褐色低地土水田における有機物長期連用効果
【 要約 】褐色低地土水田における31年間の有機物の長期連用は米の品質・食味を維持しながら、慣行施肥に比べて、 9〜10%の増収となった。有機物連用効果は透水性等土壌の物理的性質の改善が著しく、根活性や養分吸収の向上など化学肥料に見られない効果が認めれた。
上川農試土壌肥料科
中央農試環境化学部土壌資源科
連絡先0166-48-2244
部会名土地管理,稲作専門土壌対象稲類分類指導

【 背景・ねらい 】

 稲わら及び堆肥の連用は水田の地力維持、向上に与える影響が大きく、さらに、環境 調和型農業生産技術確立にとって重要な役割を果たすものと思われている。そこで、 稲わら及び堆肥の長期連用が水稲の収量及び品質に及ぼす影響を明らかにするため、 褐色低地土に設置した圃場に31年間これら有機物を連用し、土壌及び水稲に与える影 響と効果発現についてグライ土と比較しながら解析した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 31年間の有機物長期連用による増収効果は褐色低地土(上川)で、対照100に 比較して堆肥区110、秋わら区109でありグライ土(中央)の各103よりも 明らかに高かった。この増収効果は稔実籾数の増加によるものであった。
  2. 有機物長期連用によるこの稔実籾数の増加は、出穂期における乾物生産量が高く、 成熟期におけるN、P2O5、K2O、MgO、CaO、SiO2 の吸収量が多くなるこ とに原因があった。
  3. 褐色低地土では有機物長期連用により、耐水性団粒、土塊分布などの土壌物理性が 改善され、透水性は良好となった。
  4. 根重及び根活性は堆肥区で対照より高かった。
  5. 堆肥区、秋わら区では窒素の吸収量が増加しても品質・食味に対照との差が認めら れなかった。
  6. 以上のことから、褐色低地土水田における有機物長期連用施用は化学肥料には見ら  れない土壌理科学性の改善効果が認められた。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 透水性の良い水田での有機物長期連用は交換性MgO、CaOの流出が認められるこ とから、土壌診断を実施しこれらの補給につとめる必要性がある。
  2. 本試験における有機物は稲わら及びその堆肥であり、施用量はそれぞれ400kg/ 10a 、800kg/10aである。

【 その他 】

研究課題名:褐色低地土における有機物長期連用効果
        ー土壌環境基礎調査・基準点調査ー
予算区分 :補助(土壌保全)
研究期間 :平成4年度(昭和37〜平成4年)
研究担当者:野村美智子、三浦周、安積大治
発表論文 :褐色低地土水田に対する有機物長期連用効果 日本土肥講要集、38、
        1992
        有機物連用が水田の窒素無機化特性に及ぼす影響 日本土肥講要集、
        39、印刷中、1993。

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.271