【普及奨励事項】

除虫菊「ワッサム」について

北海道農業試験場作物部
北海道立農業試験場上川支場

 

Ⅰ 来歴
 遠軽町の薄荷・除虫菊研究室で昭和25年にケニヤより輸入した種子を翌年から育苗し、昭和28年に個体選抜を行った栄養繁殖系統で、昭33年に士別市の川上支場畑作課ほ場に定植し以降生産力検定試験を実施してきたものである。

 

Ⅱ 特性の概要
 1. 生育状況
  春期及び収穫後の萌芽勢は北海一号に比べ旺盛で終始葉色も濃い。
 2. 開花期
  大体北海一号と同期であるが経過半年が増すと幾分早くなる傾向がある。
 3. 茎数及び着花数
  茎数はやや多い程度であるが分枝数が多いので着花数は著しく多い。
 4. 草丈
  北海一号に比べ10cm内外高いが倒伏は比較的少ない。
 5. 乾花収量
  定植後2年目~3年目の収量は北海一号に比べ安定して多収である。
 6. ピレトリン含量
  北海一号に比べ幾分高い。
 7. 病害並びに冬損率
  経過年数は浅いが北海一号と大体同程度とみられる。
  

Ⅲ 普及上の注意事項
 従来本道の除虫菊の栽培は傾斜地での掠奪栽培によって、その有効性を保持してきたのであるが、このような栽培では、土壌侵食がはげしく、定植後4年くらいを経過すると、収量は急減し、宿根性雑草が繁茂してきて労力を多く要するようになるのである。
 本品種のような高収性のものでは、栽培を集約化することによる品種の特性の発揮にその有意性を追求することに栽培体系を転換することが必要である。
 技術上留意を要する点を列挙するとつぎのとおりである。
 1. 定植にあたっては基肥として堆肥1~1.5t、硫安11kg、過石26kg、豆粕(高価ではあるが除虫菊に対しては特効的に作用する)11kg/10aを基準として施用のこと。
 2. 吸肥性が高いので収穫直後に硫安11kg、過石26kg、豆粕11kg/10aを追肥すること。
 3. 収穫に際して低刈りし過ぎると欠株の原因になるから花梗を刈るようにすること。
 4. 収穫年数は3~4年程度を限界として輪作を行い、収量と地力の減退を防ぐこと。
 

Ⅳ 試験成績
 〔北海道農業試験場作物部〕
 1. 特性調査
区別 特性 舌状花弁 管状花直径
(mm)
百花重
(g)
姿勢 葉形 毛茸 葉色 数(数) 長(mm) 巾(mm)
北海1号 ヤ多 白緑 22.0 17.6 6.9 19.0 28.7
ワッサム ヤ広 24.0 17.2 6.9 19.1 27.8

 2. 生育調査
区別 結蕾期 同草丈
(cm)
開花始 開花期 収穫期
開花期
草丈(cm) 茎数(本) 着花数(ヶ) 分枝数(本)
昭和34年
3年株
(3区制)
北海1号 22/V 23.1 29/Ⅶ 22/Ⅶ 76.1 62.5 87.6 25.1 14/Ⅶ
ワッサム 23.4 77.4 68.2 94.3 26.1

 3. 収量調査
区別 収穫株数
(株)
一区当
乾花重(g)
一株当
乾花重(g)
一区当
乾茎重(g)
ピレトリン含有率(%)
昭和30年 昭和31年 昭和33年 昭和34年
昭和34年
3年株
北海1号 27.2 586.9 21.6 1488.0 1.27 1.51 1.42 1.54
ワッサム 29.3 685.0 23.4 1655.0 1.27 1.62 1.47 1.64
  注 ピレトリン含有率は昭和32年3年株についての資料である。

 

 〔北海道立農業試験場上川支場〕
 1. 生育調査(昭和33年定植) 
  1) 定植後1年目(昭和34年)
試験区別 萌芽期 結蕾期 開花 収穫時における調査 欠株率
(%)
草丈
(cm)
茎数
(本)
着花数
(ヶ)
分枝数
(本)
管状花の
直径(cm)
北海一号 25/V 25/V 25/Ⅵ 27/Ⅵ 67.0 11.3 19.3 3.4 2.21 0
26 S-6-1 26/Ⅵ 28/Ⅵ 71.8 19.3 34.3 4.5 2.10 0
在来種(参考) 25/Ⅵ 28/Ⅵ 69.3 13.3 17.3     0

  2) 定植後2年目(昭和35年)
試験区別 萌芽期 結蕾期 開花 収穫時における調査 欠株率
(%)
草丈
(cm)
茎数
(本)
着花数
(ヶ)
分枝数
(本)
管状花の
直径(cm)
北海一号 23/Ⅳ 5/Ⅵ 4/Ⅶ 8/ 63.1 68.3 88.0 19.7 2.12 0
26 S-6-1 9/Ⅶ 77.6 78.3 163.3 85.0 1.86 0
在来種(参考) 8/Ⅵ 10/Ⅶ 70.8 48.8 110.7 61.9 1.80 6.2