【指導上の参考事項】

水稲陸苗代追肥について

北海道農業試験場農芸化学部泥炭地研究室

 

 泥炭地水田では窒素の後効きの傾向が強いため、秋に好転に恵まれたときには良い作柄を示すが、一旦低温に遭遇した場合には生育の遅延による不利を招きやすく、したがってこれらの水田は年により生産が不安定である。かかる水田における安全増収策としては特に初期成育の促進を計ることが重要である。現在、初期成育の促進策について種々の試験を実施中であるが、その一つの方法として水稲陸苗代追肥については昭和32年度より実施して来たのでこれについて報告したい。
 この方法は移植数日前に肥料を施し移植前日まで適度の灌水を行い、肥料を苗に充分吸収させ、これを普通移植又は土を付けて舟形移植し、移植後の養分の吸収を促進し生育期間を短縮し、更に初期の生育を良好ならしめようとするものである。

 

A 苗代追肥が初期成育の促進に及ぼす影響

Ⅰ 試験設計
 1) 試験区別
  イ 冷床苗代における処理
   1. 標準区
   2. 窒素、燐酸追肥区
   3. 窒素追肥区
   4. 燐酸追肥区
  ロ 本田における処理
   1. 標準苗普通移植
   2. 窒素、燐酸追肥苗普通移植
   3. 窒素追肥苗普通移植
   4. 燐酸追肥苗普通移植
   5. 窒素燐酸追肥苗舟型移植(土を出来る丈附着させたまま)
 2) 苗代施肥量(3.3㎡当)
    基肥   硫安(21%) 375g、過石(18%) 563g,、硫化(49%) 263g
    追肥   硫安(21%) 225g、過石(18%)  75g,、
          移植5日前に施用
 3) 供試品種     石狩白毛
 4) 冷床播種     4月26日  追肥5月25日、 本田移植5月29日
 5) 冷床における灌水処理は各区同一とした。
 6) 本田条件     高位泥炭地 10a60.6m3 客土田、栽植密度 30cm×17cm、
              1本植 施肥量(10a当kg)  堆肥750  硫安11  過石26  硫化11  金肥は全量表層施肥

 

Ⅱ 試験成績
 1) 生育調査
  イ 苗の調査(移植時) 
試験
区別
草丈(cm) 100本当
分げつ数
(本)
葉令(葉) 100本当乾物重 同左比率 地上部に
対する根部
の割合(%)
総重(g) 根重(g) 地上部重(g) 総重(g) 根重(g) 地上部重(g)
1 12.6 13 3.91 4.68 0.71 3.97 100 100 100 17.9
2 12.6 73 3.98 5.02 0.70 4.32 107 99 109 16.2
3 12.6 70 3.98 4.85 0.68 4.17 104 96 105 16.3
4 12.1 7 3.91 4.76 0.85 3.91 102 120 98 21.7
  備考   調査本数、草丈、葉令中庸個体 200本

  ロ 移植後9日目の調査
試験
区別
草丈(cm) 100本当
分げつ数
(本)
葉令(葉) 本葉4葉
葉身長
(cm)
本葉5葉
葉身長
(cm)
本葉6葉
葉身
抽葉長(cm)
100本当乾物重 同左比率 地上部に
対する根部
の割合(%)
総重(g) 根重(g) 地上部重(g) 総重(g) 根重(g) 地上部重(g)
1 17.1 14 5.17 8.5 9.8 2.5 7.10 1.98 5.12 100 100 100 38.7
2 17.7 40 5.36 8.5 9.9 5.1 8.02 2.21 5.81 113 112 113 38.0
3 17.6 35 5.35 8.5 10.1 5.1 8.58 2.49 6.09 121 126 119 40.9
4 15.6 20 5.27 8.6 9.1 3.9 9.12 3.07 6.05 128 155 118 50.7
5 16.6 110 5.33 8.7 9.9 5.6 10.55 3.12 7.43 149 158 145 42.0

  ハ 移植後20日の調査
試験
区別
草丈(cm) 100本当
分げつ数
(本)
本葉6葉
葉身長
(cm)
本葉7葉
抽葉長
(cm)
100本当乾物重 同左比率 地上部に
対する根部
の割合(%)
総重(g) 根重(g) 地上部重(g) 総重(g) 根重(g) 地上部重(g)
1 22.4 - 14.4 7.7 16.51 6.83 9.68 100 100 100 70.6
2 24.7 20 14.2 14.0 24.59 11.26 13.33 149 165 138 84.5
3 24.9 35 14.5 13.9 18.58 6.55 12.03 113 96 124 54.4
4 24.4 5 14.5 11.5 16.18 5.89 10.29 98 86 106 57.2
5 26.9 95 17.0 12.8 29.23 11.59 17.64 177 170 182 65.7
  備考   調査本数 66本   

 2) 分析成績
  1. 成分含量(% 乾物中)
試験区別 窒素 燐酸 加里 比率
茎葉 茎葉 茎葉 窒素 燐酸 加里
茎葉 茎葉 茎葉
苗の調査
(移植時)
 1   4.06   2.18   1.22   0.74   3.94   2.89 100  100 100  100 100  100
 2 5.39 2.81 1.69 0.94 4.18 2.88 133 129 139 127 106 100
 3 5.27 2.96 1.52 0.96 4.11 2.80 130 136 125 130 104 97
 4 4.05 2.38 1.21 0.76 3.75 2.67 100 109 99 103 95 92

  2. 養分吸収量
試験区別 100本当吸収量 比率
窒素 燐酸 加里 窒素 燐酸 加里
茎葉 茎葉 茎葉 茎葉 茎葉 茎葉
苗の調査
(移植時)
 1   161   15   176    48    5    53   156   21   177   100  100   100   100   100   100   100   100   100
 2 233 20 253 73 7 80 181 20 201 145 133 144 152 140 151 116 95 114
 3 220 20 240 63 7 70 171 19 190 137 133 136 131 140 132 110 90 107
 4 158 20 178 47 6 53 147 23 170 99 133 101 98 120 180 94 110 96
移植後
9日目の
調査
 1 196 46 242 36 13 49 170 67 237 100 100 100 100 100 100 100 100 100
 2 241 58 299 56 17 73 209 83 292 123 126 124 156 131 149 123 124 123
 3 253 64 317 55 17 72 211 103 314 129 139 131 153 131 147 124 154 132
 4 218 71 289 42 17 59 196 108 304 111 154 119 117 131 120 115 161 128
 5 333 73 406 75 22 96 205 128 333 170 159 168 206 169 200 121 191 141

   

Ⅲ 結果

 本田の初期成育を促進するためには、1本当乾物重が大きく、葉令が適当にして、養分特に窒素、燐酸含量の高い苗を作ることが必要であり、このためには苗代末期の窒素追肥により略々その目的を達することが出来るが、これに燐酸を併用することはより効果的である。この様な苗を移植すると移植後の養分の吸収も旺盛に行われ、稲体の養分濃度も引き続いて高く維持され、このことが移植後の活着を良からしめ、その後の発育もよく、早期に分げつを発生し、初期生育が確保される原因と考えられる。なお、窒素、燐酸を追肥し、抜きとりに際し根の損傷をさけ、床土を充分につけて移植する時は根をそのまま養分の吸収の出来る態勢におかれるため、移植直後より養分の吸収が旺盛に行われ各時期共普通移植を行ったものよりも、各成分共に著しく吸収量が大であり、成分含量も高い。このことが窒素、燐酸追肥苗舟型移植区が同普通移植区に比し活着が更に良く、初期草丈の伸長、分げつの発生等が一段と優った原因と考えられる。従って苗代において移植前に窒素、燐酸の適量の追肥を行い、出来得れば根に土を付けて移植することは初期生育確保のための有効な一手段と考えられる。

 

 

B 苗代追肥の実際的な方法について

Ⅰ 試験設計
 1) 試験区別
  イ 追肥量に関する試験
   1. 標準元肥区(3.3㎡当、硫安375g、過石563g、硫加263g施用)
   2. 追肥量元肥増量区(3.3㎡当、硫安600g、過石738g、硫加263g施用)
   3. 移植5日前(3.3㎡当、硫安225g、過石75g追肥区)
   4. 移植5日前(3.3㎡当、硫安150g、過石53g追肥区)
   5. 移植5日前(3.3㎡当、硫安75g、過石26g追肥区)
   備考  硫安、窒素21%、過石、燐酸18%、硫加、加里49%各区共ホークで堀起し出来る丈土を附着させて舟型移植
  ロ 移植方法に関する試験
   1. 舟型移植(ホークで堀り起し出来る丈土を津着せしめて移植)
   2. 普通移植区(土をよく払い落とす)
   3. 軽く土を落とし舟型移植区。
   4. 床土を6cmの深さに横断舟型移植区。
   5. 床土を3cmの深さに横断舟型移植区。
   6. 床土を1.5cmの深さに横断舟型移植区。
   7. むしり取り苗移植区。
   備考  移植5日前 3.3㎡当硫安22.5g、過石75g追肥を行う。
  ハ 追肥施用時期に関する試験
   1. 移植3日前追肥区
   2. 移植5日前追肥区
   3. 移植7日前追肥区
   4. 元肥標準区
   備考  1. 追肥量は3.3㎡当硫安2.25g、過石75g施用
        2. 各区舟型移植しホークで堀り起し出来る丈根に土を附着させて移植
  2) 供試品種     石狩白毛
  3) 冷床苗代播種  4月24日  移植5月27日
  4) 本田条件     高位泥炭地10a当60.6㎡ 客土田
               栽植密度30cm×17cm  1株2本植
               施肥量(10a当kg)  堆肥750   硫安11   過石26   硫加11   金肥は全量表層施肥

 

Ⅱ 試験成績
 1) 生育調査
  イ 追肥量に関する試験
   苗の調査
試験
区別
草丈(cm) 100本当
分げつ数
(本)
本葉4葉
葉身
抽葉長(cm)
100本当乾物重(g) 同左比率 地上部に
対する
根の割合(%)
総重 根重 地上部重 総重 根重 地上部重
1 18.6 - 4.2   4.79   0.93 3.86   100   100 100 24.1
2 16.8 - 3.2 4.68 1.25 3.43 98 134 89 36.4
3 17.3 3.0 4.7 5.01 1.18 3.83 105 127 99 30.8
4 16.4 10.0 5.2 4.53 0.97 3.56 95 104 92 27.2
5 16.5 - 4.1 5.24 1.22 4.02 109 131 104 30.3
  備考   草丈、葉令中庸個体200本の調査

   移植後10日目の調査
試験
区別
草丈(cm) 100本当
分げつ数
(本)
本葉5葉
葉身長
(cm)
本葉6葉
葉身
抽葉長(cm)
100本当乾物重(g) 同左比率 地上部に
対する
根の割合(%)
総重 根重 地上部重 総重 根重 地上部重
1 19.6 23 12.7 7.5   12.03   4.41 7.62    100    100 100 57.9
2 19.1 14 12.3 7.5 12.40 4.57 7.83 103 104 103 58.4
3 21.0 15 13.0 12.1 12.67 5.01 7.66 105 114 101 65.4
4 19.9 17 12.6 8.3 12.21 4.75 7.46 101 108 98 63.7
5 19.5 18 12.4 7.5 11.86 4.51 7.35 99 102 96 61.4
  備考   調査個体 192本

   移植後20日目の調査
試験
区別
草丈(cm) 100本当
分げつ数
(本)
本葉6葉
葉身長
(cm)
本葉7葉
葉身
抽葉長(cm)
100本当乾物重(g) 同左比率 地上部に
対する
根の割合(%)
総重 根重 地上部重 総重 根重 地上部重
1 24.1 186 14.6 14.4   33.78   16.37 17.41  100  100 100 94.0
2 26.8 202 14.6 17.4 33.51 14.47 19.04 99 88 109 76.0
3 28.0 178 14.6 18.8 44.57 24.34 20.23   132   149 116 120.3
4 28.2 218 14.3 19.0 37.15 16.44 20.71 110 100 119 79.4
5 26.9 173 15.9 17.2 34.24 14.72 19.52 101 90 112 75.4

 ロ 移植方法に関する試験
  苗の調査
試験
区別
草丈(cm) 100本当
分げつ数
(本)
本葉4葉
抽葉長
(cm)
100本当乾物重(g) 同左比率 地上部に
対する
根の割合(%)
総重 根重 地上部重 総重 根重 地上部重
1 15.9 3.3 4.7   4.73   0.91 3.82 96 82 100 23.2
2 15.9 3.3 4.7 4.53 0.71 3.82   92   64 100 18.7
3 15.9 3.3 4.7 4.85 1.03 3.82 98 93 100 27.0
4 15.9 3.3 4.7 4.75 0.93 3.82 96 84 100 24.4
5 15.9 3.3 4.7 4.50 0.68 3.82 91 61 100 17.7
6 15.9 3.3 4.7 4.16 0.34 3.82 84 31 100 8.8
7 15.9 3.3 4.7 4.07 0.25 3.82 83 23 100 6.6
追肥苗完全根 15.9 3.3 4.7 4.93 1.11 3.82  100  100 100 28.9
  備考   1. 草丈、葉令中庸個体200本の調査
        2. 1~7区の根は処理後の移植直前における状態のものである。

   移植後10日目の調査
試験
区別
草丈(cm) 100本当
分げつ数
(本)
本葉6葉
葉身長
(cm)
本葉7葉
葉身
抽葉長(cm)
100本当乾物重(g) 同左比率 地上部に
対する
根の割合(%)
総重 根重 地上部重 総重 根重 地上部重
1 18.9 41 12.2 8.1   12.99   5.06 7.93   150   173 138 63.8
2 18.1 6 11.5 4.8 8.68 2.92 5.76 100 100 100 50.7
3 17.4 9 11.5 4.2 9.99 3.79 6.20 115 130 108 61.1
4 18.6 20 11.2 5.3 10.54 4.09 6.45 121 140 112 63.4
5 18.8 20 11.7 7.7 10.51 3.71 6.80 121 127 118 54.6
6 17.8 18 11.4 6.3 11.44 4.45 6.99 131 152 121 63.7
7 18.3 9 11.8 4.9 8.91 2.98 5.93 103 102 103 50.3
  備考   調査個体 192本

   移植後20日目の調査
試験
区別
草丈(cm) 100本当
分げつ数
(本)
本葉6葉
葉身長
(cm)
本葉7葉
葉身
抽葉長(cm)
100本当乾物重(g) 同左比率 地上部に
対する
根の割合(%)
総重 根重 地上部重 総重 根重 地上部重
1 25.0 217 13.8 16.3   33.70   15.82 17.88   141   145 138 88.5
2 24.4 74 15.1 13.1 23.85 10.93 12.92 100 100 100 84.6
3 26.9 132 17.0 14.8 29.56 13.82 15.74 124 126 122 87.8
4 25.9 177 15.7 15.4 37.74 20.06 17.68 158 184 137 113.5
5 27.8 169 15.9 17.9 32.17 13.53 18.64 135 124 144 72.6
6 25.9 202 14.9 16.6 34.51 16.30 18.21 145 149 141 89.5
7 24.1 115 14.9 13.9 27.56 14.21 13.35 116 130 103 106.4
   備考   調査個体 130本

 ハ 追肥施用の時期に関する試験
  苗の調査
試験
区別
草丈(cm) 100本当
分げつ数
(本)
本葉4葉
葉身長(cm)
100本当乾物重(g) 同左比率 地上部に
対する
根の割合(%)
総重 根重 地上部重 総重 根重 地上部重
1 15.2 - 4.0   4.70   1.04 3.66 98 112 95 28.4
2 17.3 3.0 4.7 5.01 1.18 3.83   105   127 99 30.8
3 16.8 37.0 4.6 5.27 1.31 3.96 110 141 103 33.1
4 18.6 - 4.2 4.79 0.93 3.86 100 100 100 24.1
   備考  草丈、葉令中庸個体 200本の調査

   移植後10日目の調査
試験
区別
草丈(cm) 100本当
分げつ数
(本)
本葉5葉
葉身長
(cm)
本葉6葉
葉身
抽葉長(cm)
100本当乾物重(g) 同左比率 地上部に
対する
根の割合(%)
総重 根重 地上部重 総重 根重 地上部重
1 20.0 70 12.5 11.5  14.68   5.68 9.00   122   129 118 63.1
2 21.0 15 13.0 12.1 12.67 5.01 7.66 105 114 101 63.4
3 20.8 35 13.0 10.5 13.25 4.70 8.55 110 107 112 55.0
4 19.6 23 12.7 7.5 12.03 4.41 7.62 100 100 100 57.9
   備考   調査個体 192本

   移植後20日目の調査
試験
区別
草丈(cm) 100本当
分げつ数
(本)
本葉6葉
葉身長
(cm)
本葉7葉
葉身
抽葉長(cm)
100本当乾物重(g) 同左比率 地上部に
対する
根の割合(%)
総重 根重 地上部重 総重 根重 地上部重
1 29.3 244 15.0 20.0  42.31   19.76 22.55   125   121 130 87.6
2 28.0 178 14.6 18.8 44.57 24.34 20.23 135 149 116 120.3
3 29.6 179 17.8 18.8 37.00 15.97 21.03 110 98 121 75.9
4 24.1 186 14.6 14.4 33.78 16.37 17.41 100 100 100 94.0
   備考   調査個体 130本

 

 2) 分析成績
  1. 成分含量(% 乾物中)
試験区別 苗の調査
窒素 燐酸 加里
茎葉 茎葉 茎葉
追肥量に
関する試験
 1   4.97   2.87   2.12   1.51   4.32   2.42
2 5.20 2.87 2.05 1.54 4.03 2.25
3 5.38 3.24 2.35 1.30 4.23 2.45
4 5.27 2.92 2.28 1.42 4.03 2.92
5 5.15 2.81 2.21 1.45 3.89 2.73
移植方法に
関する試験苗
5.20 2.98 2.25 1.30 4.03 2.45
追肥施用
時期に
関する試験
 1 5.30 2.86 2.27 1.45 3.92 2.90
2 5.38 3.24 2.35 1.30 4.23 2.45
3 5.27 3.26 2.29 1.38 3.89 2.80
4 5.97 2.87 2.12 1.51 4.32 2.42

  2. 養分吸収量
   苗の調査
試験区別 100本当吸収量(mg)
窒素 燐酸 加里
茎葉 茎葉 茎葉
追肥量に
関する試験
 1   192   27   219    82   14   96   167   23   190
2 178 36 214 70 19 89 138 28 166
3 206 38 244 90 15 105 162 29 191
4 188 28 216 81 14 95 143 28 171
5 207 34 241 89 18 107 156 33 189
移植方法に
関する試験苗
199 33 232 86 14 100 154 27 181
追肥施用
時期に
関する試験
 1 194 30 224 83 15 98 143 30 173
2 206 38 244 90 15 105 162 29 191
3 209 43 252 91 18 109 154 37 191
4 192 27 219 82 14 96 167 23 190

   移植後10日目の調査
試験区別 100本当吸収量(mg)
窒素 燐酸 加里
茎葉 茎葉 茎葉
追肥量に
関する試験
 1   305   111   416    83   34 117 247 162 409
2 321 106 427 78 32   110   249   169   418
3 339 107 446 82 41 123 270 191 461
4 315 108 423 78 33 111 285 181 466
5 309 99 408 82 33 115 252 150 402
移植法に
関する
試験苗
 1 351 123 474 93 39 132 257 151 408
2 229 68 297 55 25 80 169 96 265
3 267 85 352 60 28 88 195 131 326
4 270 88 358 68 31 99 216 135 350
5 281 87 368 69 29 98 230 139 369
 6 282 101 383 73 34 107 225 175 400
 7 255 76 331 62 23 85 183 99 282
追肥施用
時期に
関する試験
 1 390 130 520 105 46 151 304 198 502
2 339 107 446 88 41 129 270 191 461
3 382 105 487 95 36 131 275 161 436
4 305 111 416 83 34 117 247 162 409

   移植後20日目の調査
試験区別 100本当吸収量(mg)
窒素 燐酸 加里
茎葉 茎葉 茎葉
追肥量に
関する試験
 1 738 309 1047 153 85 238 695 286 981
2 838 268 1106 160 87 247 724 214 938
3 929 399 1328 190 144 334 769 329 1098
4 975 293 1268 188 110 298 770 383 1053
5 886 269 1155 189 128 317 742 222 964
移植法に
関する
試験苗
 1 821 282 1103 163 85 248 665 202 867
2 556 191 747 118 59 177 465 145 610
3 752 246 998 157 104 261 603 202 805
4 796 311 1107 171 122 293 663 333 996
5 870 237 1107 166 84 250 714 215 929
 6 819 279 1098 182 108 290 677 249 926
 7 603 247 820 124 84 208 497 220 717
追肥施用
時期に
関する試験
 1  1100  368  1468   219   138   357   857   334  1193
2 929 399 1328 190 144 334 769 329 1098
3 946 300 1246 187 104 291 904 302 1206
4 738 309 1047 153 85 238 695 286 981

 

Ⅲ 結果
 1) 追肥量に関する試験
  冷床における移植数日前の追肥の効果は高く、元肥増量よりもこれを追肥として施用することが有利で、苗の生育も良く、養分含量、養分吸収量も優っており又移植後の生育、養分
  含量、養分吸収量も同様に優る結果が認められる。
  追肥量も一般に多い方が有利な結果が認められるが本成績から見て、元肥として冷床3.3㎡当硫安375g過石563g、硫加263g程度のものが施用されている場合には、硫安200g、
  経石70g程度が適当量と考えられる。
 2) 移植方法に関する試験
  移植方法としては、根の損傷をさけ床土を充分に着けて移植することが、生育、養分含量、養分吸収量等の点から見て有利であり、特に、移植当初においてその効果が著しい。その
  速度は少なくとも種子下2~3cm程度の床土を平に横断し根に土を付けたまま舟型移植することが望ましい。
 3) 追肥施用時期に関する試験
  追肥施用時期の差異は苗においては根部の発育に差異を来し、追肥時期の早いもの程優る結果を示し、養分吸収量も追肥の施用の早い区程優ったが、移植後の生育量、養分含
  量、吸収量から見て移植3~5日前の追肥が適当と認められた。

 

 

C 苗代追肥が本田の水稲の生育並びに収量に及ぼす影響について 

昭和33年度

Ⅰ 試験設計
 1) 試験区別
  1. 窒素燐酸全量全層施肥
  2. 窒素燐酸全量表層施肥
  3. 窒素燐酸全量1/2全層1/2表層施肥
   備考  1. 以上の各区を普通苗と窒素燐酸追肥苗の別に行う。
        2. 加里は各区全層施肥
 2) 供試品種     豊光
 3) 施肥量(10a/kg)     窒素4.73、燐酸5.67、加里5.67、珪カル170
 4) 栽植密度     30cm×15cm  冷床苗2本植
 5) 冷床苗代の施肥条件
     普通苗 基肥 3.3㎡当   硫安(21%) 375g     過石(18%) 563g     硫加(49%) 263g
     追肥苗 基肥 3.0㎡当   上に同じ
           追肥         硫安 225g     過石 75g     移植5日前に施用
     灌水はすべて同一条件とする。
 6) 追肥苗は、床土6cmを横断し出来る丈根に土をつけて移植した。
 7) 1区面積及び区制     1区  10㎡  2区制

Ⅱ 試験成績
 1) 生育調査
試験
区別
幼穂
形成期
(月日)
出穂期
(月日)
成熟期
(月日)
6月14日 7月4日 幼穂形成期
(7月7日)
草丈(cm) 茎数(本) 草丈(cm) 茎数(本) 草丈(cm) 茎数(本)
普通苗  1 7.9 8.4 9.24 20.8 3.7 38.9 19.2 47.1 25.7
2 7.9 8.4 9.24 22.6 4.0 39.0 19.8 47.9 25.9
3 7.9 8.4 9.25 21.9 4.8 39.2 23.1 47.8 29.6
追肥苗 1 7.8 8.4 9.24 22.0 6.0 40.1 23.7 49.0 29.0
2 7.8 8.4 9.24 23.8 6.5 40.4 25.1 48.4 30.2
3 7.8 8.3 9.23 26.2 6.0 41.0 24.3 50.0 29.0
試験区別 7月12日 出穂始
成熟期
有効
茎歩合
(%)
1m3
穂数(本)
草丈(cm) 茎数(本) 草丈(cm) 茎数(本) 草丈(cm) 茎数(本) 穂長(cm)
普通苗  1 49.5 27.5 64.9 27.4 79.5 24.2 14.1 86 538
2 50.2 27.2 66.3 26.8 80.9 24.5 14.6 89 544
3 50.0 30.2 67.1 29.2 82.9 25.5 14.4 84 567
追肥苗 1 50.1 29.4 66.5 28.3 80.4 25.2 15.1 85 560
2 51.3 30.5 67.3 29.0 82.0 26.1 14.0 86 580
3 51.8 29.3 67.1 27.8 81.8 25.0 14.3 85 556

 2) 収量構成要素(2区平均)
試験区別 1株
穂数
1穂
粒数
1株当
総粒数
稔実
歩合
稔実籾
1000
粒重
比率
1株
穂数
1穂
粒数
1株当
総粒数
稔実
歩合
稔実籾
1000
粒重
普通苗  1   24.3   58.6 1424   88.9 24.0   100   100 100   100 100
2 24.2 58.1 1406 89.9 23.9 100 99 99 101 100
3 25.3 60.0 1518 91.0 23.9 104 102 107 102 100
追肥苗 1 25.6 56.9 1457 91.3 24.2 105 97 102 103 100
2 26.1 57.2 1493 91.7 23.8 107 98 105 103 99
3 25.0 56.6 1415 91.5 24.3 103 97 99 103 101

 3) 稲体重量の推移(1株当gr 風乾物)
試験区別 幼穂
形成期
出穂始
成熟期
茎葉 総重 茎葉 総重
普通苗  1 6.80   3.79  21.19  24.98  32.21  23.11  55.32
2 6.80 4.42 22.67 27.09 31.21 22.55 53.76
3 7.71 5.06 24.09 29.15 35.23 25.30 60.53
追肥苗 1 8.00 4.66 24.57 29.23 32.37 23.41 55.78
2 7.80 4.51 24.85 29.36 31.83 24.55 56.38
3 8.29 4.43 23.35 27.78 31.53 22.84 54.37
  備考  2区中の1区の抜取調査による。

 4) 収量調査(2区平均成績)
試験区別 10a当収量(kg) 玄米収量
割合(%)
普通苗玄米
収量に対する
追肥苗の割合
籾1L重
(g)
玄米 青米
歩合(kg)
数/総重
×100(%)
総重 茎葉重 籾重 玄米重 1L重 1000粒重
普通苗  1   1197.2 493.2   675.4   580.8 100 100 632   814 20.5 11.6 56
2 1229.7 498.8 697.7 597.9 103 100 622 820 20.4 14.4 57
3 1263.2 506.9 728.3 622.7 107 100 623 819 20.6 13.1 58
追肥苗 1 1271.0 514.1 721.4 619.7 100 107 631 818 20.6 10.7 57
2 1240.7 499.2 699.8 598.3 97 100 617 824 20.4 11.7 56
3 1245.7 506.1 706.6 605.6 98 97 629 820 20.6 10.3 57

 5) 分析成績
  1. 養分吸収量(10a当kg)子実への移行割合及び養分吸収量比
試験区別 幼穂形成期 出穂始
成熟期
窒素 燐酸 加里 珪酸 窒素 燐酸 加里 珪酸 窒素 燐酸 加里 珪酸
普通苗  1  4138  1220  2984  5750  7492  2810  7318  12524  12113  5377  9293  40331
2 4095 1089 3528 6229 8037 3180 8080 12131 12299 5374 8985 38333
3 4683 1285 4204 7013 8581 3245 8015 14201 13979 5917 10920 47001
追肥苗 1 4726 1263 4334 6839 9322 3311 7863 14571 12060 5344 10210 41991
2 4508 3067 3877 6970 8647 3158 7209 12567 11808 5166 9706 39396
3 4421 1220 4160 6621 8364 3136 7231 13286 11510 5296 10327 41372
試験区別 成熟期における子実への移行割合 吸収量比
窒素 燐酸 加里 窒素 燐酸 加里
普通苗  1 70 76 24   100    44    77
2 70 77 23 100 44 73
3 68 74 22 100 42 78
追肥苗 1 70 75 24 100 44 85
2 67 75 23 100 44 82
3 68 77 22 100 46 90

Ⅲ 結果

 追肥苗は普通苗に比べて活着が早く、これにつれて分げつの発生も早められ、早期に多くの茎数が確保されると同時に、最高分げつ期も早まり、その時期は幼穂形成期頃となった。従って幼穂形成当時の葉色も普通苗に比べて淡く、その後も同様に経過した。収量においていは、追肥苗は普通苗としばしば同等の成績に止まり初期成育の優位性をそのまま収量の上にまで持続させることが出来なかった。この原因を分析及び収量構成要素の成績から見ると、幼穂形成当時の追肥苗は養分吸収量においては普通苗に比べて優るが、稲体の窒素含量の低いことが認められ、初期生育量の増大は総体的に顆花決定当時の稲体窒素含量の低下を来し、そのため1穂粒数の減少をもたらしたことによるものと考えられた。したがって元肥窒素用量の増加、施肥法等により幼穂形成当時の稲体窒素含量の低下を防ぐことが大切であることが考えられた。

 

昭和34年度

Ⅰ 試験設計
 1) 試験区別
  イ 窒素用量(10a当)
   1 無窒素、
   2 窒素 2kg
   3 窒素 4kg
   4 窒素 5kg
   5 窒素 6kg
   6 窒素 7kg
   7 窒素 8kg
  ロ 栽植密度
   1 30cm×22cm  1株3本植(1㎡当15株)
   2 30cm×15cm  1株3本植(1㎡当22株)
   3 30cm×11cm  1株3本植(1㎡当30株)
  ハ 苗の種類
   1 普通苗
   2 追肥苗

 以上  イ、ロ、ハの組合せ試験  合計 42区

 2) 供試品種   豊光
 3) 施肥量(10a/kg)、燐酸9.5、加里7.5、珪カル170
 4) 施肥法     金肥は全層施肥、ただし珪カルは普通肥料施用の5日前に耕起された土に良く混合した。
 5) 1区面積及び区制   1区 10.5㎡  1区制

 

Ⅱ 試験成績
 1) 生育調査
栽植
密度
苗の
種類
窒素
用量
幼穂
形成期
(月日)
出穂期
(月日)
成熟期
(月日)
6月22日 7月18日 成熟期(9月10日) 有効茎
歩合(%)
1㎡当
穂数(本)
イモチ
被害茎
歩合(%)
草丈(cm) 茎数(本) 草丈(cm) 茎数(本) 草丈(cm) 穂長 穂数
30cm×22cm 普通苗 0 7.16 8.10 9.26 24.5 7.6 51.0 35.6 81.2   15.1   32.8 91 497 3.8
2 7.16 8.9 9.27 25.8 8.6 54.6 39.4 82.3 15.0 34.3 87 520 4.7
4 7.16 8.10 9.27 25.6 8.9 53.0 38.2 85.7 15.0 34.2 90 518 5.5
5 7.16 8.10 9.28 25.6 8.2 54.0 38.9 84.9 15.2 32.5 93 492 7.4
6 7.17 8.11 9.29 23.1 8.3 50.3 41.3 85.5 15.2 33.4 94 506 11.8
7 7.18 8.12 9.30 22.4 8.5 51.1 41.5 88.2 15.6 35.0 89 530 15.2
8 7.18 8.12 9.30 23.6 8.9 52.0 43.4 88.5 15.6 35.2 89 533 17.0
30cm×22cm 追肥苗 0 7.15 8.10 9.25 26.0 10.0 50.8 35.7 77.0 14.6 30.3 90 459 2.6
2 7.15 8.9 9.25 26.2 12.1 51.9 41.6 79.8 14.1 33.7 84 511 3.2
4 7.15 8.10 9.26 24.3 11.9 52.5 43.1 81.7 14.3 36.5 87 553 5.0
5 7.15 8.10 9.28 26.2 12.4 52.0 44.4 85.2 14.5 38.9 80 589 8.0
6 7.16 8.11 9.28 24.4 13.0 51.3 45.3 81.8 15.0 37.4 85 567 9.0
7 7.16 8.11 9.28 24.9 12.8 53.1 46.3 80.6 14.5 39.0 86 591 11.6
8 7.17 8.12 9.29 24.2 11.1 52.4 46.2 85.0 15.3 38.7 86 586 14.8
30cm×15cm 普通苗 0 7.16 8.11 9.26 23.9 7.0 49.2 28.5 78.8 13.9 24.4 82 542 1.7
2 7.16 8.11 9.26 24.4 6.6 49.7 27.5 78.3 14.0 22.5 87 500 1.5
4 7.16 8.11 9.28 23.4 7.0 52.3 32.1 82.2 14.6 26.5 85 589 7.1
5 7.16 8.10 9.28 25.2 9.3 53.2 32.5 84.7 14.5 27.1 82 602 8.5
6 7.16 8.11 9.29 23.8 8.2 53.7 33.4 86.3 14.6 29.0 82 644 8.3
7 7.17 8.12 9.29 23.0 8.7 54.9 34.1 86.7 14.6 28.2 87 627 13.1
8 7.17 8.12 9.30 23.0 8.5 50.6 36.3 86.1 15.2 28.3 83 629 15.6
30cm×15cm 追肥苗 0 7.15 8.9 9.23 23.3 11.2 48.0 30.9 73.9 13.6 23.4 84 520 1.2
2 7.15 8.9 9.24 24.7 13.4 50.7 38.1 74.9 13.6 25.7 74 571 1.2
4 7.15 8.9 9.25 24.4 13.7 51.9 39.6 81.6 14.2 28.3 73 629 5.4
5 7.16 8.10 9.25 23.9 11.9 53.3 40.0 81.7 13.9 29.1 77 647 7.8
6 7.16 8.10 9.26 24.4 11.1 51.5 38.1 83.0 14.2 30.7 80 682 8.0
7 7.16 8.10 9.26 25.1 11.7 56.0 40.1 83.3 14.6 28.0 74 622 10.4
8 7.17 8.12 9.27 22.9 11.4 54.3 39.7 86.9 14.8 30.8 76 684 13.3
30cm×11cm 普通苗 0 7.15 8.9 9.22 24.5 5.4 48.1 19.5 70.5 13.5 15.0 78 455 0.6
2 7.15 8.10 9.23 23.8 5.3 47.9 22.0 70.0 13.6 14.9 82 451 1.5
4 7.16 8.10 9.24 23.6 5.8 51.0 24.4 74.3 13.6 17.7 75 536 1.4
5 7.16 8.11 9.24 23.9 6.3 50.1 24.7 75.4 13.7 19.2 74 582 2.0
6 7.16 8.10 9.25 23.2 7.3 52.1 29.1 80.3 13.7 18.8 75 570 2.5
7 7.16 8.10 9.25 23.1 7.0 50.4 26.1 78.5 14.0 19.9 80 603 3.0
8 7.17 8.11 9.27 22.5 9.3 50.9 32.1 81.8 14.3 20.9 69 633 5.2
30cm×11cm 追肥苗 0 7.14 8.8 9.20 23.6 10.6 47.8 25.5 70.3 13.5 18.5 72 561 0.5
2 7.14 8.8 9.22 25.4 10.8 47.6 25.3 72.8 13.5 19.9 77 603 2.0
4 7.15 8.10 9.24 25.1 11.5 50.0 27.5 74.2 13.5 20.1 76 609 1.2
5 7.15 8.9 9.24 25.9 11.1 52.4 30.5 75.1 13.7 21.0 73 636 1.4
6 7.15 8.9 9.25 26.4 11.1 50.9 29.1 80.8 14.1 21.2 69 642 1.8
7 7.16 8.10 9.25 24.5 10.6 51.8 29.9 77.5 14.0 21.2 75 642 2.1
8 7.16 8.10 9.27 23.2 11.7 51.5 33.1 79.3 13.9 23.7 71 718 4.0

 2) 収量調査
栽植
密度
苗の
種類
窒素
用量
10a当収量(kg) 同玄米
収量の
割合
玄米
1L重(g)
玄米
1000粒
重量(g)
青米
歩合(%)
追肥苗/
普通苗
×100
籾重/
総重
×100
総重 茎葉重 精籾重 玄米重
30cm×22cm 普通苗 0   1257.9   541.8   675.2   577.3 100 818 21.9 8.7 100 54
2 1292.3 542.5 703.8 602.5 104 817 21.6 10.3 100 55
4 1300.6 550.3 725.0 618.4 107 817 21.5 10.0 100 55
5 1359.8 570.5 729.3 623.6 108 816 21.6 10.5 100 54
6 1326.8 566.4 699.8 598.3 104 815 21.2 12.6 100 54
7 1321.2 596.0 646.6 552.8 96 813 21.1 13.1 100 50
8 1268.2 568.8 620.2 531.5 92 811 21.0 13.5 100 50
30cm×22cm 追肥苗 0 1193.2 494.3 663.1 563.6 100 820 21.7 6.8 98 56
2 1312.4 570.9 693.0 591.8 105 817 21.4 4.8 98 53
4 1345.8 568.9 723.8 618.1 110 817 21.0 9.1 100 54
5 1458.5 658.2 745.1 639.3 113 817 21.1 11.4 103 52
6 1379.7 600.6 712.7 608.6 108 821 21.0 11.7 102 52
7 1384.2 664.8 657.4 564.0 100 818 21.0 11.8 102 48
8 1414.4 673.1 649.6 558.0 99 817 21.2 13.1 105 47
30cm×15cm 普通苗 0 1293.7 569.6 680.3 578.9 100 825 21.7 9.7 100 53
2 1296.5 558.5 693.9 590.5 102 820 21.6 8.0 100 54
4 1394.3 630.2 707.8 605.2 105 818 21.2 11.9 100 51
5 1426.2 628.9 734.4 622.0 107 821 20.9 12.0 100 53
6 1389.5 638.6 679.6 580.4 100 815 21.0 12.4 100 50
7 1378.1 667.8 632.1 541.1 93 812 21.0 12.7 100 47
8 1460.3 734.0 608.7 521.0 90 807 20.7 13.5 100 43
30cm×15cm 追肥苗 0 1184.7 544.0 647.3 552.1 100 821 21.7 5.5 95 55
2 1351.1 594.9 708.3 604.9 110 819 21.6 6.3 102 53
4 1445.8 659.7 733.8 627.4 114 819 21.2 7.4 104 51
5 1549.4 717.3 762.7 654.4 119 818 21.0 8.1 105 50
6 1446.4 684.2 687.4 587.7 106 817 20.6 8.9 101 48
7 1380.2 659.5 656.7 562.8 102 817 20.9 9.1 104 48
8 1670.0 922.8 638.7 548.0 99 817 20.7 10.3 105 39
30cm×11cm 普通苗 0 1121.0 493.0 601.2 511.6 100 823 22.1 3.7 100 54
2 1205.7 545.8 614.8 522.0 102 817 21.7 5.4 100 52
4 1201.2 541.6 625.0 531.9 104 820 21.5 5.9 100 53
5 1251.9 546.3 659.5 564.5 110 819 21.2 6.8 100 53
6 1342.2 577.3 714.7 611.8 120 821 21.1 9.4 100 54
7 1338.8 582.0 707.5 605.6 118 818 21.0 9.5 100 54
8 1405.2 667.5 691.5 591.2 116 822 20.8 11.5 100 50
30cm×11cm 追肥苗 0 1169.8 532.3 602.8 514.2 100 823 21.9 1.6 101 52
2 1246.4 593.5 616.1 524.3 102 817 21.4 4.6 100 50
4 1269.2 574.2 646.5 554.1 108 820 21.2 6.3 104 52
5 1364.1 632.0 681.6 583.4 113 819 21.1 7.1 103 50
6 1414.1 622.6 732.8 623.6 121 821 21.0 8.6 102 53
7 1413.3 645.3 713.5 612.2 119 818 20.7 9.4 101 51
8 1420.4 648.9 701.9 601.5 117 822 20.6 11.4 102 51

 3) 分析成績
   養分吸収量(10a当/kg)、子実への移行割合、吸収量比 
栽植
密度
苗の
種類
窒素
用量
養分吸収量(10kg) 子実への移行割合 吸収量比
窒素 燐酸 加里 珪酸 窒素 燐酸 加里 窒素 燐酸 加里
30cm×22cm 普通苗 0  13788   5917   13862   54116 62 75 17   100   43   101
2 14526 5971 14021 51386 63 76 16 100 41 97
4 15044 6128 13814 56423 65 77 18 100 41 92
5 16023 6384 14405 59045 62 74 17 100 40 90
6 15751 6156 13772 55233 64 74 17 100 39 87
7 16041 6429 12877 54966 61 68 17 100 40 80
8 15816 6192 12591 50835 61 67 17 100 39 80
30cm×22cm 追肥苗 0 12977 5735 13054 45918 67 76 16 100 44 101
2 14068 6051 13423 55684 64 75 17 100 43 95
4 15028 6281 15397 44909 64 75 15 100 42 02
5 17674 7083 15768 56836 57 70 15 100 40 89
6 16451 6538 12392 51832 58 71 18 100 40 75
7 16474 6786 13000 49446 54 67 17 100 41 79
8 17239 7115 13250 52703 54 67 17 100 41 77
30cm×15cm 普通苗 0 14470 5758 13480 58385 64 74 16 100 40 93
2 14269 5877 13295 56117 64 75 16 100 41 33
4 15796 6428 13694 55770 62 72 16 100 41 87
5 16034 6400 13416 54223 62 72 17 100 40 84
6 16487 6872 13050 53311 59 64 16 100 42 80
7 16562 7005 13292 47911 59 61 15 100 43 80
8 19087 7490 12810 56977 52 59 16 100 38 87
30cm×15cm 追肥苗 0 12414 5428 11726 46767 63 77 18 100 44 94
2 14422 5891 13747 50026 61 77 16 100 41 95
4 15957 6422 13473 56523 60 73 17 100 40 84
5 18230 7166 14874 57185 59 74 16 100 39 82
6 17169 6533 13420 51648 58 67 16 100 38 78
7 16912 6285 13299 57344 57 68 16 100 37 79
8 21879 8498 15679 65350 48 56 14 100 39 72
30cm×11cm 普通苗 0 11447 5353 11556 46427 63 74 16 100 47 101
2 11924 5598 12106 49025 61 72 17 100 47 102
4 12570 5400 11209 42033 64 75 17 100 43 89
5 13533 5694 11570 47383 66 73 17 100 42 85
6 14919 6313 12717 53647 64 75 18 100 42 85
7 15251 6243 12431 47491 63 73 18 100 41 82
8 16389 6621 12006 48262 59 70 18 100 40 73
30cm×11cm 追肥苗 0 11947 5788 11099 50461 63 76 16 100 48 93
2 13231 5938 12078 49451 62 74 16 100 45 91
4 13661 5792 12295 39429 62 74 16 100 42 90
5 14705 6881 11889 52012 61 75 18 100 47 81
6 15431 7442 12915 52691 63 78 17 100 48 84
7 15917 6565 12484 49640 62 72 15 100 41 78
8 16430 6152 12105 51610 61 69 20 100 37 74

 

Ⅲ 結果

 移植当時の1株生育量は栽植密度、肥料のえいきょうは少なく、苗の素質が強く現れ、追肥苗は常に普通苗に優る生育を示し、6月中旬頃より肥料のえいきょうが現れ、7月始めより栽植密度の密な程株間の競合が見られ分げつの発生が抑制されるが、追肥苗は常に最後まで茎数の多い状態で経過する。従って単位面積当たり初期生育量は追肥苗は普通苗に比べ、栽植密度の光なものは粗なものに比べて大である。最高分げつ期に達する時期もこれに関連して30cm×11cm追肥苗は幼穂形成期前に30cm×11cmの普通苗、の追肥苗は夫々幼穂形成当時に、又30cm×15cm普通苗は幼穂形成期よりややおくれ、30cm×22cmでは追肥苗、、普通苗共に幼穂形成期以後7日頃に当たっている。
 収量構成要素の調査によると、1歩粒数は窒素用量の少ない場合には追肥苗が劣り限度を超すと両者間に差が認められなくなる。千粒重は概して追肥苗がやや低い値を示し幼穂形成期以降の栄養状態が普通苗の場合に比べてやや劣ることによるものと考えられる。これらの結果から実際収量面では普通苗に比べて追肥苗の収量は各栽植密度共一般にやや高い割合を示すが窒素用量の少ない場合には幼穂形成期以降の養分供給がこれに伴わず、単位面積当り初期生育量の増大が却って(-)の結果をもたらす場合も認められた。この点は栽植密度が密でしかも窒素用量の少ない場合において明らかに示されている。反面窒素の適量を超えた場合の不稔及びイモチ等による減収割合は単位面積当り初期生育量が多く確保されたもの程少なく有利な結果を示した。したがって栽植密度の増加追肥苗等は安全性が高いということが出来る。
 以上のことから栽植密度の増加、追肥苗移植など単位面積当り初期生育量の増大策は初期茎数の確保が割合容易なところで、施肥量の少ない場合には生育中期からの栄養が伴わず、1穂粒数の上に強く現れてこの数を減少し有効茎歩合、稔実歩合千粒重もこれに引き続いて低下し却って減少となる場合も生ずるも適量付近では一般に初期成育の増加が有利であり適量限度を超えた場合の減収割合は少ないという結果が得られ、追肥苗としての移植は稲作の安全確収の上に効果が大であることが認められた。

 

 

D 総括

 以上の成績を総括して考えると、冷床苗代の元肥として略標準量(3.3平方米当硫安400g、過石600g、硫加200g)程度のものが施用されている場合には硫安200g、過石70g程度のものを移植3-5日前に追肥として施し、又元肥量の多い場合には、これに相当する量を元肥から差し引いて置き後これを追肥として用い移植前日迄適度の灌水を行い、養分含量の高い苗を作り、これを移植する時は新根の発生も早く活着も良好で早期に分げつを発生し初期の生育が容易に確保されるこの場合、種子下の2~3cm床土を付けての舟型移植は以上の効果を更に増大させる。
 しかしながら天候の順調な年では実際収量面には必ずしも増収効果をおよぼさない場合がある。そこで元肥窒素用量と単位面積当初期生育量との関係を検討した結果、栽植密度、追肥苗移植等の単位面積当初期生育量の増大は施肥量が少ないと過大に過ぎ生育中期から栄養がこれに伴わず減収となる場合もあるが適量付近では初期成育の増加が有利であり、適量を超えた場合でもその減収割合が少なく増収効果が見られる。又天候不順な年においては追肥苗の場合生育様相から安全度の高いことがうなずける。