水稲新品種候補系統「空育139号」(ゆきまる)の育成
【 要約 】「空育139号」(ゆきまる)は、「きらら397」の早生化、耐冷性強化を図った 早生・良食味品種である。「空育125号」及び「上育393号」の殆どに替わることにより、早生品種地帯の食味水準は向上し、作付け基準に基づく熟期配分が可能となる。
北海道立中央農業試験場 稲作部 育種科連絡先 0126-26-1518
部会名北海道、推進、稲作専門育種対象稲類分類普及

【 背景・ねらい 】

 現在、北海道の粳品種の作付けは、熟期の類似している「きらら397」、「ゆき ひかり」で約85%を占め、不適地への作付けは良質・良食味米生産上好ましくない。 1992年の冷害年において一部その弊害がみられた。  本品種は、道北、道東並びに道央道南早生種地帯での栽培が期待され、作付け基準 に基づく適正な熟期配分を推進することにより、道産良食味米の安定生産に寄与する 。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 昭和60年に早生・良食味品種の育成を目標に、「上育397号」(きらら397)/「空 育125号」の雑種後代から育成したものである。平成2年より「空育139号」の系統 名を付し地方適否を検討してきたもので、平成5年はF10になる。
  2. 早生、良食味、耐冷、いもち病耐病性の短稈穂数型粳品種である。
  3. 出穂期は「空育125号」より1〜3日早く、早生の中で、成熟期は「空育125号」並の早の晩である。障害型耐冷性は「ゆきひかり」よりわずかに劣る「空育 125号」 並のやや強〜強、いもち病耐病性は「きらら397」「空育125号」並の強である。耐 倒伏性はやや強、玄米収量は「空育 125号」並ないしやや劣る。玄米の品質は「空 育125号」並の上下上で あるが、白米の白度及び食味は「きらら397」並に良好で ある。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 網走、上川、留萌、空知、石狩、後志、胆振、日高の各支庁と渡島および桧山支庁 の北部の「空育125号」及び「上育393号」の殆どに置き換え、かつ、作付け基準に 基づく適正な熟期配分を推進する。
  2. 障害型冷害はやや強〜強であるが、十分とはいえないので幼穂形成期から穂孕期に かけての低温の際には深水潅漑を励行する。普及見込み面積 20,000ha
  3. 穂揃いが劣るため植付株数は栽培基準を厳守し、適期刈取りに特に留意する。
  4. 短稈であるが、耐倒伏性はやや強と不十分であり、また腹白が栽培条件により発生  することがあるので、多肥栽培を避け「北海道施肥標準」を守る。
  5. 出穂変動が大きいので、熟期を考慮して、その地帯に適した育苗法をとること。

【 その他 】研究課題名:優良米の総合開発
予算区分 :道費
研究期間 :平成4年度(昭和60〜平成4年)
研究担当者:佐々木忠雄,沼尾吉則,田中一生,太田早苗,吉村 徹,三分一 敬
        佐々木一男,和田 定、新井利直,本間 昭,森脇良三郎,楠谷彰人
        犬飼 剛,稲津 脩,柳原哲司,鈴木慶次郎

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.1