春播小麦新品種候補「北見春53号」(春のあけぼの)の育成
【 要約 】北見春53号は、ハルユタカよりやや低収だが、強稈性は強で密植栽培に適し、さらに耐穂発芽性,赤かび病抵抗性、外観品質がハルユタカと比較して改良されており、パン適性もハルユタカより優れる春播小麦である。
北海道立北見農業試験場 小麦科
            (農林水産省小麦育種指定試験地)
連絡先 0157-47-2146
部会名畑作総合農業 作物生産(冬作物)専門育種対象麦類分類普及

【 背景・ねらい 】

 春播小麦は秋播小麦と比較して低収だが、蛋白含量が多く、質的にもパン用粉とし て優れるものが生産される。輸入しているパン用粉の最良のものはカナダやアメリカ の春播小麦である。また、春播小麦は輪作体系に組み込み易い利点も有している。  そのため実需者、生産者から、製パン適性が高く、多収な春播小麦系統の育成が望 まれている。

【 成果の内容・特徴 】

 北見春53号は、昭和55年度に北見農試において多収の北見春31号と良質の北見春30 号のF1を母、強稈の北見春34号を父として人工交配を行い、以後選抜固定を図って きたものである。北見春53号の特性と各農試における試験結果を、具体的データの表 に示した。  主な特性を要約すると次のとおりである。

  1. 出穂期はハルユタカと同程度だが、成熟期はやや晩くやや晩に属する。
  2. 穂発芽性は難で、耐穂発芽性はハルユタカより明らかに強い。
  3. 収量性はハルユタカよりやや低い。
  4. 赤かび病抵抗性はハルユタカより優れる。
  5. 千粒重、リットル重はハルユタカより大きく、原麦粒の見かけの品質もハルユタ カより優れる。
  6. 蛋白含量はハルユタカよりやや少ないが、生地試験からみたグルテンの質はハル ユタカより良い。
  7. アミログラムの最高粘度はハルユタカより明らかに大きい。
  8. 製品(パン)テストによる製パン適性はハルユタカより優れる

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 「北見春53号」の栽培適地は北海道の道央中部・北部、道北地域である。
  2. ドリル播栽培とし、多肥による効果は小さいので標準施肥量を遵守する。
  3. 融雪後出来るだけ早期に播種し、成熟期を早め、収量の安定化をはかる。
  4. 穂発芽性が難といえども、製パン適性の低下を防止するため、適期収穫を励行す る。
  5. 仕向先が限定され、作付面積も小さいので、品質の安定化を図るため、集団的栽 培による一元集荷に努める。

【 その他 】

研究課題名:小麦「北見春53号」の育成試験
予算区分 :指定試験
研究期間 :平成4年度(昭和55年〜平成4年)
研究担当者:天野洋一,前野眞司,柳沢 朗,田引 正,荒木和哉,尾関幸男,
        牧田道夫,佐々木 宏,土屋俊雄
発表論文等:なし

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.10