【指導上の参考事項】

ヘイコンディショナーによる牧草の乾燥促進効果について

北海道農業試験場農業物理部農機具第2研究室
  〃        畜産部         牧野研究室
  〃          〃          業務科

 

Ⅰ 目的と方法

 ヘイコンディショナーによる牧草の圧砕が乾燥調製上における乾燥所要時間、飼料価値に及ぼす効果を知るため、北海道農業試験場畜産部(豊平町月寒)において、オーチャードグラス・赤クロバー・ルーサンについて、ヘイコンディショナー処理区・無処理区を設け乾燥効果を比較調査した。

 1. 供試ヘイコンディショナーの主要部諸元
全長
(m)
全巾
(m)
ロール巾
(m)
ロール径
(cm)
ロール
歯数
ロールの歯高
(mm)
歯の噛合深さ
(mm)
  2.33   2.44 1.83  22.8  10.1   18    8 30 15~25

 2. オーチャードグラス畑の状況
  風通しの良い比較的平坦な圃場でオーチャードは開花後期にあった。植生はオーチャードを主とし白クロバー・雑草が混生していた。

 3. 赤クロバー畑の状況
  圃場の一方に防風林があり、風通しはやや不良であった。赤クロバーは開花盛期~後期でやや刈遅れの状態であった。

 4. ルーサン畑の状況
  圃場の四周に原生林があり、区画が小さく、他の試験区に比べ、日当たり・風通しが不良であった。
  植生はルーサン約70%の他チモシー・オーチャードグラス・白クロバーが混生していた。

 

Ⅱ 試験成績

 1. オーチャードグラス(1番刈)のコンディショナー処理試験中における天候及び牧草の処置
月日
(月日)
9時気温
(℃)
最高気温
(℃)
最低気温
(℃)
湿度
(%)
日照時 降水量 処理
処理区 無処理区
7.4 18.3 24.7 14.8 90 3.2 0 -
 
-
 
7.5 25.2 29.4 12.7 66 10.9 0 10時 刈取
コンディショナー処理
10時 刈取、放置
7.6 25.8 31.4 15.5 71 8.3 0 10時 テツダー
13時 サイドレーキ
16時 ベール
10時 テツダー
7.7 25.0 29.9 17.1 71 12.1 0 - 10時 テツダー
午後 サイドレーキ
午後 ベーラー

 刈取処理後の牧草の含水率の推移(%)
  7月5日 7月6日 7月7日 20%以下に乾燥する
迄に要した時間
10時 13時 16時 10時 13時 16時 10時 13時 時間
処理区  63.5  43.9  35.0  28.3  21.6  18.5     30時 58
無処理区 66.0 45.4 43.0 37.5 29.8 29.6  24.8  20.6 52時 100

 乾燥の栄養価
区分 緑度
(%)
葉部割合
(%)
栄養組成(無水物中 %)
蛋白質 脂肪 NEF 繊維 灰分
生草 - - 8.3   2.7   46.7   36.2   5.5
処理区 45 13.4 7.4 2.0 49.2 36.9 4.5
無処理区 - - 6.1 1.4 22.2 35.8 4.5

 2. 赤クロバー(1番刈)のコンディショナー処理
   試験中における天候及び牧草の処置
月日
(月日)
9時気温
(℃)
最高気温
(℃)
最低気温
(℃)
湿度
(%)
日照
降水量
(mm)
処理
処理区 無処理区
7.8 23.2 28.1 14.5 72 12.6 0 - - 
7.9 23.7 28.1 15.4 69 12.9 0 10時 刈取
コンディショナー処理
10時 刈取
7.10 24.2 26.3 15.0 69 4.8 0 16時 サイドレーキ 放置
7.11 22.7 25.4 13.4 69 8.6 1.0 放置  〃
7.12 19.5 23.9 15.8 85 7.8 0 午前 ベール調製 15時 サイドレーキ
小堆積
7.13 23.6 25.2 14.6 71 9.6 0 -
 〃
7.14 21.7 27.1 15.0 74 11.3 0 -
午前 堆積を崩して乾燥

   刈取処理後の牧草の含水率の推移(%)
  7月9日 7月10日 7月11日 7月12日 7月
16日
20%以下に乾燥する
迄に要した時間
10時 13時 16時 10時 13時 16時 10時 13時 16時 10時 13時 16時 時間
処理区  73.6  51.9  35.6  29.2  23.1  23.4  17.5  15.7  15.7  36.7  17.5 - - 75時 51
無処理区 74.7 61.7 52.9 43.0 39.4 29.1 30.9 29.7 22.5 40.9 24.5  24.5  16.0 147時 100

   乾燥の栄養価
区分 外観 栄養組成(無水物中 %)
緑度
(%)
葉部割合
(%)
蛋白質 脂肪 NEF 繊維 灰分
生草 70 22.0 16.1   3.7   49.7   25.7   4.8
処理区 50 13.5 14.4 2.6 53.0 25.1 4.9
無処理区 45 12.5 13.3 2.3 48.7 31.5 4.2

 3. ルーサンのコンディショナー処理
   試験中における天候及び牧草の処置
月日
(月日)
9時気温
(℃)
最高気温
(℃)
最低気温
(℃)
湿度
(%)
日照
降水量
(mm)
処理
処理区 無処理区
7.13 23.6 25.2 - 71 9.6 0 - - 
7.14 21.7 27.1 - 74 11.3 0 15時 刈取
コンディショナー処理
15時 刈取
7.15 24.3 31.5 15.4 89 9.4 0 放置 放置
7.16 24.7 31.0 15.0 66 9.7 0 人手にて反転 人手にて反転
7.17 26.3 32.2 17.3 62 9.1 0 放置 放置
7.18 26.0 28.7 17.4 70 5.0 0.45 午前サイドレーキ
収納
午前サイドレーキ
収納

   刈取処理後の牧草の含水率の推移(%)
  7月14日 7月15日 7月16日 7月17日 7月
18日
10時
20%以下に乾燥する
迄に要した時間
15時 16.5時 21時 1時 4時 8時 11時 13時 16時 10時 13時 16時 10時 13時 16時 時間
処理区  78.2 64.6  61.4  66.0  68.2  58.4  48.6  28.6  29.0  24.1  27.0  23.2  19.9  16.1  14.7 - 67時 74
無処理区 78.2 66.4 65.2 64.2 65.7 66.5 56.6 41.6 43.8 39.2 31.2 30.4 27.6 25.4 21.8 16.5 91時 100

   乾燥の栄養価
区分 外観 栄養組成(無水物中 %)
緑度
(%)
葉部割合
(%)
蛋白質 脂肪 NEF 繊維 灰分
生草 85 25.5 22.0   3.3   37.2   31.8   5.7
処理区 65 12.5 18.9 2.2 39.7 33.6 5.6
無処理区 45 11.0 13.2 1.8 40.4 39.6 5.0

 

Ⅲ 摘要

 1. オーチャードグラス・赤クロバー・ルーサンいずれもコンディショナー処理区の牧草は、無処理区のものより乾燥時間が短縮され、乾草仕上がり(含水率20%以下)までに要する時間は
   50~70%であった。

 2. 処理区の乾草は緑度高く、葉部の脱落損失も少ない。

 3. 処理区の乾草は蛋白質・脂肪などの含有率が高かった。

 4. 処理区は湿気の影響を受けやすく、湿度の高い時は(85%以上)コンディショナー処理による乾燥効果は少ないようである。

 5. 処理区の牧草はテツダーによる反転作業の際かさ高く放置されるため、無処理の牧草より通風良好でテツダー掛けの回数を減らす事ができた。

 6. 試験の実施期間を通じて、気象条件は牧草の乾燥上比較的良好であり、本成績から低温多湿の気象条件におけるコンディショナー処理効果については、即断できないが、極端な気
   象条件でない限り、一般に乾草調製上その使用効果は相当大なるものであると考えられる。