寒地水田における用水管理の実態と改善方策
【 要約 】転作率が比較的少なく透排水不良田が多い地域の用水量支配要因としては水・土壌管理法等人為的影響によるところが大きい。許可水量・供給期間の見直し等取水の合理的配分計画は、圃場排水対策、代掻き程度、畦畔補修等と共に重要である。
道立中央農業試験場・農業土木部・生産基盤科連絡先 01237-2-4220
部会名農業物理専門農地整備対象農業工学分類指導

【 背景・ねらい 】

 復元田を含む稲作地帯のかんがい用水管理の実態を把握するとともに、代表的な土 壌型において水田土壌の物理性並びに用水使用量の関係について調査し、圃場の実態 に即した合理的な取水配分計画を検討する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 滝の上頭首工から供給されているかんがい用水量には「代掻き期許可水量(12.678/ S)」「普通期許可水量(11.404 /S)」がある。また、かんがい期間を通じた平均 取水量は転作率に関わらず各年次とも7〜11 /S の値で推移していた。
  2. 用水量比較では、各年次・時期ともに復元田の方が明らかに多く、代掻き期に当た る5月と冷害危険期の深水かんがい時に当たる7月が最も顕著であった。
  3. 土壌の透水性・本田減水深の面では復元田の方がやや大きいが、較差は比較的小さ く、本地域の水田は全般に透排水性(縦浸透)が低下していることを裏付けていた 。復元田においても透排水性が小さいことの要因として、過度な代掻きが土壌構造 を破壊していることが考えられるので、今後代掻きは軽度に止めるべきである。
  4. 代掻きの影響を受けている畦畔下層部に比べ上層部の方が透水性が高く、畦畔漏水 の原因となっていてその程度は復元田の方が顕著だったが、代掻き前に畦畔を補修 した復元田では透水性が小さかった。深水かんがいを徹底するためには、一般水田 ・復元田とも事前に畦畔補修を行って、漏水防止に努める必要がある。
  5. かんがい用水量は復元田の方が多いが、排水不良田が多い秩父別地域全体としては 土壌間差異よりも人為的な水・土壌管理法による影響が大きく、用水使用量が増大 する代掻き期・冷害危険期の取水配分計画については、圃場の透排水性の改善対策 ・畦畔補修などと併せて改善すべきである。

【 成果の活用面・留意点 】

 地域のかんがい用水を円滑に供給するための参考になる。転作率が比較的少なく排 水不良田が多い地域で得られた結果であるが、畦畔漏水対策については他地域でも適 用できる。

【 その他 】

研究課題名:復元田における土壌構造と用水量の経年変化
予算区分 :道費
研究期間 :平成4年度(昭和63〜平成4年)
研究担当者:前田 要、永野道雄、武井達也
発表論文等:なし

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.360