【普及奨励事項】

Ⅰ　来歴

　「ジャイアンツ」は、昭和26年に、米国より導入された、細胞質雄性不稔系統ＥＦ-Ｔを利用した、各種単交配と、昭和30年青森県立農試より分譲をうけた、青森県在来のエローデントとの間の一代雑種である。昭和31年に、単交配×品種の組合せが行われ、昭和32年より生産力の検定が行われた。昭和34～36年の3ヶ年は、十勝、北見各場において、系統適応性検定試験が実施され、同時に昭和34～36年の3ヶ年は、本場渡島、上川、天北の各支場および原々種農場で原種決定本試験を実施した。昭和35～36年の2ヶ年は全道15ヶ所で原種決定現地試験を実施した。その組合せ内容は次の通りである。
　ジャイアンツ　　（ＷＦ-Ｔ×Ｗ-22）ＭＳ×青森在来エローデント
　使用した自殖系統は、昭和26年より、種芸部において、選抜維持されたものであり、青森在来エローデントは、昭和30年より同様、姉妹交配により維持され、昭和35年よりは、循環選校により、組合せ能力及び稔性回復率の選抜を実施している。自殖系統の育成地及び　Origin　は次のとおり。
　WFT　　ヴイスコシン農試育成、Originは、Texas型細胞質雄性不稔個体と　India WF9　の戻し交配
　W-22　ヴイスコンシン農試育成　Originは、2dnCycle、Ｂ10×W25

Ⅱ　特性の概要
　（1）　熟期は、府県産エローデント中最も早熟種である青森県エローデントより、約5日早熟であり、一方本道の最も晩熟種である複交3号より約5日晩熟である。本道中央部以南では確実に黄熟期に達するし、道東、道北地域においても、糊熟期近くまで達する。
　（2）　総生草重は、府県産エローデントに比して、5～10%低く、複交3号よりは50～80%多収である。
　（3）　子実重は、府県産エローデントに比して、20～50%増収し、複交3号よりは、やや劣る。年次による生産量の変動は少なく安定している。
　（4）　殻穂は、円筒型で太く長い。粒列は12～22行、1列粒数は、約40粒であり、粒数約600を数える。粒は、黄色のデント種であり、エローデントに比して、やや小さい。
　（5）　草丈、着穂高ともに、エローデントより低く、倒伏には強い。
　（6）　栄養収量の試算値によると、飼料単位、可消化純蛋白共にエローデントに比して約20%増収し、年次間の変動も少ない。但し、道東、道北地域では、熟度の関係で、むしろ、複交3号、8号などに劣る場合もある。
　（7）　細胞質雄性不稔系統を利用し、かつその稔性回複因子を保有する花粉親を利用しているので、大量採取の場合に、除雄操作を必要としないために、種子価格の低減をはかることが出来る。
　（8）　熟期の点より、本道において安全に採取することは困難であり、いづれ、本道より暖地にて採取することが望ましい。

Ⅲ　普及上の注意
　玉蜀黍「ジャイアンツ」は、コーンサイレージ用として、北海道中央部以南、及び道東、道北地域の栽培環境のよい地帯における府県産エローデントの栽培地帯に奨励する。

Ⅳ　試験成績
　1.　本場成績（札幌市）
　　(イ)生育調査

播種期

発芽期

雄穂 抽出期

絹糸 抽出期

収穫期

収穫期の熟度

抽雄期より 収穫まで(日)

生育日数 (日)

32

33

34

35

36

平均

ジャイアンツ

5.13

5.31

8.10

8.16

10.6

黄熟

完熟

黄熟

黄熟

完熟

黄熟終

51

146

複交3号

〃

〃

8.5

8.11

9.28

完〃

〃〃

完〃

完〃

〃〃

完熟

48

138

エローデント

〃

〃

8.13

8.20

（10.8）

糊〃

糊〃

糊〃

糊〃

黄〃

糊〃

49

148

ホワイトデント

（5.15）

（〃）

（8.11）

（〃）

（10.2）

－

－

－

－

糊〃

（糊〃）

(43)

(140)

品種名	草丈 (cm)	稈長 (cm)	着穂高 (cm)	有効 雌穂数(本)	分けつ数 (本)	雌穂長 (cm)	雌穂径 (本)	粒列数 (行)	一列 粒数	千粒重 (ｇ)	雌穂着 粒良否	一立重 (ｇ)
ジャイアンツ	278.8	240.8	113.4	0.9	0	16.9	4.9	16.5	37.4	669	260	や良
複交3号	244.5	206.2	90.0	1.0	0.1	15.4	4.7	16.1	35.54	727	286	や良
エローデント	307.1	264.7	144.2	0.8	0.1	15.5	4.9	15.2	31.1	632	276	や良
ホワイトデント	(352.9)	(312.0)	(199.6)	(0.8)	(0)	(16.3)	(4.7)	(13.2)	(36.7)	(633)	(287)	(中)

　註　※昭和32～36年度までの平均値、ホワイトデントは昭和36年1ヶ年
　　　　収穫期の（　　）は、収穫適期ではないが、余儀なく収穫した日
　　　　生育日数は播種期より収穫期までの日数である。

　　(ロ)　収量調査成績

	10a当総生草重（kg)
	32	33	34	35	36	平均	変異係数（%）	対標準比（%）
ジャイアンツ	4045	4453	3650	4247	3180	3915	90	12.9
複交3号	2547	2807	2380	2693	2731	2632	61	6.4
エローデント	4675	4320	4040	4560	4141	4347	100	6.2
ホワイトデント	－	－	－	－	5924	(5924)	(136)	－

	10a当子実重（kg)
	32	33	34	35	36	平均	対標準比（%）	変異係数（%）
ジャイアンツ	481	414	358	429	560	428	120	17.0
複交3号	501	601	434	506	547	518	145	12.0
エローデント	470	343	193	299	483	358	100	33.0
ホワイトデント	－	－	－	－	364	(364)	(102)	－

	10a当収量（kg)
	生茎葉重		雌穂重（kg)		水分15% 茎葉重		飼料単位 （計算値）		可消化蛋白質 （計算値）
	平均	対標準比（%）	平均	対標準比（%）	平均	対標準比（%）	平均	対標準比	平均	対標準比
ジャイアンツ	2816	82	1103	111	659	78	753	117	37.7	123
複交3号	1658	49	993	100	403	48	682	106	36.2	118
エローデント	3416	100	990	100	846	100	642	100	30.6	100
ホワイトデント	(4830)	(141)	(994)	(100)	(963)	(114)	(833)	(130)	(34.5)	(113)

　 2.　渡島支場成績（昭34～36）
　　（イ）　生育調査

品種名	発芽期	抽雄期	絹糸 抽出期	収穫期	収穫期の 熟度	生育 日数	草丈 (cm)	稈長 (cm)	着穂高 (cm)	雌穂長 (cm)	雌穂径 (cm)	一立重 (ｇ)	千粒重 (ｇ)
ジャイアンツ	5.30	8.3	8.10	9.20	黄熟	125	286	244	126	19.0	5.0	636	234
エローデント	5.30	8.7	8.13	9.22	〃	127	333	290	141	18.6	5.5	631	259
ホワイトデント	5.28	8.7	8.12	9.26	（〃）	(134)	(361)	(321)	(173)	(15.4)	(4.7)	(633)	(315)

　　（ロ）　収量調査

品種名	10a当収量（kg)
	総生草重	同比率	生雌穂重	同比率	水分15% 茎葉重	同比率	子実重	同比率	飼料 単位	同比率	可消化 純蛋白質	同比率
ジャイアンツ	4653	87	1067	121	993	89	424	139	760	113	38.0	115
エローデント	5337	100	881	100	1116	100	305	100	673	100	32.8	100
ホワイトデント	(5519)	(103)	(389)	(44)	(1008)	(90)	(179)	(59)	(468)	(70)	(22.0)	(67)

　3.　上川支場成績（昭34～36）
　　（イ）　生育調査

品種名	発芽期	抽雄期	絹糸 抽出期	収穫期	収穫期の 熟度	生育 日数	草丈 (cm)	稈長 (cm)	着穂高 (cm)	雌穂長 (cm)	雌穂径 (cm)	一立重 (ｇ)	千粒重 (ｇ)
ジャイアンツ	6.3	8.3	8.11	9.30	乳熟終	136	312	261	127	15.1	5.5	560	198
複交3号	6.2	8.4	8.10	9.28	黄熟	133	261	219	106	16.5	5.4	638	253
エローデント	6.2	8.6	8.17	10.1	乳熟	137	347	302	157	22.6	5.6	510	189

　註　ジャイアンツ、エローデントは昭34～36年3ヶ年の平均
　　　　複交3号は昭34～35年の2ヶ年平均

　　（ロ）　収量調査

品種名	10a当収量（kg)
	総生草重	同比率	生雌穂重	同比率	水分15% 茎葉重	同比率	子実重	同比率	飼料 単位	同比率	可消化 純蛋白質	同比率
ジャイアンツ	5615	94	1929	103	965	93	553	126	904	111	46.0	115
複交3号	4235	71	1413	76	647	62	553	126	789	97	41.2	103
エローデント	5944	100	1866	100	1042	10	438	100	808	100	40.0	100

　4.　十勝支場（昭34～36）
　　（イ）　生育調査

品種名	発芽期	抽雄期	絹糸 抽出期	収穫期	収穫期の 熟度	生育 日数	草丈 (cm)	着穂高 (cm)	雌穂長 (cm)	雌穂径 (cm)	一立重 (ｇ)	千粒重 (ｇ)
ジャイアンツ	6.2	8.13	8.16	9.23	糊熟	139	320	144	17.2	4.9	507	190
複交8号	6.1	8.8	8.11	9.22	黄熟終	138	286	109	16.7	4.8	598	231
複交4号	5.31	7.29	8.4	－	完熟	－	265	93	16.7	4.7	718	310
エローデント	6.2	8.15	8.21	10.2	乳熟終	138	366	182	17.8	5.2	446	204

　註　各品種共昭34～36年の3ヶ年平均

　　（ロ）　収量調査

品種名	10a当収量（kg)
	総生草重	同比率	生雌穂重	同比率	乾茎葉重	同比率	子実重	同比率	飼料 単位	同比率	可消化 純蛋白質	同比率
ジャイアンツ	5011	93	1409	108	1005	80	429	131	620	105	33.4	109
複交8号	3538	66	1231	95	561	45	518	158	670	113	37.2	121
複交4号	2647	49	1050	81	585	46	574	175	－	－	－	－
エローデント	5377	100	1298	100	1261	100	328	100	593	100	30.7	100

　5.　北見支場成績（昭34～36）
　　（イ）　生育調査

品種名	発芽期	抽雄期	絹糸 抽出期	収穫期の 熟度	草丈 (cm)	稈長 (cm)	着穂高 (cm)	雌穂長 (cm)	雌穂径 (cm)	一立重 (ｇ)	千粒重 (ｇ)
ジャイアンツ	6.8	8.16	8.23	乳熟	239	267	130	22.5	5.2	622	237
複交8号	6.6	8.10	8.16	糊〃	235	228	104	19.8	4.9	700	244
複交4号	6.7	8.5	8.13	完〃	213	196	77	18.7	4.8	580	242
エローデント	6.6	8.19	8.26	乳熟	285	291	167	19.7	5.5	596	278

　註　複交4号は昭34、35年の2ヶ年平均、他は昭34～36年の3ヶ年である。

　　（ロ）　収量調査

品種名	10a当収量（kg)
	総生草重	同比率	風乾茎葉重	同比率	子実重	同比率
ジャイアンツ	5678	89	2106	96	410	126
複交8号	4068	63	1009	46	448	138
複交4号	3682	57	830	38	403	124
エローデント	6415	100	2176	100	324	100

　6.　天北支場成績（昭34～36）
　　（イ）　生育調査

品種名	発芽期	抽雄期	絹糸 抽出期	収穫期	収穫期の 熟度	生育 日数	草丈 (cm)	稈長 (cm)	着穂高 (cm)	雌穂長 (cm)	雌穂径 (cm)	一立重 (ｇ)	千粒重 (ｇ)
ジャイアンツ	6.3	8.10	8.20	9.29	乳熟終	137	264	229	101	18.4	4.7	600	226
複交8号	6.4	8.8	8.15	9.29	黄熟	137	239	203	83	17.3	4.9	703	273
エローデント	6.4	8.15	8.23	9.29	乳熟	137	299	259	142	18.1	5.6	544	254

　　（ロ）　収量調査

品種名	10a当収量（kg)
	総生草重	同比率	生雌穂重	同比率	水分15% 茎葉重	同比率	子実重	同比率	飼料 単位	同比率	可消化 純蛋白質	同比率
ジャイアンツ	5349	93	1181	128	912	80	404	174	682	115	364	119
複交8号	3713	65	1017	110	562	50	502	215	701	118	38.6	126
エローデント	5725	100	921	100	1134	100	233	100	593	100	30.5	100

　7.　原々種農場成績（滝川）

品種名	発芽期	抽雄期	絹糸 抽出期	収穫期	収穫期の 熟度	生育 日数	稈長 (cm)	着穂高 (cm)	雌穂長 (cm)	雌穂径 (cm)	一立重 (ｇ)	千粒重 (ｇ)
ジャイアンツ	6.6	8.15	818	10.2	糊塾	136	201	90	17.3	4.9	574	178
複交4号	6.7	8.10	8.15	10.3	黄熟初	136	183	67	16.2	4.7	677	234
エローデント	6.6	8.18	8.23	10.2	乳熟終	136	226	121	16.4	4.9	523	164
ホワイトデント	(6.3)	(8.14)	(8.26)	(0.5)	（乳熟中）	(142)	(274)	(152)	(15.4)	(4.5)	(549)	(229)

　註　ホワイトデントは昭36年1年の成績、ジャイアンツ、エローデントは34～36年の3ヶ年間平均
　　　　複交3号は、昭34、昭36の2ヶ年平均

　　（ロ）　収量調査

品種名	10a当収量（kg)
	総生草重	同比率	生雌穂重	同比率	水分15% 茎葉重	同比率	子実重	同比率	飼料 単位	同比率	可消化 純蛋白質	同比率
ジャイアンツ	4050	98	1303	145	721	80	349	163	601	110	30.3	123
複交3号	2763	67	1007	112	500	56	372	174	546	106	28.6	116
エローデント	4112	100	900	100	898	100	213	100	512	100	24.5	100
ホワイトデント	(5460)	(1321)	(1084)	(120)	(1248)	(139)	(298)	(139)	(719)	(140)	(34.0)	(138)

　8.　原種決定現地試験成績

		10a当総生草重（kg)と対標準比
		ジャイアンツ	複交3号	複交8号	複交7号	エローデント	ホワイトデント
1	恵庭	4297				5233	5209
		(82)				(100)	(100)
2	静内	4269				4887	8404
		(87)				(100)	(172)
3	当別	4336				4248	4779
		(102)				(100)	(113)
4	長万部	4510				4430
		(12)				(100)
5	厚沢部	4280				4250
		(101)				(100)
6	北檜山	3420	1850			3518	4743
		(97)	(53)			(100)	(135)
7	美瑛	5814	4416			5230	8088
		(111)	(85)		（複交5号）	(100)	(155)
8	士幌	4531		2963	3280	5003
		(91)		(59)	(66)	(100)
9	幕別	7460		6180		8340
		(89)		(74)		(100)
10	音更
					（複交5号）
11	浦幌	2745		2130	2070	3404
		(81)		(63)	(61)	(100)
12	足寄	3385		2530		3613
		(94)		(70)		(100)
13	紋別	3668	3760	3730	1636	452
		(81)	(84)	(83)	(36)	(10)
14	女満別	5183	4730	5350	2000	5213
		(99)	(91)	(103)	(38)	(100)
15	羽幌	4223		2574		4380
		(96)		(59)		(100)
16	京極

		10a当子実量（kg)対標準比
		ジャイアンツ	複交3号	複交8号	複交7号	エローデント	ホワイトデント
1	恵庭	428				420
		(102)				(100)
2	静内	456				481	365
		(95)				(100)	(76)
3	当別	368				330	269
		(112)				(100)	(82)
4	長万部
5	厚沢部	680				671
		(101)				(100)
6	北檜山	564	417			520	387
		(108)	(80)			(100)	(74)
7	美瑛	393	762			457	522
		(86)	(167)		（複交5号）	(100)	(121)
8	士幌	303		457	407	215
		(140)		(213)	(189)	(100)
9	幕別	323		508		247
		(131)		(206)		(100)
10	音更	724		624		697
		(104)		(90)	（複交5号）	(100)
11	浦幌	164		323	323	89
		(184)		(363)	(363)	(100)
12	足寄	266		372		146
		(182)		(255)		(100)
13	紋別	346	457	569	349
14	女満別	504	612	548	697	444
		(114)	(138)	(122)	(157)	(100)
15	羽幌	797		707		462
		(173)		(153)		(100)
16	京極	864				765
		(113)				(100)