 SMS 5kg 板状 SMS 板状
SMS 無添加
橙黄緑色、甘酸SO2臭大
褐黄緑色、甘酸刺激臭大
4.7
5.1
2.50(100)
0.66(150)
1.83(74)
0.39(60)
0.67(26)
0.27(40)

 (2) サイレージ、原料の栄養

  第33表 処理別原料およびサイレージの一般組成
サイロ別処理 区分 一般組成(原物中%)
水分 粗蛋
白質
粗脂肪 NFE 粗繊維 粗灰分
1 対照 原料   78.8   19.1 5.3   37.6 28.5 9.5
サイレージ 78.3 17.3 6.7 33.7 30.5 11.8
2 SMS 常法 原料 76.0 18.1 5.7 39.1 26.0 11.1
サイレージ 77.9 17.4 6.6 37.1 28.3 10.6
3 S.G 常法  原料 74.2 18.7 5.4 42.2 28.3 5.4
サイレージ 75.5 18.1 5.9 38.2 28.0 9.8
4 SMS、常法
  加圧なし
原料 79.3 17.7 5.0 39.7 25.8 11.8
サイレージ 79.1 18.7 5.1 39.9 25.8 10.5
5 SMS 層状 原料 75.2 16.9 5.1 40.8 26.5 10.7
サイレージ 76.6 16.6 6.4 37.0 27.6 12.4
6 SMS 板状 原料 76.3 17.4 5.3 38.8 28.0 10.5
サイレージ 76.0 16.6 5.4 42.5 25.5 17.0

 これらサイレージは埋草後76日目の10月6日に12cmの取り出しを行ったが変質はみられなかった。

 

 

(実験第2) トレンチサイロによるサイレージ調製並びに緬羊による長期給与試験

 目的 : トレンチサイロに2番刈草を用いSMS調製試験を行うとともに、緬羊を用い良質粗飼料特に通風乾草とSMSサイレージの給与による生産性および経済を検討するとともに長期
       SMSサイレージ給与の影響について検討した。

1. 実験方法
 (1) 原料草
   実験第一と同一原料草を使用した。SMSは屯当り5kgを Forage harvester の細切、切込み口より均一に投入し混合した。
 (2) 使用サイロ
   ビニルトレンチサイロで上巾150cm、下巾120cm、深さ120cm、長さ600cmで450立方尺のもの2基作成し各々5屯常法により埋草した。
 (3) 供試緬羊
   畜産部繋養中のコリデール緬羊より1957年産当才を10頭選定し、A、B両区に分けた。なお本試験は1958年5月15日より開始されたもので今回の実験もその一環である。すなわち
  5月より10月までは両区緬羊とも濃厚飼料なしで放牧を行い、A区は追肥草地、B区は無追肥草地に放牧し、緬羊の追肥による放牧効果を検討すると共に、11月より舎飼い期において
  はA区緬羊は良質草類のみの給与とし、B区は慣行管理による1番乾草、デントコーンサイレージ濃厚飼料給与となしたものである。
 (4) 体重測定
   15日ごとに一定時刻に測定した。
 (5) 舎飼後の給与飼料
   飼料給与にあたっては、午前9時と午後3時30分の2回とし、飲水は自由とし、その他「コーエン」を自由に与えた。

  第34表 1日1頭当り平均採食量
区分 A区1日
1頭当り
B区1日
1頭当り
SMSサイレージ 2.0
デントコーンサイレージ 1.5
1番乾草 1.0
2番乾草 1.7
配合飼料※ 0.5
  ※ 燕麦6、ふすま2、麦糠2の配合

2. 実験成績
 (1) ビニールトレンチサイロによるSMSサイレージの品質

  第35表 サイレージの酸組成
区分 色沢及び香気  PH 酸組成
 総酸 不揮
発酸
揮発酸
1 淡黄緑色
スイートな甘酸
5.3   0.47
(100)
  0.43
(91)
0.04
(9)
2 褐緑黄色
スイートな甘酸
5.6 0.47
(100)
0.42
(89)
0.05
(11)
2 淡緑黄色
甘酸新鮮草臭
5.1 0.62
(100)
0.57
(92)
0.05
(8)

 (2) サイレージの栄養価
  第36表 サイレージの一般組成(原物中%)
区分 水分 粗蛋
白質
粗脂肪 NFE 粗繊維 粗灰分
1   77.1   4.2 1.4   8.9 5.9 2.5
2 77.5 4.2 1.5 8.5 5.8 2.5
3 78.1 3.6 1.3 8.1 6.2 2.7
平均 77.6 4.0 1.4 8.4 6.0 2.6
  DCP=2.5  TDN=13.4

 SMS 屯当り5kg添加して2番牧草をビニールトレンチサイロに埋草したが、淡緑黄色を有し、甘酸なる新鮮草臭を有しPH5.3、総酸0.5%で揮発酸10%前後の良好なサイレージが得られた。

 (3) 緬羊による長期給与試験
   給与飼料のくわしい分析は目下取り纏め中であるが概要次のような成分であることが道内生産飼料分析より推定された。

  第37表 飼料成分
区分 DCP TDN
デントコーンサイレージ   1.0   15
配合飼料 10.0 60
1番乾草※ 3.0 45
通風2番乾草 9.0 47
SMS サイレージ 2.5 13.5
 ※ オーチャード乾草

 すなわちA区緬羊は1日1頭当り、200gのDCPと計1000gのTDN、B区では100gのDCPと1000gのTDNを摂取していることが知られた。

  第38表 両放牧地の月別草量植生 ※
区分 5月 6月 7月 8月 9月 10月
A追肥放牧地 10a当収量kg 885 1500 1100 1250 918 137
植生% 荳科   51.7   43.3   6.0   70.1   68.3   70.0
禾本科 39.3 46.9 37.5 23.0 28.5 27.0
野草 9.0 9.8 2.5 6.9 3.2 3.0
B無追肥放牧地 10a当収量kg 125 335 305 285 88 42
植生% 荳科 12.0 6.0 12.6 12.6 12.0 20.0
禾本科 47.5 34.5 6.5 0.9 10.4 10.1
野草 40.5 59.5 80.9 86.5 77.6 69.9
 ※ 月刈プロテクトケージによる

  第39表 追肥による緬羊の放牧効果(ha当)
区分 A追肥 B無肥
延放牧頭数 5158(287) 1796(100)
平均1頭増体(g) 70(184) 38(100)
放牧期間中平均1頭増体(kg) 11.4 5.8
延放牧による増体(kg) 361.1(529) 68.2(100)
1日1頭乾草消費(kg) 0.4 0.7
期間中1頭平均羊毛伸度(mm) 7.07±0.57 C=81.1% 6.77±1.06 C=15.7%

 また放牧効果では延放牧による頭数ではA区 2.9倍また1日増体重も良く、延放牧による増体量では5.3倍も多かった。

  第40表 供試緬羊の体重変化
  A区
放牧
B区
放牧
放牧期 準備期 舎飼期
月/日 5.15 5.29 6.13 6.27 7.12 7.28 8.12 8.28 9.13 9.29 10.13 10.23 11.4 11.19 12.4 12.19 1.5 1.19
平均体重
(kg)
A区  41.2  43.7  48.7  47.4  49.0  49.3  49.2  49.7  50.5  52.4  52.0  52.8  52.8  54.2  55.9  57.7  59.8  60.3
B区   45.0 46.5 48.5 48.1 49.4 49.0 49.7 5.6 51.0 50.6 50.8 53.8 57.5 59.0 59.4 61.0 60.5