【普及奨励事項】

大野地方における苺の栽培について

北海道立農業試験場渡島支場
  白金 茂    荒木喜六

Ⅰ 試験の目的
 近年来の急速な苺栽培の普及にともない、新品種ならびに新栽培技術の導入をみているが、気候風土のことなる本道には、そのままに受入れ難い点がおおいので、これら新品種の地方適否ならびに道南地方に適する栽培法を知るためにおこなった。

Ⅱ 試験成績

 A 品種地方適否試験
 1 試験方法
  1) 1区面積および区制  1区 9.7㎡ 1区制
  2) 供試積 844㎡
     (33年度116㎡、34年度291㎡、35年度437㎡ )
  3) 供試品種
   フェアファックス、ドルセット、幸玉、フェアランド、東北1号、東北2号(ふじさき)、東北3号、シウー、テンプル、テネシアン、ロビンソン、保光、宝玉紅香、モナーク、ダナー、紅露、築紫
   (フェアランド、シウーは35年に中止、宝玉、紅香、ダナー、モナークは34年より開始、紅露、築紫は35年より開始)
  4) 耕種梗概
    a)  施肥量(10a当キログラム)
    堆2269(定植時耕鋤前に全面散布)
    魚63、硫安31、過石64、硫加12(定植時植溝に条施)2年目以降は、8月上旬に、堆肥を除く全量を畦間に施し、中耕する。
   b) 試験の操作
    8月8日に5葉苗を揃えて、畦巾90cm、株間24cmの栽植密度で平畦に定植し、いごは、ずいじ、ランナー除去、中耕、除草をおこない、翌年、収穫終了後(7月下旬~8月上旬)分株
    を掻取って株立とし、施肥中耕後、生長点を埋没しないように土寄せをおこない、2年目、3年目は同様の操作を繰り返した。(株掻きは、株の繁茂密生による花梗の弱細化、花数
    過多と、それにともなう果実の矮小化、粒揃いの不良化、病害虫の多発化等を防止するためにおこなう。
    土寄せは、根の浮上がりになる新根発生不能と、それにともなう、新葉発生不能、および、風による株の動揺等による株の衰弱を防止するためにおこなうもので、この結果、初年目
    に平畦であったものも、2年、3年と漸次高畦になって行く、ただし、土を寄せすぎて株の芯部を埋没した場合には、逆に、新葉発生不能と、それにともなう新根発生不能により、株の
    発育停止と衰弱をきたすので根際までとする。)
    以上の他は標準耕種法に準じておこなった。

 2 試験結果  

  第1表  生育特性表
品種名 (1株当)
分株数(株)
草丈(cm) ランナ-
発生量
1株当
花数
腐敗果
(主に
灰色
カビ病)
貯蔵性 草型 玉揃 肉質 食味 色沢 平均1果重(g)
1

2

3

1

2

3

1

2

3

テンプル 2.7 9.0 - 13.4 22.3 - やや少 開張 深紅   6.9 8.9   6.5 -
宝玉 2.7 4.0 - 22.3 20.6 - やや多 やや多 - 紅赤     5.6   4.9 -
紅香 2.6 3.3 - 16.6 18.6 - やや多 やや多 - やや劣 深紅     5.1   4.1 -
モナーク 2.3 2.3 - 19.3 21.3 - - 開張 紅赤      5.2   4.4 -
ダナー 2.7 5.0 - 22.0 20.0 - - - 開張 深紅     5.0   4.7 -
紅露 5.0 - - 25.0 - - やや多 - 直立 やや良 鮮紅     5.6   - -
築紫 1.0 - - 22.6 - - 極少 - 開張 紅赤     8.8   - -
テネシアン 2.9 5.0 6.6 19.7 20.0 22.3 極多 やや劣 開張 鮮紅 7.2 6.7 5.3 5.9 4.0 3.9
幸玉 3.1 4.0 3.6 24.9 25.0 25.3 やや少 中~開張 紅赤 8.7 9.3 7.1 10.4 6.5 4.9
ロビンソン 1.9 4.0 4.3 13.8 18.0 16.7 やや多 開張 やや緊 淡紅 9.9 11.4 7.3 11.8 6.8 6.5
フェアファックス 4.0 6.3 4.6 18.8 21.0 21.3 やや優 やや緊 やや良 深紅 6.9 9.2 6.4 9.4 6.0 4.6
ドルセット 4.8 9.3 5.6 17.1 17.0 20.6 やや多 直立 やや悪 紅赤 8.1 7.8 5.5 8.3 4.8 5.4
東北1号 4.7 6.8 6.3 17.5 23.0 19.6 やや少 やや優 直立 やや良 やや良 深紅 8.2 9.2 6.2 10.0 4.9 6.1
東北2号 4.0 5.3 6.6 24.3 25.6 29.3 極多 直立 暗紅 4.7 5.7 3.9 5.6 3.6 3.7
東北3号 4.1 10.2 5.3 18.6 22.0 25.0 極多 直立 淡紅 5.2 5.7 4.5 4.9 4.3 4.3
保光 1.6 3.7 3.0 19.1 19.0 17.0 極少 開張 やや悪 やや緊 紅赤 11.1 12.3 9.7 10.6 6.7 5.5
シェアランド 3.0 4.3 3.0 18.8 21.0 21.3 開張 やや緊 紅赤   6.6 7.7   7.9 3.6
シウー 3.1 6.0 - 10.8 - - やや多 極多 開張 やや劣 紅赤   5.8 4.3   3.6 -

 第2表 収量表(1)
品種名 年度 1年株 2年株
半旬別収量割合(%) 10a当
収量(kg)
同左
割合(%)
半旬別収量割合(%) 10a当
収量(kg)
同左
割合(%)
1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6
テンプル 33 20 33 21 10 13 3 1202 56
34 42 13 34 11 0 0 845 45 20 22 20 19 12 7 1291 50
35 7 18 41 15 14 5 1145 66
宝玉 35 0 8 38 22 26 6 975 83 0 5 27 27 34 6 1086 63
紅香 35 9 20 33 19 16 3 633 54 7 6 38 23 21 5 582 34
モナーク 35 2 17 43 13 22 3 587 50 29 18 26 15 12 0 444 26
ダナー 35 1 13 35 17 25 9 451 38 0 7 39 21 30 3 387 22
紅露 35 0 2 38 21 30 9 1198 101
築紫 35 0 8 36 17 32 7 911 77

 第3表 収量表(2)
品種名 年度 1年株 2年株 3年株
半旬別収量割合(%) 10a当
収量(kg)
同左
割合(%)
半旬別収量割合(%) 10a当
収量(kg)
同左
割合(%)
半旬別収量割合(%) 10a当
収量(kg)
同左
割合(%)
1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6
テネシアン 33 46 39 13 2 0 0 1301 60
34 55 12 28 5 0 0 1011 54 32 26 18 15 6 3 1820 71
35 24 30 33 7 6 0 514 44 37 25 27 7 4 0 887 51 44 26 22 5 3 0 1101 92
平均 37 31 16 9 5 2 945 54
幸玉 33 12 42 30 9 6 1 1614 75
34 31 23 38 8 0 0 1310 69 5 21 19 22 17 16 2101 82
35 10 18 35 14 20 3 796 67 18 17 23 22 17 3 1320 76 16 19 24 16 21 4 941 79
平均 10 31 29 15 12 3 1240 71
ロビンソン 33 17 31 26 14 11 1 1481 69
34 17 17 42 24 0 0 1159 61 3 12 16 31 19 19 2052 80
35 6 12 36 17 28 1 598 51 6 14 27 23 28 2 1364 79 9 19 25 21 24 2 1299 109
平均 12 20 24 18 17 9 1079 62
フェアファックス 33 3 29 27 16 22 3 2153 100
34 2 16 18 27 18 19 1889 100 0 10 22 29 24 15 2557 100
35 2 22 36 21 17 2 1181 100 7 16 37 21 17 2 1733 100 10 21 29 17 18 5 1191 100
平均 3 23 26 21 20 7 1741 100
ドルセット 33 7 36 34 13 9 1 1680 78
34 3 25 19 23 17 13 1173 62 3 24 20 26 13 14 1901 74
35 6 24 41 15 14 0 687 58 14 18 29 18 18 3 1032 60 18 14 28 18 22 0 975 82
平均 5 30 30 17 12 6 1180 68

 第4表 収量表(3)
品種名 年度 1年株 2年株 3年株
半旬別収量割合(%) 10a当
収量(kg)
同左
割合(%)
半旬別収量割合(%) 10a当
収量(kg)
同左
割合(%)
半旬別収量割合(%) 10a当
収量(kg)
同左
割合(%)
1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6
東北1号 33 6 37 26 15 15 1 1781 83 0 8 20 38 18 16 2231 87
34 27 14 44 15 0 0 1367 72
35 3 20 38 11 21 7 840 71 4 16 36 16 23 5 1103 64 9 19 37 14 19 2 1183 99
平均 5 28 24 17 18 8 1329 76
東北2号 33 9 28 30 16 14 3 3298 107
34 17 12 49 22 0 0 1540 82 0 14 16 29 17 24 2593 101
35 4 16 37 19 22 2 1356 115 6 19 31 19 21 4 1412 81 2 17 31 19 26 5 1996 168
平均 6 21 26 19 19 9 1731 99
東北3号 33 12 41 27 12 7 1 1847 86
34 34 13 47 6 0 0 1365 72 1 17 23 27 22 10 2434 95
35 6 28 43 10 11 2 1098 93 10 31 41 11 6 0 1415 82 9 27 39 12 12 1 1613 135
平均 8 34 27 16 13 2 1436 82
フェアランド 33 19 45 21 8 7 0 1543 72
34 48 19 26 7 0 0 891 47 19 29 22 13 10 7 1269 50
平均 19 39 20 10 8 4
シウー 33 20 31 22 13 11 3 1197 56
34 31 18 37 14 0 0 416 22 26 5 16 24 22 7 172 7
平均 18 28 21 16 12 5
保光 33 30 34 20 9 7 0 535 25
34 39 21 33 7 0 0 246 13 6 12 31 22 18 11 989 39
35 22 46 19 13 0 0 448 38 5 21 35 23 13 3 290 17 19 16 31 16 18 0 591 50
平均 15 28 30 15 10 2 410 24

 3 考察
  1) 草型 
   分株数の多い直立叢生型、分株数の少ない開張疎生型、ならびにその中間型に分けるとつぎのごとく大別される。
   a) 直立叢生型 東北1号、東北2号、東北3号、ドルセット、紅露
   b) 開張疎生型 保光、ロビンソン、シウー、モナーク、ダナー、築紫、テネシアン
   c) 中間型 フェアファックス、フェアランド、幸玉、テンプル、紅香、宝玉
    若干の例外はあるが、一般に、直立叢生型の品種は小果多収性、開張疎生型は大果寡産性の傾向があるように考える。
  2) 草丈
   東北2号、紅露、幸玉、宝玉、築紫、ダナーが長く、シウー、フェアランド、テンプル、ロビンソン、紅香は短く、フェアファックス、ドルセット、東北1号、東北3号、テネシアン、保光、
   モナークは中間であった。各品種共通して、株の年次を重ねると草丈は高くなるが、これは、根の浮上がりによるものである。畦巾、株間の広狭は、この草丈の長短により加減する
   必要がある。
  3) ランナー
   テネシアン、幸玉、紅香、東北2号、東北3号、テンプル、ドルセットが多く、フェアファクス、保光、ダナー、築紫、東北1号は少なく、フェアランド、シウー、ロビンソン、宝玉、紅露は
   中間であった。例外もあるが、一般的傾向として、大果種はランナーの発生少なく、小果種は発生がおおいようである。
  4) 腐敗果(主として灰色カビ病)
   シウーを最多として、東北1号、東北3号、保光、ロビンソン、宝玉、紅香の順でおおく、フェアファックス、ドルセット、フェアランドは中位であったが、東北2号、モナーク、テネシアン、
   紅露、築紫、幸玉は少なかった。腐敗果発止割合は、草型(叢生、疎生)や株年次、果実の硬軟に関係ないように考える。
  5) 玉揃
   幸玉、東北2号、テネシアン、東北3号、ドルセット、紅露、ダナー、モナークが玉揃い良く、東北1号、保光、フェアファックスは玉揃い悪く、その他の品種は中間であった。
   玉揃いは、例外があるが、大果種は悪く、小果種は良好な傾向がある。
  6) 果重
   成熟期間の前後で異なるが、全期間をつうじての平均1果重では、保光を最大として、築紫、ロビンソン、幸玉、東北1号、フェアファックスが大果種に属し、東北2号、東北3号、
   シウー、モナーツ、紅香、宝玉、紅露は小果種に属し、ドルセット、フェアランド、テンプル、テネシアンは中果種に属した。
   また、成熟期間の前後による一果重の差は、大果種が大きく、小果種が小さい。
  7) 果実の外観
   ロビンソンは、光沢ある淡紅色と特殊な果形、テネシアン、紅露は鮮紅色で整形、幸玉は朱紅色で整形、しかも、いづれも採取後の変色が少なく優れている。
   また、フェアファックス、、東北1号は採取後の変色はやく(暗紅色になる)整形をかき、東北2号は、採取時すでに暗紅色を呈し、フェアランド、テンプル、保光は、果実先端に緑部を残
   すとうの欠点がある。
  8) 食味(生食用) 
   幸玉、ロビンソン、保光、が良好、シウー、テンプル、フェアランド、東北2号、東北3号は劣り、その他は中間であった。ただ、34年のごとく成熟期間が多雨過湿の場合は、ロビンソン
   の食味は特に淡白になるようにみられた。
  9) 収量
   年により若干順位の変化はあるが、1年株では、フェアファックス、東北2号、紅露が大差なく多収を示し、ついで、東北3号、宝玉、築紫、東北1号、幸玉、ドルセットがおおく、ロビンソ
   ン、テネシアン、紅香、フェアランドは中間、ダナー、モフーク、テンプル、さらに保光、シウーは低い収量を示した。
   また、時期別(半旬別】収量割合により、早晩性を考えると、テネシアン、テンプル、フェアランドは初期収量が高く、早熟種に増施、築紫、紅露、ダナー、宝玉は晩熟種に属し、その他
   は中間種に属する。2年株では、1年株にくらべて、各品種ともかなりの増収を示したが、品種間の収量割合は、ロビンソン、幸玉のいちじるしい増加以外は大体、1年株と同様の割合
   を維持するようにみられた。3年株では、2年株にくらべると、東北2号、東北3号、テネシアン、保光が増収し、ドルセット、東北1号、ロビンソンは大差なく、フェアファックス、幸玉、フェ
   アランドは減収した。また、各品種間では、東北2号、東北3号がいちじるしく高い収量を示し、フェアランド、保光の収量が低かった他は、大差がなかった。 

 B 定植時期試験
 1 試験方法
  1) 1区面積および区制 1区 9.7㎡ 1区制
  2) 供試面積 465㎡
     (33年度 58㎡、34年度 155㎡、35年度 252㎡)
  3) 供試品種「フェアファックス」
  4) 試験区別
   a)  定植時期
    33年度:8月8日、9月8日、10月8日…(前年)
    34、35年度:7月25日、8月8日、9月8日、10月8日…(前年)
   b) 苗の区分
    33年度:初期苗、中期苗、後期苗
    34、35年度:初期苗、中期苗、後期苗、晩期苗
   c) 苗の状態
    初期苗:春季発生苗で、8月8日には4~5葉で根は白色細根が少ない。
     9月8日には6~7葉(基葉1~2枚は枯凋更新済み)で根は褐色を呈し細根も可成り発生している。
     10月8日には7~8葉(基葉2~3枚は枯凋更新済み)で根は黒褐色となり細根は極めて多くなる。
    中期苗:夏期発生苗で、状態は初期苗の約1ヵ月遅れである。
    後期苗:初秋に発生した苗で10月8日には3葉程度

  5) 耕種梗概 定植時期の異なる以外は品種地方適否試験に準じた。

 2 試験結果

  第5表 定植時期別収量表 (1) 
定植時期
及び
苗区別
年度 1年株 2年株 3年株
半旬別収量割合(%) 平均
1果重
(g)
10a当
収量
(kg)
同左
割合
(%)
半旬別収量割合(%) 平均
1果重
(g)
10a当
収量
(kg)
同左
割合
(%)
半旬別収量割合(%) 平均
1果重
(g)
10a当
収量
(kg)
同左
割合
(%)
1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6
初期苗
7月25日
34 1 15 25 23 23 13 9.5 2092 93
35 3 15 40 16 23 3 5.5 1156 93 12 20 29 21 13 5 5.8 1541 90
平均 2 15 30 20 23 10
初期苗
8月8日
33 8 38 25 13 14 2 9.5 2198 100
34 2 9 16 28 23 22 10.1 2238 100 1 14 19 27 22 17 7.7 30.29 100
35 8 14 32 20 20 6 6.7 1240 100 20 15 28 17 18 2 5.9 1707 100 2 13 34 21 24 6 5.5 1650 100
平均 5 22 22 20 19 12
中期苗
8月8日
34 0 11 22 30 16 21 10.4 2293 102
35 16 12 28 23 17 4 6.2 1186 96 27 15 22 12 19 5 5.8 1767 104
平均 3 11 23 29 16 18 12
初期苗
9月8日
33 34 21 23 10 9 3 7.2 1012 46
34 21 12 9 30 19 9 9.2 1080 48 4 18 19 24 19 16 7.7 2383 79
35 31 15 20 14 13 7 6.9 1040 84 13 14 34 22 14 3 5.7 1410 83 3 27 31 21 18 5 5.6 1479 90
平均 28 16 17 19 14 6
中期苗
9月8日
33 34 27 22 8 8 1 7.8 779 35
34 13 11 18 23 17 18 9.0 703 31 1 18 18 26 20 17 5.7 2543 84
35 42 17 13 13 10 5 6.6 732 60 9 12 21 12 14 32 5.4 1992 117 6 21 26 17 27 3 4.9 1444 88
平均 24 16 19 17 13 11
後期苗
9月8日
34 14 16 15 20 20 15 8.8 1108 50
35 56 11 13 9 9 2 7.0 858 70 10 26 30 20 13 1 5.9 1205 71
平均 26 14 15 17 17 11

 第6表 定植時期別収量表 (2)
定植時期
及び
苗区別
年度 1年株 2年株 3年株
半旬別収量割合(%) 平均
1果重
(g)
10a当
収量
(kg)
同左
割合
(%)
半旬別収量割合(%) 平均
1果重
(g)
10a当
収量
(kg)
同左
割合
(%)
半旬別収量割合(%) 平均
1果重
(g)
10a当
収量
(kg)
同左
割合
(%)
1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6
初期苗
10月8日
33 32 28 23 12 4 1 7.8 500 23
34 34 21 14 23 5 3 9.5 465 21 3 18 19 23 20 17 9.3 2308 76
35 39 17 28 9 7 0 8.2 636 52 12 23 35 19 11 0 5.6 1428 84 10 17 31 21 17 4 5.9 1518 92
平均 34 23 21 15 5 2
中期苗
10月8日
33 39 32 20 5 3 1 8.0 399 18
34 30 25 9 19 11 6 8.7 452 20 4 19 19 26 18 14 8.1 2463 81
35 28 19 25 13 12 3 6.0 360 24 19 17 30 20 12 2 5.9 1554 91 2 22 30 25 17 4 6.0 1531 93
平均
後期苗
10月8日
33 33 39 20 5 3 0 8.7 257 12
34 41 12 16 19 10 2 8.5 347 16 2 20 26 18 20 14 8.5 2195 72
35 30 23 26 11 6 4 7.1 364 30 26 14 28 18 11 2 7.0 924 54 8 20 29 21 17 5 5.0 1356 82
平均 36 23 20 13 7 1
晩期苗
10月8日
34 31 24 13 21 8 3 9.5 450 20
35 48 15 23 8 4 2 9.0 504 40 18 22 32 18 10 0 5.9 1302 76
平均 37 21 17 16 7 2

 第7表 定植時期別生育表
品種名 初 7.25 初 8.8 中 8.8 初 9.8 中 9.8 後 9.8 初 10.8 中 10.8 後10.8 晩 10.8
1

2

1

2

3

1

2

1

2

3

1

2

3

1

2

1

2

3

1

2

3

1

2

3

1

2

分株数(株) 3.2 4.0 3.3 6.8 6.0 3.2 4.3 2.3 4.7 5.0 1.9 5.3 4.0 2.2 3.6 1.2 4.2 4.0 1.0 3.3 4.3 1.1 3.2 4.0 1.0 4.3
草丈(cm) 22.3 23.6 22.3 23.0 25.0 21.0 22.0 19.0 23.0 26.3 20.6 24.3 23.6 21.3 23.6 15.3 23.0 26.3 14.3 22.6 24.3 16.0 21.0 26.3 13.6 24.0

 3 考察
  1) 分株数
   1年株では定植時期の早い程多くなるが2年株になると全般に株数は増加する。しかし前年の定植時期による差は縮小され、さらに3年株になるとその差はほとんど認められなくなっ
   た。また全般を通じて苗の区別による差は判然としなかった。
  2) 草丈
   1年株では定植時期の早いほど高くなるが、2年株になると前年の定植時期による差は消失した。また全般を通じて苗の区別による差は判然としなかった。
  3) 1果重
   1年株では成熟初期に7月25日、8月8日植区に大果の割合が多くなる傾向がみられたが、全期間の平均1果重では定植時期による差はみられなかった。
   1年株から2年株になると果実は小さくなるが、3年株では2年株と大差がなかった。
  4) 熟期
   半旬別収量割合で考えると、2年株、3年株では差がなくなったが、1年株では定植時期の晩い程初期割合が高くなる。但し絶対量では早期定植のものに劣る。
  5) 収量
   1年株では8月8日植区に比較して、7月25日植区は大差なかったが、9月8日植区は約5割、10月8日植区は約8割の減収を示した。ただ原因は判断しかねたが、35年度は前2ヵ年にく
   らべ約半分の終了にとどまる不作年であったが1年株の晩植区は前2ヵ年と大差ない収量を示した。2年株になるとその差は大幅に縮小され、3年株では大差がなくなった。
   また株の年次を問わず苗の区別による差は判然としなかった。

 C 栽植密度試験
 1 試験方法
  1)1区面積および区制  1区 6.5~13㎡(3畦)
                  1区制
  2)供試面積 414㎡
           (33年 58㎡、34年 117㎡、35年 293㎡)
  3)供試品種        33年度 幸玉
                  34、35年度 フェアファックス
  4)試験区別
10a当株数 畦巾 株間 植栽法 定植年次
2469 90 45 1条植 35
4629 90 24  〃 33 34 35
6944 60 24  〃 33 35
6944 120 24 30cm巾2条植 33 34
9259 90 24  〃 33 34 35
13888 60 24  〃 34 35
14814 90 15  〃 33 34
24691 90 9  〃 33 34 35

 2 試験結果

 第8表 栽植密度別生育表
項目 年次 2416
(90×45)
4629
(90×24)
6944
(60×24)
6944
(120×24)
9259
(90×24)
13888
(60×24)
14814
(90×15)
24691
(90×9)
分株数
(株)
1年 3.0 3.4 2.7 2.8 2.9 2.7 2.7 1.5
2年 5.3 4.8 5.0 3.7 2.3 3.0 2.5
3年 3.3 5.0 2.6 0.6 2.6 2.6
草丈
(cm)
1年 22.6 21.5 22.1 20.1 20.0 22.0 23.7 26.2
2年 21.3 19.3 18.0 22.0 19.3
3年 26.6 26.6 25.0 26.3 25.0 23.0
糎ランナー(本)
腐敗果
(%)
1年 4.9 4.9 3.8 5.9 6.2 3.8 5.8 4.1
2年 2.3 2.6 1.6 3.2 1.0 3.2 1.9
3年 1.6 1.8 0.6 0.6 1.0 0.6

 第9表 栽植密度別収量表
年度 栽植密度
(10a当株数)
1年株
半旬別収量割合(%) 平均
1果重
(g)
10a当
収量
(kg)
同左
割合
(%)
1 2 3 4 5 6
33年 4629株(90cm×24cm) 4 17 34 26 13 6 7.7 1382 100
6944株(60cm×24cm) 6 15 38 23 14 4 7.7 1862 138
6944株(120cm×24cm×2) 5 18 31 24 15 7 7.7 1409 102
9259株(90cm×24cm×2) 5 16 34 23 16 6 7.5 2309 167
14814株(90cm×15cm×2) 3 23 32 23 12 7 7.1 2242 162
24691株(90cm×9cm×2) 2 22 35 20 14 7 6.3 2294 166
    1 2 3 4 5 6      
34年 4629株(90cm×24cm) 2 15 18 26 18 21 9.2 2196 100
6944株(120cm×24cm×2) 1 10 18 26 24 21 8.9 2569 117
9259株(90cm×24cm×2) 1 11 18 30 20 20 8.5 3077 140
13888株(60cm×24cm×2) 4 15 16 32 19 14 8.7 3103 141
14814株(90cm×15cm×2) 1 13 21 27 23 15 9.0 3402 155
24691株(90cm×9cm×2) 0 15 22 29 26 8 8.4 3103 141
    1 2 3 4 5 6      
35年 2469株(90cm×45cm) 12 18 36 19 12 3 9.3 548 56
4629株(90cm×24cm) 21 19 29 20 9 2 7.3 978 100
6944株(60cm×24cm) 24 18 30 16 9 3 6.7 1049 107
9259株(90cm×24cm×2) 17 16 33 19 13 2 6.6 1479 151
13888株(60cm×24cm×2) 15 25 32 19 9 0 6.4 1701 174
24691株(90cm×9cm×2) 14 23 28 18 14 3 5.3 1851 189
年度 栽植密度
(10a当株数)
2年株
半旬別収量割合(%) 平均
1果重
(g)
10a当
収量
(kg)
同左
割合
(%)
1 2 3 4 5 6
34年 4629株(90cm×24cm) 6 23 24 22 12 13 7.6 2226 100
6944株(60cm×24cm) 8 23 22 25 14 8 8.7 2844 128
6944株(120cm×24cm×2) 5 24 23 21 16 11 8.0 1844 83
9259株(90cm×24cm×2) 5 21 24 26 16 8 7.4 2721 122
14814株(90cm×15cm×2) 6 20 27 30 12 5 7.5 2923 131
24691株(90cm×9cm×2) 9 17 25 27 14 8 6.4 2767 124
    1 2 3 4 5 6      
35年 4629株(90cm×24cm) 26 13 31 17 13 0 6.7 1254 100
6944株(120cm×24cm×2) 12 21 33 18 15 1 5.4 1343 107
9259株(90cm×24cm×2) 19 23 29 15 12 2 5.5 1374 110
13888株(60cm×24cm×2) 29 26 26 11 8 0 5.4 1467 117
14814株(90cm×15cm×2) 21 26 29 14 9 1 5.9 1614 129
24691株(90cm×9cm×2) 20 22 28 14 13 3 5.4 1731 138
     3年株
1 2 3 4 5 6      
35年 4629株(90cm×24cm) 12 21 28 17 19 3 5.6 1527 100
6944株(60cm×24cm) 18 23 21 14 21 3 5.7 2023 132
6944株(120cm×24cm×2) 14 23 27 18 16 2 5.7 1438 94
9259株(90cm×24cm×2) 15 24 24 19 16 2 5.6 1741 114
14814株(90cm×15cm×2) 19 24 25 14 17 1 5.0 1466 96
24691株(90cm×9cm×2) 21 21 24 15 17 2 4.3 1196 78

 3 考察
  1) 分株数
   株の年次に関係なく、栽植密度を増すほど少なくなる。
  2) 1果重
   株の年次に関係なく、栽植密度を増す程小さくなる傾向を示した。
  3) 腐敗果(主に灰色カビ病)
   栽植密度に関係ないと見られる。
  4) 熟期
   半旬別収量割合で比較したが、栽植密度による影響はみられない。
  5) 収量
   1年株では、栽植密度が増すにつれて収量を増すが、10a当、9000株以上に密度を増しても収量の増加は顕著でなく、また1年限りの結果では同じ栽植密度の場合には、2条植にする
   と収穫その他の管理には便利であるが、1条植にした場合より減収になる傾向があるようである。2年株になると、栽植密度による収量差は縮少されるが、傾向は1年株と大差がなか
   った。3年株になると、栽植密度の高い区は減収の傾向を示した。

Ⅲ 普及上の注意
 早出し用品種としては、じゅうらい、七飯早生等の品種が栽培されているが、これら品種は、線虫(葉)や、バイラスに汚染され、収量、品質ともにきわめて劣り、しかも、これら品種の健全苗の入手はほとんど不可能にもかかわらず、早期出荷のために、未だ、全苺耕作面積の2割前後の作付面積を維持している状態で、これらじゅうらいの早熟品種にかわるものとして、テネシアンが適当と考える。
 多収品種としては、比較的欠点の少ないフェアファクスが適当と考える。東北2号は多収ではあるが、果実の特性から考えると生食向ではないので除いた。
 良質品種としては、食味、外観が良好で採取後の変色も少なく、平均1果重が大きく、しかも玉揃いの良好な点で、幸玉、また大果で、特殊な果形とすぐれた色沢、酸味の少ない食味等の点で、ロビンソンが適当と考える。
 晩出し用品種としては、じゅうらい、苺の出盛り期の後半になると、小果になり、大果需要の声が高いので、後半に大果を産する、築紫が適当と考える。なお、紅露については、優れた点も多いので今後の検討を要すると考える。すなわち、早出し用品種としてテネシアン、良質品種として幸玉、ロビンソン、多収品種としてフェアファックス、晩出し用品種として築紫が適当と考える。
 定植の時期については、早期を有利とするが、8月上旬より以前の定植は増収効果が認められず、かつ苗の採取も困難なので8月上旬頃の定植が適当と考えられる。なお定植の限界期としては従来いわれているように9月上旬と考えればよい。
 また栽植密度については、栽培方式や品種によって一概に決めることが困難であるが10a当7000~9000株の範囲で適宜決める方がよい。