【指導奨励事項】
水稲収穫作業の省力に関する試験成績
北海道立農業試験場空知支場

 近年農業労働力の急激な減少により、農業経営の改善が強く望まれ機械化による省力化についての検討が極めて重要な課題となっている。
 水稲栽培の管理作業中、短期間で多くの労働力を必要とする収穫作業について、昭和36年度に指導奨励を見た「スラット型通風乾燥機」(農機具試験室)と動力稲刈機の組合せ利用について昭和37~38年の2ヶ年試験を実施した結果、収穫作業の省力を目的とした場合有効的であると認められる成績を得たので報告する。

1.試験の内容
 (1)籾乾燥方法に関する試験
 昭和37年度において、水稲刈取後における圃場乾燥法として大束結束後、穂を上に向けて立てる方法(以下タコ乾しとする)と脱穀後における通風乾燥期との組合せによる籾水分の変化t玄米品質及び所要労力について検討した。

 (2)稲刈機と乾燥機の組合せに関する試験
 昭和38年度においては動力稲刈機を導入し、前年度実施した乾燥方法との組合せによる所要労力について検討した。

2.試験の方法
 (1)籾乾燥方法に関する試験
イ 圃場乾燥試験 昭和37年度
 供試品種 シンセツ
 刈取月日 9月30日
 1区面積及び区制 1区100m2 1区制

 試験区別
区    別 結束(月日) 架かけ(月日) 備     考
1.慣行区 10.2 10.4  
2.刈取直後架乾し区 9.30 9.30  
3.  〃  タコ乾し区 9.30 10.2 タコ乾し後は架乾とする
4.刈取2日後  〃 10.2 10.4        〃


ロ 乾燥体系試験 昭和37年度
 供試品種 シンセツ
 刈取月日 9月30日
 1区面積及区制 1区10a 1区制

 試験区別
区           別 結束(月日) 脱穀(月日) 乾燥(月日)
1.刈取1日後 脱穀通風乾燥区 9.30 10.1 10.2
2. 〃 直後  タコ乾し3日後脱穀通風乾燥区 9.30 10.3 10.4
3. 〃 3日後   〃  5日後    〃 10.3 10.5 10.6


 (2)稲刈機と乾燥機の組合せに関する試験  昭和38年度
 供試品種 ササホナミ
 供試土壌 亜泥炭土(新田1年目)
 圃場条件 1筆30a(88.9m×33.7m)
 1区面積及区制 1区10a、1区制(30aの圃場を3等分した)
 刈取月日 10月4日

 試験区別
区 別 作 業 内 容 結束(月日) 脱穀(月日) 乾燥(月日)
1.慣行区 手刈り 架かけ 自動脱穀機 10.6 11.11 -
2.省力Ⅰ 稲刈機 タコ乾し   〃 10.6 10.8 10.9
3.省力Ⅱ  〃     〃  スレッシャー 10.6 10.8 10.9
  注 1区の架かけは10月9日
     稲刈機はテーラー型動力刈取機を使用した。

3.試験成績
 通風機の性能及実用性等については前記の如く昭和36年度において、農機具試験室よりすでに成績の詳細が発表されているのでここでは試験実施についての主なる点のみに限定する。

A 昭和37年

 (1)試験等時の気象
月日 気温(℃) 日照時数
(時間)
降水量
(mm)
備考
平均 最高 最低
9.30 10.8 15.0 6.5 8.1 -  
10.2 9.2 17.7 0.7 7.2 -  
2 9.7 17.0 2.4 6.7 -  
3 15.5 19.3 11.7 2.4 1.5  
4 12.1 16.2 8.0 8.6 -  
5 7.1 16.6 -1.8 6.4 2.7  
6 10.1 16.6 3.5 8.7 -  
7 9.1 18.7 -0.5 7.3 -  
8 10.3 18.1 2.5 10.5 3.1  

 (2)圃場乾燥試験における籾水分の調査(%)
区別/月日 9.30 10.1 10.2 10.3 10.4 10.5 10.6 10.7 10.8
1.慣行区 28.5 23.8 19.5 18.0 20.8 - 19.6 - 16.0
2.直後、架乾し区 - 26.8 22.3 16.0 16.0 - 18.2 - 15.3
3. 〃  タコ乾し区 - 24.0 23.0 19.3 16.5 - 18.0 - 15.9
4.2日後   〃 - 23.8 19.3 16.0 18.3 - 17.8 - 15.3

 (3)圃場乾燥試験における玄米品質の調査
区別/項目 段別篩の調査(%) 青米
歩合(%)
胴割
歩合(%)
2.2(mm) 2.1(mm) 2.0(mm) 1.9(mm) 1.8(mm) 1.7(mm)
1.慣行区 28.5 46.0 11.7 4.5 2.5 2.4 4.4 22.2 17.0
2.直後、架乾し区 24.6 50.4 11.6 4.7 2.6 2.0 4.0 23.7 8.5
3. 〃  タコ乾し区 31.1 50.0 9.1 3.0 1.8 1.5 3.6 20.5 8.0
4.2日後   〃 30.0 47.1 10.7 4.2 2.4 1.7 3.7 20.9 10.0
  注 段別篩は200g、青米歩合は5g、胴割歩合は200粒について調査。

 (4)乾燥体系試験における脱穀までの籾水分
月日 9時現在の外気 11時現在の籾水分(%) 備考
温度(℃) 湿度(%) 1区 2区 3区
9.30 12.3 52 28.5 - -  
10.1 13.0 70 23.5 20.8 21.5  
2 15.4 70 - - -  
3 6.2 84 - 16.3 20.3 1.5mmの降雨
4 13.8 53 - - -  
5 11.6 60 - - 18.1 2.7mmの降雨

 (5)乾燥体系試験における通風乾燥状況
区別 月日 時刻 室 内 機内床下
温度(℃)
籾  水  分  (%) 時間当乾減
水分率(%)
温度(℃) 湿度(%) 乾燥直前 5㎝深 15㎝深 25㎝深 平均
1区 10.2 9.00 13.6 76 16.8 25.8          
11.00 18.3 64 28.3   18.5 20.5 19.5 19.5  
13.00 18.8 58 27.9   21.3 17.0 18.3 18.9  
15.00 17.5 63 26.0   18.2 18.0 17.3 17.8  
17.00 15.0 86 24.5   18.6 17.9 16.6 17.7  
19.00 15.5 81 21.5   15.9 16.4 15.7 16.0 0.98
2区 10.4 9.40 13.5 65 14.5 20.0          
11.40 16.6 49 35.0   19.4 18.4 19.4 19.1  
13.40 15.5 50 29.5   16.4 17.1 17.2 16.9  
15.40 15.1 49 24.0   14.7 15.2 14.6 14.8 0.87
3区 10.6 9.00 12.5 77 20.0 18.3          
11.00 22.5 59 30.4   16.8 16.6 16.0 16.5  
13.00 18.3 42 24.5   15.8 16.8 14.8 15.8 0.63
  注 籾水分の高低による所要時間の調査のため、籾水分の高低を問わず乾燥開始と同時に乾燥機の床下温度を30℃に保つ用に実施したが、コークス火炉のため完全に一定温度に保つことは出来なかった。

B 昭和38年度

 (1)試験等時の気象
月日 気象 日照時数 降水量 備考
平均 最高 最低
10.3 11.8 1.95 4.1 10.4 -  
4 9.7 18.6 0.8 9.2 -  
5 14.2 18.2 10.2 1.8 4.9  
6 7.2 17.3 -1.9 9.1 2.4  
7 10.9 12.0 9.7 3.3 1.7  
8 6.5 15.1 -2.1 7.9 1.4  
9 12.2 20.2 4.1 8.5 -  
10 10.2 14.9 5.4 - -  

 (2)籾水分の調査
 稲刈時 21.6%
 結束直後 19.2
 脱穀時 18.4(スレッシャーの場合)

 (3)脱穀機による未脱割合
区別 脱粒籾重(㎏) 未脱籾重(g) 未脱割合(%)
2区省力Ⅰ 7.05 297.8 4.05
2区省力Ⅱ 8.40 108.5 1.28

 (4)作業別内訳
作業内容 慣行区 省力Ⅰ 省力Ⅱ
稲刈り 人力 稲刈機 稲刈機
枕刈り - 人力 人力
結束 人力 人力 人力
架作り 人力 - -
集積 トラクター - -
架かけ 人力 - -
はさおろし 人力 - -
運搬 トラクター トラクター トラクター
脱穀 全自動脱穀機 全自動脱穀機 スレッシャー
乾燥 - 通風乾燥期 通風乾燥期
架整理 人力 - -

 (5)所要労働時間は別紙調査表による

4.試験結果
A 昭和37年度の試験結果
 (1)圃場乾燥について
 稲作期間中の気象は前半は良好であったが、後半は不良であったため、水稲の登塾は極めて不良で、従って登熟不良による青米の多発などにより稲刈り時の籾水分が極めて高く、その後の調査においても、調査資料中の青米混入の多少により水分の変動が大きく調査結果においても不均一な点が多いが、当時の天候にもよるが、刈取2~3日程度の圃場乾燥によって籾水分を20%以下にすることが出来るものと思考される。
 玄米品質については段別、篩による調査においては、2.2mmまたは2.1mmで、5%前後の区間差が見られるが、2.2~2.0mmの合計では殆ど差は認められない。青米歩合についても大差は無く、胴割歩合につちえは判然としないが、他の圃場乾燥を用いても玄米品質に対する影響は無いものと思考される。

 (2)機械乾燥について
 通風乾燥機の使用については省略するが乾燥前の籾水分の高低により乾燥所要時間に大きな差が認められ、従って1区の刈取1日後に脱穀乾燥を行ったももの2区または3区の如く刈取後3~5日圃場乾燥を行ったものは、1区の5割前後の時間短縮が認められ、また玄米品質に対する影響も少ないものと思考される。

B昭和38年度の試験結果
 (1)稲刈機導入のため供稈性のササホナミを作付けしたが、新田のため水稲の生育は後出来となり、また圃場が病害虫の発生予察田の風下であったことなどにより稲熱病の被害が認められ、従って水稲の折損が多く認められ稲刈機の利用には稍不向きであった。

 (2)刈取から結束までで籾水分は24%減となったが、結束後は小量であるが降雨があったが脱穀時の籾水分は18.4%で圃場乾燥の効果は十分認められた。

 (3)脱穀における未脱粒の附着状況については、刈取り時の倒伏、折損等によって異なるが省力Ⅰの脱穀機は4.05%、省力Ⅱスレッシャーは1.28%とスレッシャーが良い結果を示した。

 (4)稲刈機の利用においても枕刈りの必要があり、従って水田面積の大小及び形体によって異なるが、その所要労力を見ると慣行区に比べ刈取時間は極めて少ないが結束時間については、大束にする場合においてもかなりの時間を要し、脱穀時間は慣行区より多く時間を要した。稼働4名で慣行区は44分省力、Ⅰの脱穀機は79分省力、Ⅱスレッシャーは92分を要したが、所要労働延時間の合計では、慣行区に比し省力Ⅰ、省力Ⅱ区共44~48%の労力減が認められた。

5.考案
 以上2カ年の試験結果より稲刈機の使用と圃場におけるタコ乾し及び通風機との組合せによる収穫体系によって極めて大きく、労働力が削減されることが期待できる。
 脱穀機とスレッシャーについては尚検討を要するものと思われるが水稲の倒伏などが少ない場合には脱穀機においても未脱粒の割合は減少するものと思われる。

参考成績

 通風乾燥後の玄米品質又搗精歩合調査
品種名 区別 銹米(50g中) 胴割歩合
(400g中)(%)
重量(g) %
栄光 はさ乾燥 23.31 46.6 1.25
通風乾燥期 17.82 35.6 2.50
ササホナミ はさ乾燥 28.82 57.7 3.25
通風乾燥期 28.03 56.1 3.87

所要労働時間調査表
区別
/
作業別
稲刈り 枕刈り 結束 はさ作り 集積 はさかけ はさ降し 運搬 脱穀 乾燥 はさ整理 枕整理 合計 比率


稼働
人員
4 3 7 1 1 5 4 2 4   1      





120.30   35.43 77.00 85.28 53.57 21.38 60.00 44.13   50.00      
121.00   38.40     53.57 19.39              
124.00   34.22     27.10 21.53              
39.30   35.26     27.10 19.43              
    66.56     23.46                
    65.28                      
    82.58                      
6.45.00   5.59.33 1.17.00 1.25.28 3.06.00 1.22.53 2.00.00 2.56.52   0.50.00   25.42.46 100.0


稼働
人員
1 2 4         2 4 1   1    






34.32 26.06 48.00         62.00 78.55 90.00   2.05    
  12.41 48.00                      
    47.00                      
    55.00                      
0.34.32 0.38.47 3.18.00         2.04.00 5.15.40 1.30.00   0.02.05 13.23.04 52.1


稼働
人員
1 2 4         2 4 1   1    






34.33 26.06 48.00         62.00 92.33 90.00   2.05    
  12.41 48.00                      
    47.00                      
    55.00                      
0.34.32 0.38.47 3.18.00         2.04.00 6.10.12 1.30.00   0.02.05 14.17.36 55.6
  備考
   イ 乾燥時間については乾燥所要時間1時間を99m2型乾燥機使用の場合40aの籾を処理するものとして算出した。
   ロ はさ作り及びはさ整理の時間にははさ木の運搬は省いて調査、尚はさ整理の時間は37年度の調査で示す。