水稲湛水直播・大規模散播法
【 要約 】大規模湛水散播法について、播種機の実用性の評価、散播稲の生育・収量性、播種時の圃場条件および湛水直播栽培の可能な地帯と播種適期を明確にし、湛水直播栽培の適地を「道央以南の良地帯」とした。  さらに中苗移植栽培に比べた湛水直播栽培の収益性の評価を行い、大規模経営や集 約的な転作経営に導入される可能性が高いことを示した。
中央農業試験場 稲作部栽培第一科、農業機械部機械科、
経営部経営科
上川農業試験場研究部水稲栽培科
連絡先 0126-26-1518
部会名稲作、物理、経営専門栽培、機械、経営対象稲類分類 指導

【 背景・ねらい 】

 平成元年に上川中央部に限定して策定された「湛水直播栽培暫定基準」の改訂を目 的としてヘリコプタ、ミスト機、ブロードキャスタの散播播種機としての実用性、湛 水直播栽培の空知・石狩などの地域における適応性、湛水直播栽培の収益性と導入場 面について検討する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. ヘリコプタ、ミスト機、ブロ−ドキャスタの有効作業量は、各々681、97、 64 a/hで、播種費用はミスト機が最も低く、次いでブロードキャスタであり、 ヘリコプタは20ha規模としても10a当たり4,500円以上となりコスト高であった。 播種精度はいずれの播種機も強風時を避けて播種すれば、苗立ち本数や苗立ちの バラツキなどの苗立ち性についても実用上の問題はなく、3機種とも実用化可能 と判断された。
  2. 石狩・空知管内10地点について、水田水温を推定し、播種の早限と出穂晩限まで に出穂できる播種の晩限を求めた結果、空知管内の 8地点については 8〜28日の 有効播種期間が得られたのに対し、新篠津と恵庭島松については有効播種期間は 存在しなかった。この結果から、適地は「道央以南の良地帯」と判断された。
  3. 直播栽培(ミスト機)では、移植(中苗)に比べて 10a当たり38%の省力効果と 11%のコスト低減効果が明らかになった。しかし、「はやまさり」が移植の「き らら397」に比べ品質・収量性も劣るため粗収益が減少し、10a当たりの農業所得 が大幅に低下した。現状では、直播栽培はどの農家にも速やかに導入されるとは いい難いが、大規模経営や集約的な転作経営において導入される可能性が高い。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 播種期の設定にあたっては、アメダス観測値と現地の気象の相違を考慮すること
  2. 出穂晩限の設定に当たって、出穂後40日間の登熟温度を 750℃としたが、良質米 生産にはより高い登熟温度が必要なため、播種晩限より早めに播種する。
  3. 苗立ちの確保と生育安定のため、偏東風地帯では防風施設を導入する。
  4. 「水稲湛水直播栽培暫定基準」(平成 5年 1月改訂)に基づいて実施する。

【 その他 】

研究課題名:低コスト米品種早期開発特別対策事業、超低コスト栽培技術総合開発試験
予算区分 :道単
研究期間 :平成4年度(昭和63年〜平成4年)
研究担当者:山崎信弘、谷川晃一、小川 勉、田中英彦、古原 洋、笹島克己、
        西村直樹

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.71