【普及奨励事項】

十勝農試型豆刈機(ビーンカッター)について

道立農業試験場十勝支場
 渡辺 隆    斎藤 亘

Ⅰ. 機体の構造概要
 原理は図のように地下部(培土された畔の頭部)を切断することによって、分枝の飛散、莢の中途切断などを回避するように設計されている。

  A図 ビーンカッター切断部位

 30P.S内外の車輪型トラクター前部に取り付け、油圧作用を利用して刈取装置の昇降を行う。4畦用で各畦1枚の刈取刃を有し、2枚1組が山形になっている。刃は長さ120cm巾9cmで特殊2層鋼鉄である。刈取刃の土中貫入深、貫入角は調節できる。蔓性作物の刈取に支障ないよう回転自在な傾斜円筒製の草分け装置が刈取刃前方に設けてある。

  B図 ビーンカッター取付略図

Ⅱ. 普及上の注意
 1. 土壌条件: 洪積性火山灰地、沖積性各種土壌に適応できる。石礫地・拳大の石礫の存在する土壌では刈取刃を損傷し、磨耗を大きくするので使用できない。埋れ株などの障害物を完全に取り除き、耕転整地をできるだけていねいにして平坦な播種床をつくることが肝要である。
 2. 地形: 平坦地がもっとも作業しやすいが、若干の傾斜はトラクターの運転技術により補うことができる。傾斜よりもむしろ地表面の凹凸が作業成績に大きな影響を与える。凹凸のははだしい土地での使用は困難であるから、耕転整地のときはつとめて平坦にすること。
 3. 作物: 畦巾は61cmが最適であり、株間をやや狭目にすることがこのましく、できうれば条播がよい。枕地として12畦を横畦としておく必要がある。除草作業はウイーダー・カルチベーターなどの使用により極力雑草を除去しておくこと。培土は中培土程度とし、各畔の培土は均一にすること。
 4. 刈取期: 完熟期をすぎると引抜ける割合が増加するから、完熟期あるいはやや早目に作業を実施すること。ただし作業後の天候を考慮する必要がある。
 5. 刈取時刻: 裂莢を開始する9時前頃までには作業を終了すること。曇天のばあいは裂莢開始時刻がおくれ、あるいは終日裂莢しないことがあるので、そのときの裂莢状態をみて作業を続行すること。
 6. 刈取作業: 30P.S内外のトラクターで作業することがこのましく、トラクターの轍間距離を畦巾の2倍にすることがのぞましい。刈取速度は2.5~3m/secで作業したばあいは、根部の附着したものが10%程度で他は完全に刈取られ、ほぼ完全な刈取状態になる。
 7. 刈取刃: 絶えず鋭利に保つこと。1~2ha毎にグラインダーにて研磨しあるいは替刃と交換すること。土中貫入深度は培土の状況、土壌条件、作物によってことなるが3~4cm程度に調節すること。

Ⅲ. 作業能率の試算
 畦巾55cm、作業速度2.5m/sec、廻行時間を実作業時間の20%、刈取装置調節時間を実作業時間の30%とみれば、1ha当り総作業時間は45分となる。移動その他をみても1ha1時間程度である。

Ⅳ. 作業経費の試算
 豆刈機の新調価150,000円、耐用年数10年、廃棄価15,000円、利子年7分5厘、トラクター本機の経費1時間700円と仮定する。年間90時間、120ha使用すれば10a当り69.5円、年間50時間、66.5ha使用すれば10a当り83円となる。