【指導上の参考事項】

電熱温床の施設法について

北海道農業試験場農業物理部農機具第1研究室

 

Ⅰ 目的と方法

 電熱温床により育苗を行う場合、必要とする電力を能率よく活用するための構造及び地域あるいは育苗時期の気象条件と電力について試験調査を行った。電熱温床の構造は半低設型で、周囲を厚さ2.5cmの木枠で囲み、地中への熱絶縁には、燕麦桿または稲わらを1㎡当り約10kgの割合で8cm程度の厚さにしきつめた。床土は12cmの深さにした。障子には厚さ0.03mmの透明ビニールフイルムを使用した。電熱線は第1表のように敷設した。

 第1表 試験区別
番号 電力(W/㎡) 電熱線敷設
深さ(cm)
熱絶縁層の
有無
1 100 床土表面
2 100 12
3 0 -
4 38 床土表面
5 38 6
6 76 床土表面
7 76 6
8 76 12
9 100 12
10 76 6
11 76 12
12 38 6
13 0 -

 

Ⅱ 試験成績

 1. 電熱温床の構造
  電熱線の敷設深さ・熱絶縁層の有無・使用電力が3cm地温に与えた影響は第1図、第2図のとおりであった。



第1図 熱絶縁層がある場合


 第2図 熱絶縁層がない場合

 

 2. 温度効果
  電熱温床の設置Ⅰ・平方米当り電力・熱絶縁層の有無による温度効果は第2表のとおりである。熱絶縁層を設置したが、温度の上昇に役立っている。

  第2表 電熱温床の効果
区別 温度効果
熱絶縁層
有り
38 W/㎡ 地表面 0.079(H/W)
38  〃  6cm 0.184
76  〃  地表面 0.132
76  〃  6cm 0.184
76  〃  12cm 0.158
100 〃  地表面 0.110
100 〃  12cm 0.170
熱絶縁層
無し

38  〃  6cm 0.158
76  〃  6cm 0.158
76  〃  12cm 0.132
100 〃  12cm 0.140

 3cm地温を基準にして熱効果が最もよいのは、床土表面より3cm下に電熱線を敷設することであるが(第3図参照)、3cm地温の均一性を考えれば、3cmより更に地下部に敷設する方がよい。水稲の育苗試験の結果から見ると12cmよりも6cm地下に敷設した方がその生育は良かった。


 第3図 温度効果(電熱線の位置)

 

 3. 育苗に要する電力と外気温との関係
  育苗上必要とする温度を得るための電力は電熱温床を設置しようとする地域の気候に応じて決めなければならない。最低気温と必要とする床内地温(3cm)を維持するための所要電力は第4図のとおりである。


 第4図 最低気温と1㎡当り電力との関係
      -地下6cm…地下12cm

 

 4. 育苗期間に要した電力消費量
  昭和31年度、32年度における水稲育苗期間に消費した電力量を示すと第3表のとおりである。

  第3表 水稲育苗の電力消費量 KWH/㎡
   その1 昭和31年
区別 通電始めから
発芽揃まで
発芽揃後
通電中止まで
合計
電力消費量 1日平均 電力消費量 1日平均
3月31日播 6.55 1.64 20.55 0.86     27.10
4月12日播 5.40 1.80 17.30 1.23 22.70
  100W/㎡ 12cm熱絶縁層あり

   その2 昭和32年
区別 通電始めから
発芽揃まで
発芽揃後
通電中止まで
合計
電力消費量 1日平均 電力消費量 1日平均
100 W/㎡ 12cm 絶縁層有 12.60 2.10 12.37 1.24     24.97
76  〃   12cm 10.70 1.54 9.00 0.90 19.70
76  〃   6cm 9.53 1.59 8.75 0.73 18.28
38  〃   6cm 7.36 0.74 3.22 0.32 10.58
100 〃   12cm 絶縁層無 18.25 2.03 15.65 1.42 33.90
76  〃   12cm 12.62 1.58 9.58 0.87 22.20
76  〃   6cm 12.58 1.57 10.27 0.94 22.85
38  〃   6cm 7.90 0.72 4.03 0.45 11.93
  4月10播

 播種日の2~3日前から発芽揃までは連続通電を行い、発芽揃以後はほぼ3葉期まで気温に注意しながら適宜通電は中止した。しかし3葉期以後でも気温が著しく低下した場合には、通電を行った。なお育苗の温度管理は床内気温(床土面上3cm)を発芽時30℃、発芽揃までは25℃、通電中止まで20℃前後になるように調節した。