【普及奨励すべき事項】

カーフミールによる仔牛育成試験成績について

北海道農業試験場畜産部家畜第二研究室

 

 従来、輸入脱脂粉乳を40%配合したカーフミールを広く普及して来たが、昭和34年下半期から脱脂粉乳の輸入が認められなくなったので、これに代わるカーフミールの配合割合創案と育成法について、34年春以来研究を進めて来たが、このほど従来のカーフミールに匹敵する優秀なものを作製することが出来たので試験成績の概要を報告する。
 この試験設計にあたっては、従来のカーフミールは脱脂乳を基準として調製したのであるが、今回のカーフミールは全乳と脱脂乳の中間の栄養分を基準とし、原料としては脱脂粉乳は極力減じ、Peebles M-N-C (Vitamin 調合飼料) と小麦胚芽を加えて配合を試みた。
 また、育成法については、従来の牛乳打切時期は生後28日で以後カーフミールと仔牛用配合飼料を併用することを奨めて来たが、今回は牛乳の打切時期を多少延ばして生後28~35日とし、以後63日まではカーフミールのみで育成し、生後64日に至り、カーフミールを漸減する時期から、一般の乳牛配合飼料を併用することに改めた。

 

Ⅰ 試験方法

 この仔牛育成試験では、対照群は昭和32年度当部 calf meal による犢育成試験成績書のA群の成績を引用することとし、特別設けないで試験群1群(C群と名付く)のみで実施した。

 1) 供試牛、ホルスタイン系種仔牛(牡)6頭
   生後10日前後のものを札幌近郊から集めた。
 2) 試験期間、
   自昭和34年6月20日、至同年10月3日生後14日より試験を開始し、生後105日まで育成した。
 3) 供試カーフミール、粗飼料及び濃厚飼料
   これらの配合及び1日1頭当り給与明細は試験成績(3)(4)及び(5)の通りである。粗飼料は当部生産オーチャードグラス1番乾草を草架に入れ自由採食させた。
   濃厚飼料は乳牛用雪印配合飼料(D.C.P.18.T.D.N.64)を供用した。一般にはD.C.P.17~19.T.D.N.65前後(D.T.P.16~18FU85前後)の乳牛用配合飼料を用いるとよい。
 4) 飼料給与法、
   カーフミールは温湯に振込み牛乳攪拌器でよく混ぜて飲ませた。溶かし方はカーフミールの約10倍量の湯、すなわち、カーフミール500gは5kgの湯に溶かした。
   濃厚飼料は粉の儘、飼槽に入れて与えた。なお、朝のカーフミールには肝油を日量3~5g添加した。また下痢を見た場合はオーロフアツク2Aを下表により添加して与えた。

日令 1~10日 11~30日 31~60日 61~90日
添加量 7g 14g 21g 28g

 5) 哺乳回数   1日3回
   午前8時   午後1時   午後5時
 6) その他の管理
   日令が進みカーフミールの給与量が減じてから飲水として湯を1回2.5kg、1日7.5kg位与えた。
 7) 調査事項
   体重、体高、胴長、胸囲、管囲については生後14日より7日毎に測定を行った。

 

Ⅱ 試験結果

 供試仔牛は当部内で1時に生年月日の類似したものを6頭集めることは困難なので、部外より購入した。また体重、体格も揃った方がよいが実際は可成不揃いであった。
犢牛の哺育法は生後20日まで初乳全乳で育て、生後21日からは全乳に小量づつカーフミールを加え、全乳を次第に感じ、生後28~35日で全乳を廃し、生後63日までカーフミールのみで育てた。乾草は草架に入れ生後21日頃から自由採食させた。なほ、昭和32年試験と異なる点は生後63日まで濃厚飼料を与えることなくこれと同量の栄養分をカーフミールで増量して補った。従ってカーフミールの給与量は生後63日までは前回より多くなっており、生後64日からは濃厚飼料を供用したので前回と同量である。
 今回の試験では最初カーフミール甲を調製し試験を始めたのであるが給与量が1kg位になると不消化便を排出するものが多かったので、配合割合を再検討しカーフミール乙を調製して給与したところ排糞の状態が改善されたので、これにより試験を続行して、今回の成績を収めたのである。

 1) 発育
  犢牛育成試験の結果は試験成績(7)増体及び生長率に見るごとく増体率はA群139%、C群149%、体高の生長率はA群20%、C群22%、胸囲の生長率はA群35%、C群37%で、いずれもC群
 の方が勝っていた。胴長の生長率はA群32%、C群30%で若干C群が劣る結果を得たが、総体的に増体率はA群よりC群が劣る結果を得たが、総体的に増体率はA群よりC群の方が勝る
 と云えるが、その他の部位の生長率は大差ないものと云えよう。
 つぎに両軍の発育成績について統計処理を行った結果(有意差の検定結果省略)両軍の間に有意差が認められなかった。試験群C群は対照群A群と同じ発育を示したものと考えられ
 る。 この対照群A群の発育は昭和32年度当部試験成績において論評せるごとく米国における仔牛(牡)の発育標準を70%以上上廻る優れたものであるから、今回のカーフミールによる
 仔牛の発育は極めて優秀なものと云えよう。発育曲線及び増体曲線は第1及び第2図に示した通りである。

 2) 嗜好性及び生理的影響
  今回のカーフミールの嗜好性は極めて良好で前回のものに較べ何等そん色がない。また生理的影響特に下痢についてはこの成績に示した給与法に従えば全く心配がない。
 今回の試験において顕著なことは前回に較べ仔牛の被毛特に毛艶が増したことである。

 3) 経済性
  従来は政府輸入の安い脱脂粉乳を原料としていたが、今回は商社輸入の Peebles M-N-C と国内脱脂粉乳を原料とするため勢い高くなり勝であるがメーカー側では前回のカーフミ
 ールと大差のない価格にするよう認められる筈である。

 

Ⅲ 要約

 脱脂粉乳の輸入が認められなくなったので、従来の脱脂粉乳40%含むカーフミールに代わるものとしてPeebles M-N-C 22.5%含むカーフミールを調製し、育成試験を行ったところ、発育、嗜好性及び生理的影響とも極めて良好にして前回のカーフミールに劣らない成績を収めることが出来たので普及奨励して一般に供試うるものと認められた。

 

Ⅳ 試験成績 (昭和34年度)

 (1) 供試仔牛
番号 種類 性別 生年月日 産地
1 ホ系種 昭和34年6月6日 札幌近郊
2   34 6 20
3    34 6 20
4    34 6 12
5    34 6 15
6    34 6 20

 (2) 一般粗成分並びに可消化栄養分(%)
飼料名 水分 粗蛋白質 粗脂肪 N.F.E 粗繊維 粗灰分 D.C.P T.D.N
カーフミール甲   11.53 27.74 2.19   47.03 2.76 8.75   24.21   75.99
カーフミール乙 11.20 29.18 2.35 44.19 3.24 9.84 26.34 76.23
濃厚飼料 12.68 24.81 4.07 37.60 11.45 9.39 19.12 63.34
オーチャードグラス乾草 16.91 10.19 1.54 33.13 32.63 5.60 6.11 4647
Peebles M-N-C 9.60 15.51 2.20 59.85 - 12.85 14.73 79.53

 (3) カーフミール配合割合(%)
飼料名 乙配合 甲配合
脱脂粉乳 12.5 10.0
P、 M-N-C 22.5 20.0
魚粉 5.0 5.0
亜麻仁粕 17.5 15.0
大豆粕 15.0 12.2
小麦胚芽 5.0 10.0
小麦粉 10.0 12.7
玉蜀黍粉 7.0 10.0
ルーサンミール 2.5 2.0
オーロフアツク 0.4 0.3
骨粉 0.7 0.8
炭カル 1.1 1.2
食塩 0.8 0.8

 (4) 濃厚飼料配合割合(%)
飼料名 配合割合 備考
槽糖類 50 F30{生鮮魚体より製造、
   高蛋白質飼料
亜麻仁粕 5
綿実粕 4
雪印基礎配合 10
その他植物粕 6
椰子粕 10
パーム粕 4
大豆粕 5
糖蜜飼料 3
食塩 1
コキカル骨粉 2 薫製鰊骨粉と炭カル

 (5) 飼料給与量(1日1頭)(g)
日数 牛乳 Calf meal 濃厚飼料 乾草 日数 牛乳 Calf meal 濃厚飼料 乾草
14 6000       40   1070   300
15       41   1100  
16       42   1130   500
17       43   1170  
18       44   1210  
19       45   1250  
20       46   1300  
21 4500 180   200 47   1350  
22   48   1400  
23 200   49   1450   650
24 3500 320   50   1500  
25   51   1540  
26 3000 380   52   1580  
27   53   1630  
28 400   54   1680  
29  2000 600   250 55   1730   800
30 630   56   1780  
31 660   57   1840  
32 690   58   1870  
33 1500 760   59   1900  
34 780   60   1920  
35 800     300 61   1940  
36   970   62   1950     900
37   980   63   1930 30
38   1010   64   1910 50
39   1040   65   1880 80
日数 牛乳 Calf meal 濃厚飼料 乾草 日数 牛乳 Calf meal 濃厚飼料 乾草
66   1850 120 900 86   880 880  1000
67   1810 170 87   820 880
68   1760 220 88   760 920
69   1700 250 89   700 960
70   1650 300 950 90   640 1000
71   1600 350 91   580 1050
72   1500 400 92   520 1100
73   1400 500 93   460 1100 1100
74   1320 600 94   400 1150
75   1280 650 95   340 1200
76   1240 680 96   280 1250
77   1200 720 97   220 1300
78   1160 720 98   160 1350
79   1120 760 99   140 1350
80   1080 760 100   40 1400 1200
81   1040 800 101   40 1500 1200
82   1000 800 102   40 1500
83   1000 800 103   40 1500
84   1000 840  1000 104   40 1500
85   940 840 105   40 1500

 (6) 供試仔牛1頭に要した飼料(kg)
飼料名 飲料給与量 備考
牛乳 84 全乳
Calf meal 86.08  
濃厚飼料 36.23  
乾草 62.5 当部産オーチャードグラス乾草(一番刈)

 (7) 増体及び生長率
項目     牛番号
事項
1 4 6 8 9 11 平均
体重 A群 初体重(kg)
(生後14日目)
67.0 51.0 61.0 44.0 52.0 46.0 52.5
終体重(kg)
(生後105日目)
 131.0  124.0  137.0  116.0  124.5  120.0  125.4
増体率
(%)
115 143 125 164 139 161 139
    牛番号
事項
1 2 3 4 5 6 平均
C群 初体重(kg)
(生後14日目)
57.0 50.5 49.0 47.6 41.0 41.0 46.6
終体重(kg)
(生後105日目)
127.0 114.0 123.0 120.0 106.0 112.0 116.0
増体率
(%)
137 126 151 155 156 173 149
体高     牛番号
事項
1 4 6 8 9 11 平均
A群 初体高(cm)
(生後14日目)
79.0 76.8 81.8 77.3 76.0 73.8 77.5
終体高(cm)
(生後105日目)
94.2 91.6 97.6 92.4 93.2 91.0 93.3
生長率
(%)
19 19 21 19 23 23 20
    牛番号
事項
1 2 3 4 5 6 平均
C群 初体高(cm)
(生後14日目)
80.0 81.3 80.8 79.9 76.0 75.0 78.8
終体高(cm)
(生後105日目)
104.0 102.5 104.0 104.2 101.5 100.5 102.8
生長率
(%)
30 26 29 30 34 34 30
胴長     牛番号
事項
1 4 6 8 9 11 平均
A群 初胴長(cm)
(生後14日目)
87.5 80.0 85.5 80.5 78.0 83.5 82.5
終胴長(cm)
(生後105日目)
112.0 108.0 119.0 106.0 108.0 102.5 109.5
生長率
(%)
28 35 39 32 38 23 32
    牛番号
事項
1 2 3 4 5 6 平均
C群 初胴長(cm)
(生後14日目)
80.0 81.3 80.8 79.9 76.0 75.0 78.8
終胴長(cm)
(生後105日目)
104.0 102.5 104.0 104.2 101.5 100.5 102.8
生長率
(%)
30 26 29 30 34 34 30
胸囲     牛番号
事項
1 4 6 8 9 11 平均
A群 初胸囲(cm)
(生後14日目)
88.0 82.0 87.0 79.0 83.0 77.0 82.7
終胸囲(cm)
(生後105日目)
112.0 110.0 118.0 109.0 109.0 110.0 111.3
生長率
(%)
27 34 36 38 31 43 35
    牛番号
事項
1 2 3 4 5 6 平均
C群 初胸囲(cm)
(生後14日目)
80.3 81.5 82.8 83.0 78.0 76.8 80.4
終胸囲(cm)
(生後105日目)
111.0 112.0 113.5 109.5 105.0 110.0 110.1
生長率
(%)
38 37 37 32 35 43 37



    第1図 発育曲線                                 第2図 増体曲線