ばれいしょ導入品種「F891」(マチルダ)
【 要約 】ばれいしょ導入品種「F891」は、目が浅く、形が良いため、剥皮歩留り等の加工適性に優れ、また、塊茎はやや小さく、いも数が多く、多収であり、加工適性の高い小粒塊茎の安定多収生産が可能である。さらに、疫病圃場抵抗性が強い。
北海道立中央農業試験場 畑作部 畑作第二科(取りまとめ)連絡先 01237-2-4220
部会名総合農業作物生産(夏作物)
畑作
専門育種対象いも類分類普及

【 背景・ねらい 】

 平成4年現在、約67,000haの作付面積を占める道産ばれいしょは、生食用、加工食 品用及びでん粉原料用に用いられているが、近年、輸入でん粉等との競合が激しいた め、一部でん粉原料用から加工食品用等への転換が図られつつある。
 ばれいしょを用いた加工食品は、油加工食品(ポテトチップ、フレンチフライ等)と それ以外の加工食品(サラダ、ホールポテト等)に大別されるが、後者には生食用品種 及びこれらの規格外塊茎(S規格、60g以下)が充てられている。この内、最も多く用 いられている「男爵薯」は、目が深いため、剥皮・製品歩留りが低く、またトリミン グに多くの労力が必要であった。一方、規格外塊茎には未熟なものが多いため、食味 及び食感不良いもの混入が多く、製品クレームの大きな原因の一つとなっていた。
 「F891」は、塊茎がやや小粒であることを生かし、主に加工適性の高い完熟小 粒塊茎の供給を図ろうとするものである。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 「F891」は、萌芽期及び開花期が「男爵薯」よりやや遅く、枯凋期は中晩生 に属する。上いも(21g以上)重は「男爵薯」より優り、上いも数は多く、上いも平 均一個重はやや小さい。中以上いも(61g以上)重は「男爵薯」並で、でん粉価は並 からやや高い。
  2. 疫病抵抗性遺伝子は Rxを持つと推定され、また、疫病に対する圃場抵抗性が強 く、塊茎腐敗の発生も少ない。
  3. 剥皮歩留り及び作業性は、目が浅く形が良いため、「男爵薯」より優る。蒸しい も及び加工品の食味は、総じて良好である。

【 成果の活用面・留意点 】

 疫病の圃場抵抗性がかなり強いので、防除回数を減らすことができる。ジャガイモ シストセンチュウ及びそうか病には抵抗性を持たないので、これらの発生する圃場に は作付けしない。また、本品種は小粒完熟塊茎の生産を主な目的とするので、窒素の 多用及び疎植を避ける。

【 その他 】

研究課題名:馬鈴しょ輸入品種等選定試験
予算区分:受託、経常
研究期間:平成4年度(平成元〜4年)
研究担当者:今 友親、伊藤平一、上野賢治、佐藤導謙、萩田孝志(以上中央農試)、
        沢口敦史(上川農試)、伊藤 武(十勝農試)、村上紀夫、松永 浩
        (以上根釧農試)、吉良賢二、浅山 聡、大波正寿(以上北見農試)、
        西部幸男、梅村芳樹、森 元幸(以上北海道農試)
発表論文等:なし

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.15