【普及奨励事項】

Ⅰ　来歴並びに育成経過
　本系統は渡島支場において昭和25年「新栄」を母とし、「渡育130号」（陸羽132号×晩生栄光）を父として人工交配を行い系統選抜を続け、昭和31年「渡系152号」の系統名で生産力検定予備試験に編入し、さらに昭和33年「渡育143号」の育成番号をつけて生産力検定試験ならびに特性検定を行うとともに、昭和34年からは各地の現地試験に供試し、地方的適否を確かめたものである。
Ⅱ　特性の概要
　1.　熟期
　出穂期および成熟期は年によって多少の差はあるが、「南栄」にくらべると一両日おそく、「巴まさり」よりは3日内外早い。
　2.　草型
　穂数型で、稈長ならびに穂長は「南栄」より短かく「巴まさり」にくらべると稈長がやや短い。
　粒着は「巴まさり」程度でやや密に属し、ふ先色は褐色で、短～中位の差が少しあり、1穂中に無芒の籾と中芒の籾とが相半している。
　3.　耐病性
　「稲熱病」に対する抵抗性は「南栄」にはやや劣るが、「巴まさり」よりは強く、やや強に属する。
　4.　耐冷性
　耐冷水抵抗性では「南栄」よりやや弱く、「巴まさり」と同程度で中である。
　5.　耐倒伏性
　「南栄」程度で、「巴まさり」よりは強い。
　6.　収量
　「南栄」と大差ない。
　7.　玄米の形状および品質
　中型、中粒で腹白は比較的少なく、品質は「巴まさり」と同程度かむしろ良質である。
　8.　食味
　「巴まさり」にくらべとくに遜色はない。
Ⅲ　普及上の注意
　1.　草丈は短く倒伏に対する抵抗性は強いが、冷水抵抗性はあまり強くないので、水口田その他条件の悪いところは考慮すること。
　2.　道の南部地帯の中熟種の良質多収、として「巴まさり」と「南栄」の1部におき換えることができる。すなわち「南栄」の栽培地帯では品質改善のため比較的条件のよいところに栽培がのぞましい。
Ⅳ　試験成績
　1.　渡島支場における試験成績（昭和31～35年）
　　(1)　生育および収量調査
　　　a　普通栽培（標準肥料）

　　　b)　多肥栽培（N3割増）

　　(2)　特性調査
　　　a)　一般特性　

　　　b)　稲熱病耐病性検定試験
　　　　ⅰ）　穂首および節穂熱病　(%)

　3.　現地試験成績（昭和34～35年）