【普及奨励事項】

はつ荷「27~104」について

北海道農業試験場作物部はつ荷防虫菊研究室
北海道立農業試験場北見支場
  笠野秀雄   佐々木篤太

Ⅰ 来歴
 昭和33年に岡山県立農業試験場倉敷はつか分場より種間交雑の育種材料の分譲をうけ、昭和34年に同入種の特性調査をおこなったところ、これらの導入種中の「27~104」はそのまま品種としての実用の可能性のあることが判明したので、昭和35年より生産力を検託しているものである。
 なお、「27~104」はmentha spicata × m.arvensis 「赤茎」の選抜系統に m.arvensis 「三美」を戻交配したものといわれている。

Ⅱ 特性の概要
 1. 草丈は「万葉」よりも高く生育はきわめておおせいで葉も大きい。倒伏性は茎が太く硬いので草丈の高いわりあいには強い。
 2. 結蕾期~開花始は9月中~下旬で「万葉」と大差なく、耐病性(銹病)や耐冬性(地下茎)は(万葉)よりも強い。
 3. 生草重や取卸油量は「万葉」に比較してはるかに」おおいが、取卸油の脳分含量は低い。
 4. 脱脳油の香味性は「万葉」よりも良好と考えられている。

Ⅲ 試験成績
 A はつか防虫菊研究室の成績
  1) 生育収量調査成績
   a)  昭和34年 (10a当)
系統名 萌芽期
(月日)
草丈
(cm)
枝植数
(本)
葉数
(枚)
銹病の
被害
開花始 生草重
(kg)
油重
(kg)
割合
(%)
収油率
(%)
採脳率
(%)
万葉 5月上 99 44 186 9月下 2025 3.53 100 0.17 57
27~104 4月下 133 48 456 極少 9月中 5595 11.00 314 0.20 48
 備考  耕種梗概  秋植、60×10cm 値
      施肥量   N. 9.4kg    P25  8.6kg,    K2O  5.8kg
      区制面積  2区制、1区 8.25㎡

   b) 昭和35年 (10a当)
系統名 萌芽期
(月日)
草丈
(cm)
枝植数
(本)
葉数
(枚)
銹病の
被害
開花始 生草重
(kg)
油重
(kg)
割合
(%)
収油率
(%)
採脳率
(%)
万葉 5月中 70 41 355 1月下 1556 396 100 0.25 56
27~104 5月下 98 44 592 9月中 3531 648 164 0.18 48
 備考  耕種梗概  秋植、60×30cm 値
      施肥量   N. 9.4kg    P25  8.6kg,    K2O  5.8kg
      区制面積  乱塊法4反覆、1区 8.25㎡
      油重の最少有意差(5%) 0.91kg

  2) 取卸油脱脳油一般分析成績
種類 系統名 旋光度 屈折率 比重 Fe cl2
反応
溶解度
(70%アルコール)
酸価 化合
メントール(%)
遊離
メントール(%)
総メントール
(%)
メントール
(%)
不飽和
ケトン(%)
取卸消 万葉 -39.21 1.4648 0.8968 + clearly 0.50 2.07 77.17 79.24 15.26 -
27~104 -32.13 1.4597 0.8982 - 0.38 3.88 68.53 72.41 20.40 -
赤油 万葉 -32.94 1.4649 0.8956 + clearly 1.14 4.24 45.51 49.75 33.66 5.4
27~104 -26.27 1.4628 0.8962 - 0.16 6.13 44.76 50.89 35.92 3.0

  3) 取卸油脱脳油  gas chromatograph  分析成績
   a) 取卸油分分析成績
ピーク 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
系統名 α-ピネン
(%)
β-ピネン
P-メンテン
カンタエン(%)
リモネン
(%)
オクタノール
(%)
メントン
(%)
メンチル
アセテート(%)
メントール
(%)
プレゴン
(%)
ピペリトン
(%)
万葉 0.46 1.27 3.26 2.24 0.36 14.35 0.66 4.08 73.39 1.33 2.60
27~104 0.55 1.07 1.65 1.01 0.34 15.17 3.49 7.29 66.05 1.23 2.14

   b)  脱脳油(赤油)分析成績
ピーク 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
系統名 α-ピネン
(%)
β-ピネン
P-メンテン
カンタエン(%)
リモネン
(%)
オクタノール
(%)
メントン
(%)
メンチル
アセテート(%)
メントール
(%)
プレゴン
(%)
ピペリトン
(%)
万葉 1.24 3.09 9.27 5.10 0.58 26.42 2.09 5.52 36.77 1.97 1.35 6.60
27~104 0.84 2.05 2.65 1.69 0.63 27.90 7.25 10.11 41.54 1.20 0.54 3.58

 B 北見支場の成績
   生育収量調査成績(昭和35年10a当)
系統名 萌芽期
(月日)
草丈
(cm)
枝植数
(本)
葉数
(枚)
銹病の
被害
収穫期
(月日)
生草重
(kg)
油重
(kg)
割合
(%)
収油率
(%)
採脳率
(%)
万葉 5.13 87 36 476 9.16 2464 5.78 100 0.23 55
27~104 5.16 127 35 576 9.21 5775 8.79 152 0.15 47
 備考  耕種梗概  植付期 11月6日、 畦巾 50cm、 植付量 150kg
      施肥量   堆肥 1.5t、石灰375kg、 N 8.0kg,    P25  9.5kg,    K2O  6.0kg
      銹病防除  1回  7月11日、2回  7月25日、3回  8月9日、4回  8月25日
      区制面積  乱塊法、3反覆、1区 8㎡
      収穫期   万葉は開花始、27~104は結蕾期

Ⅳ 普及上の注意
 1. 現在の段階では銹病の罹病率は低いが「万葉」の前例もあるから十分に留意が必要である。
 2. 一般耕種法は「万葉」に準ずればよいが生育がおおせいであるから、とくに肥培管理にたいし周到な注意をおこたってはならない。